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国立能楽堂

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【千駄ヶ谷だより】8月公演が間もなく発売開始です!

 間もなく発売開始となる、国立能楽堂8月主催公演のラインナップをご紹介いたします。立秋の頃、皆様のご来場をお待ちしております。

 恒例の《国立能楽堂夏スペシャル》と題してお届けする8月の公演。「働く貴方の能楽公演」では、上演に先立ち、能「安達原」を中心にした能面についてのさまざまを能楽師・藤波重彦さんがお話をします。「素の魅力」では、面や装束を用いない上演形式で、ダイレクトに伝わってくる演者の声や動きをお楽しみください。「親子で楽しむ狂言の会/能の会」では、小さなお子様にもわかりやすい演目を選んで、上演前に鑑賞のポイントをお話しします。

4日(水) 企画公演 ◎働く貴方の能楽公演  午後1時開演

入間川

 都から国元へと帰る途中の大名が、大きな川に行き当たります。対岸の里人から「渡れる浅瀬は上流にある」と教えられた大名は、ここが入間川であることを確認すると、どうしたことか里人の制止を振り切って目の前の川を渡ろうとし、深みにはまってしまいました。ずぶ濡れで対岸にたどり着いた大名は、「古くからこの土地には、“入間様(いるまよう)”という逆さ言葉(実際とは逆のこと言う)を使う習わしがあるのに、本当のことを言うとはけしからん、成敗する!」と怒り出し…。さて、里人の運命やいかに?

安達原

 廻国巡礼をする熊野那智の山伏・祐慶とその一行が奥州の安達原にさしかかり、野中にある一軒の家に宿を借りました。ひとり暮らしだという女は、祐慶の求めに応じて賤女の営みである糸繰りのさまを見せてもてなします。深夜になると、女は、決して閨(寝室)は開けないようにと言い残して、薪を採るために家を出て行きました。女の言葉が気になって仕方ない一行の従者は、約束を破って閨を覗いてしまいます。するとそこには累々たる死骸の山が! 女の正体が安達原の鬼女だと悟って一目散に逃げだした一行を、本性を現した鬼女が追って来ます。対決の末、山伏の験力で調伏された鬼女は、深い闇の中へと消えていくのでした。
 後シテ(後場の主人公)は、白頭の小書により、古くからこの地に棲み続ける年老いた鬼として、常よりも位が重くなります。急進之出は、一度幕を上げて逃げる山伏を捜している型の後、幕内に戻り、一気に山伏目掛けて走り出す演出です。

6日(土) 企画公演 ◎親子で楽しむ狂言の会  午後1時開演

伊呂波

 子どもに“いろは四十八文字”を教えようと、「いろはにほへとちりぬるをわか…」と吟じた父親。すると子どもから、一文字ずつ教えてくれと注文がつきます。なるほどと父親が「い」と言うと、子どもは即座に「燈心(とうしん)」と返し、藺(い=いぐさ。皮を除いた髄を蝋燭の芯に用いる)を引くと燈心が出るからだと答えます。同じように、「ろ」(櫓)と言えば「櫂(かい)」、「ちり」(塵)と言えば「掃き集めて火にくべろ」と言う。そんな大人ぶった知恵はまだ必要ないから、今は自分の言ったとおりにただ繰り返すようにと父は諭しますが…。

六地蔵

 お堂に六体の地蔵菩薩を祀ろうと決めた田舎者。仏師を探しに都にやって来ると、仏師のふりをしたすっぱ(たかり者)に呼び止められ、明日までに六地蔵を作ってもらう約束をします。翌日、すっぱは、仲間を地蔵に化けさせて田舎者を迎えることにします。ところが、約束の地蔵は六体なのに、仲間は三人しかいません。この状況を、すっぱはどうやって乗り切るのでしょうか?

25日(木) 企画公演 ◎素の魅力 午後1時開演

鵜之段

 「鵜之段」は、能「鵜飼」の前場で演じられる、謡の聞かせどころ、型どころのひとつです。甲斐国の石和で、旅の僧の前に現れた鵜使いの老人(実は、かつてこの土地で密漁の罪で簀巻きにされ川に沈められた漁師の亡霊)が、鵜舟を出して鵜を使う漁の様子を再現して見せる場面を上演します。
 謡と小鼓、一対一の緊張感に満ちた演奏をお楽しみください。

道明寺

 善光寺の僧・尊性は「菅原道真公の氏寺である河内国・土師寺(道明寺)に行き、神木の実で数珠を作って念仏をすれば往生がかなう」という霊夢を蒙ります。お告げに従って土師寺に向かった尊性の前に、老人が現れて道真公の威徳を讃え、自らは天神の使いの白大夫だと名のって消え失せます。やがて白大夫と天女がともに現れて楽を舞い、神木の実を尊性に授けるのでした。
 作品の見どころとなる一部分を抜き出して、囃子は入れず地謡のみで、シテが紋付袴で舞う「仕舞」。同様に、狂言方が舞う「小舞」。今回は、同じ作品で能と狂言の舞を見比べます。

 中秋の名月の六条河原院跡。旅の途中の僧の前に汐汲みの老人が現れ、かつて風流人として知られた融大臣がこの場所に陸奥の塩竈の景色を再現し、難波から毎日海水を運ばせて塩焼きの風趣を愛でていた様子を語ります。今は廃墟となった庭で僧とともに月の景色を眺めた老人は、「さあ汐を汲もう」とつぶやいて姿を消しました。
 やがて僧の夢の中に、先刻の老人(実は融大臣の亡魂)が、在りし日の優美な姿で現れ、懐旧の舞を舞うと、月の世界へと帰っていくのでした。
 装束をつけずに演じる「袴能」の形式でご覧いただきます。

27日(土) 企画公演 ◎親子で楽しむ能の会 午後1時開演

舎利

 旅の僧が京都・泉涌寺を訪れ、秘宝の仏舎利(釈迦の遺骨)を拝んでいます。そこにひとりの男が現れ、僧とともに釈迦在りし昔に思いを馳せて拝みはじめますが、にわかに男は鬼と化して、舎利を奪い取り虚空へと飛び去ってしまいました。実はこの男、かつて舎利を盗んだ足疾鬼の執心だったのです。
 泉涌寺の僧の祈りによって天駆ける韋駄天が出現し、足疾鬼を天上まで追いかけて、みごと舎利を奪還するのでした。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

●8月公演発売開始日
  • ・電話インターネット予約:7月10日(日)午前10時~
  • ・窓口販売:7月11日(月)午前10時~
 ※令和4年度よりチケット予約開始日が変更になりました。

  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/