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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂5月主催公演がまもなく発売です!

 

隠笠

 世間では今、宝の数やその優劣を競う「宝比べ」が大流行。果報者の主人は、奇跡のようなことが起きる宝物を手に入れたいと思い、太郎冠者を都に遣わします。都にやってきたものの、どこでどんな宝物を買えばいいのか、さっぱり当てのない太郎冠者は、「宝物、買います!」と言いながら通りを歩きます。すると、すっぱ(騙り者)が近づいてきて、古びた笠を取り出しました。それは、武勇で知られた鎮西八郎為朝(源為朝)が鬼ヶ島から持ち帰った隠れ笠で、持ち主が被ると姿が見えなくなる不思議な笠だと言うのです。太郎冠者は、これこそ探していた宝物! と喜び、高値で買い取って、主人のもとへと帰るのですが…。

夕顔

 旅の僧が都の五条あたりにさしかかると、とある破家(あばらや)から「山の端の心も知らず行く月は上の空にて影や絶えなむ」という和歌を口ずさむ声が聞こえ、女が姿を現しました。僧の問いかけに女は、ここは『源氏物語』に書かれた「何某(なにがし)の院」で、光源氏との逢瀬で訪れた夕顔の君が物の怪に憑かれて命を落とした場所だと語り、姿を消してしまいます。
 やがて日が暮れて、読経する僧の前に夕顔の霊が現れます。そして、在りし日の光源氏との恋を語り、僧の弔いにより成仏できることを喜び、報謝の舞を舞い、夜明けとともに消えて行くのでした。
 山ノ端之出の小書(特殊演出)により、シテ(主人公)の登場の仕方が変わります。法味之伝は、序ノ舞が省略となり、シテはイロエ(舞台を一巡する程度の短い舞)を舞い、僧の回向によって成仏できたことを感謝する演出となります。

 

入間川

 都から国元へ帰る途中、大きな川に行き当たった大名。対岸にいた里人が「渡れる浅瀬は上流にある」と教えると、ここが入間川であることを確認した大名は、里人の制止を振り切り目の前の川を渡ろうとして、深みにはまってしまいました。ずぶ濡れで対岸にたどり着いた大名は、「古くからこの土地には、“入間様(いるまよう)”という逆さ言葉(実際とは逆のことを言う)を使う習わしがあるのに、本当のことを言うとはけしからん、成敗する!」と怒り出し…。さて、里人の運命やいかに?

加茂物狂

 妻を残して東国見物に出かけた男。気がつけばすでに三年の歳月が過ぎていました。里心を覚えた男は都にもどると、神事が行われている加茂の社に向かいます。一方、男への長年の恋慕を募らせて物狂いとなった妻も、加茂の祭にやってきて、ふたりは境内で再会します。けれど、変わり果てたその姿に、男は目の前の女が妻だと気づきません。言葉を交わして、女が狂乱の舞を舞ううちに、ようやく互いが伴侶であることに気がついたふたり。それでも、恥ずかしさに名乗り合うことができないまま、互いに知らぬふりをしながら、五条のわが家へと帰って行くのでした。

 

鱸庖丁

 官途成(かんどなり・任官のお披露目)のため、伯父から鯉を買ってくるよう頼まれた男。うっかり買い忘れた言い訳に「生け鯉で手に入れて、川につないでおいたら、半身をカワウソに食べられてしまった」と口調法(くちちょうほう)で取り繕います。男の嘘を見抜いた伯父は、「ご祝儀に鱸をもらったからご馳走してやろう」と言って、どんな調理法で食べたいか訊ねます。男が「打ち身(刺身)」がいいと答えると、伯父は平安時代の料理人・太夫忠政が卓抜した庖丁さばきを見せた故事を聞かせ、鱸を使った料理のさまざまを見事な身振りと語りで繰り広げ…。

野守

 大和国・春日野を訪れた山伏は、野守(野を守る番人)の老人と出会います。老人は山伏に、足元の溜り水が「野守の鏡」と呼ばれていることを教え、けれど本当の「野守の鏡」とは、昼は人としてこの野を守っていた鬼神が持つ鏡なのだと語ります。山伏は、その真実の「野守の鏡」をぜひ見たいと願いますが、老人は、それは恐ろしい鏡だから、この水鏡を見ておくに留めた方がいいと言い残し、姿を消しました。
 夜になり、勤行をする山伏の前に鬼神が姿を現します。鬼神は、手にした鏡に、天界から地獄まで、この世のすべてを映し出して見せた後、大地を踏み破り地の底へと帰って行くのでした。

 

勝栗

 年貢を納めに都に上る途中、大和国のお百姓と摂津国のお百姓が道連れになりました。無事に年貢を納め終えたふたりに、奏者(取り次ぎ役)が、ふたりが納めた柿、ありの実(梨)、円鏡(えんきょう・鏡餅)、勝栗、野老(ところ・山芋)によそえた和歌を詠むように命じます。双方、見事な和歌を詠んで、褒美に盃を賜ります。そして祝言の舞を舞って、それぞれの国へと帰っていくのでした。
 国立能楽堂主催公演では初の上演となる作品です。

因幡堂

 大酒飲みでわわしい(口やかましく騒々しい)妻に愛想をつかした男は、妻が実家にもどっていることを幸いに、離縁状を送りつけました。気分がせいせいした男は、新しい妻を授かろうと因幡堂に出かけ、参籠して夢のお告げを待つことにします。事態を知って激怒した妻は、因幡堂に駆けつけ、眠っている夫を見つけると…。

政頼

 近頃は、人間がみな仏教に帰依して極楽に行ってしまうので、地獄はすっかり飢餓状態。そこで閻魔大王は、獄卒の鬼たちを率いて自ら六道の辻(死後の世界への分かれ道)に出向き、罪人を地獄に責め落とすことにします。そこにやってきたのは、鷹匠の政頼。殺生の罪を責められた政頼が尋ねられるまま鷹狩りについて語ると、興味をもった閻魔大王は、鷹を使う様を見たいと言い出して…。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

 
●5月主催公演発売日
  • ・ 電話インターネット予約:4月10日(水)午前10時~
  • ・ 窓口販売:4月11日(木)午前10時~
  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/