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国立劇場

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【9月雅楽】 稽古場見学と首席楽長インタビュー

 

宮内庁楽部職楽部は、国立劇場の第一回雅楽公演をはじめ、およそ半数に出演し、雅楽公演を支えていただきました。今回は、9月30日に上演する最後の雅楽公演に向けた稽古にお邪魔し、首席楽長の多忠輝(おおの・ただあき)さんにお話を伺いました。


多忠輝

 

―初代国立劇場さよなら特別公演へのご出演、ありがとうございます

多忠輝(以下、多) : このたび、記念すべき公演に出演させていただくこと 、嬉しく思います。楽部は雅楽公演の半数も出演していたのですね。
ここ最近は、50周年記念公演の一環として行われた平成29年2月の公演の後、御代替わりがあり、少し間が空いたところで、新型コロナウイルス感染症の流行がありました。コロナ禍では我々も、本番はもちろんのこと、練習もままならず、前回の国立劇場公演(令和4年5月)は、大変久しぶりに楽部の外で演奏した機会となりました。
第一回公演は、今回出演する楽師の親やそれより上の世代ですね。父の従兄弟である忠麿先生や、現在の楽師の祖父など、錚々たる先生方が出演されていました。私は楽師になった年、昭和56年の第30回雅楽公演以来、楽部・個人で出演した公演を合わせ、50回以上国立劇場の舞台を踏んでいます。建て替えとなってしまうとは、大変寂しく思います。

 

―今回の演目は、稀曲と大曲とのこと。大変楽しみです。

多 : 「さよなら特別公演」として、現国立劇場最後の雅楽公演ということで、大変な曲ですがお引き受けしました。
大曲は、時間の制約ほか様々な要因から、皇居内の演奏会では取り上げることが難しいため、国立劇場での公演は貴重な機会です。今回の曲は2曲とも、皇居内ではほとんど演奏できません。特に「新鳥蘇」は、およそ半世紀ぶりの上演となりますので、身の引き締まる思いです。




準備中の和やかな雰囲気が一転、真剣な表情で稽古する楽師たち

 


49年前の「新鳥蘇」(昭和49年10月 第17回雅楽公演)

 

―雅楽の普及や継承について、展望や課題があればお聞かせください

多 : 楽部は、毎年2回、皇居内で一般公開演奏するほか、2回程度の地方公演と、1回程度の国立劇場公演を行っています。その他、雅楽の普及も重要な役目ですので、楽師個人でも、演奏・普及活動を行っています。
昭和31年からの楽部での公演や、国立劇場での57年にわたる公演により、雅楽の裾野はだいぶ広がったように感じます。若い世代の演奏家や、雅楽に親しむ層も増えました。現代は、雅楽ブームであると言えると思います。

しかし、それを支える楽器職人の減少など、看過できない問題もあります。中でも、篳篥の蘆舌(リード)の素材となるヨシ(葦)が一時全滅の危機に瀕してしまった鵜殿のヨシ原*については、喫緊の課題と考えています。千年以上、連綿と受け継がれてきた雅楽の音を、守らなければなりません。宮内庁式部職楽部及び楽師一同、この状況を重く受け止め、雅楽保全にこれからも協力を続けてまいります。

 

―最後に、公演に寄せて一言お願いします

多 : 初代国立劇場最後の雅楽公演、お客様にご満足いただけますよう、精一杯つとめさせていただきます。ぜひご来場いただき、お楽しみいただければ幸いです。

 

【公演情報】
9月雅楽公演「舞楽」 公演の詳細はこちらから





*鵜殿のヨシ原について
篳篥の蘆舌(リード)を作成するためのヨシ(葦)は、淀川河川敷の上牧・鵜殿ヨシ原(最高品質のものが採れるところ)を含む限られた場所でしか採取できませんが、令和3年9月に鵜殿のヨシが一時全滅の危機に瀕していたことが確認されました。つる草がからみついて押し倒され枯れたことが直接の要因と考えられており、この状況を危惧した民間の演奏家などが中心となって、つる草を除去することによりヨシを復活させる活動を行っています。