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国立文楽劇場

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【4月文楽公演】『和田合戦女舞鶴』のストーリーのご紹介

4月文楽公演第2部で上演する『和田合戦女舞鶴』は、鎌倉時代に起きた北条氏と和田氏の対立(和田合戦)を背景にした五段構成の作品です。作中では幕府の重臣同士の争いが起きないようにと心を砕く幕臣やその家族の苦悩が描かれます。今回上演する「市若初陣の段」は三段目にあたり、女武者として知られた板額が、忠義と子への愛情の間で葛藤し苦渋の決断を下す姿を描きます。
このページでは、「市若初陣の段」をより楽しんでいただくため、そこに至るまでのストーリーを紹介します。

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そもそもの発端

鎌倉時代、源頼朝の跡を継いだ二代将軍頼家が早世し、実朝が家督を継ぎます。しかし、実朝はまだ若年のため母の政子尼公が政務を補佐していました。実朝を征夷大将軍に、政子を従二位禅尼に任じる勅諚を伝えるため、都から中の院為氏が鎌倉を訪れます。
実朝の妹の斎姫は為氏を慕っており、為氏も姫を妻として京へ迎えたいと申し出ます。しかし、北条義時と和田常盛が両人ともに頼家の生前に斎姫を妻にと言われていたと主張し、争いはじめます。勅使の前での無礼な振る舞いに、浅利与市の妻で大力を誇る板額が二人を諫めますが聞き入れません。三人が言い争いになるところ、為氏の一喝でその場は一旦納まります。
為氏が都に帰る前にと斎姫は乳兄弟である荏柄平太の妻綱手に仲立ちを頼んで、為氏を呼び出します。思いの丈を訴える斎姫ですが、為氏は北条と和田の諍いを慮り拒みます。嘆く斎姫に、為氏と夫婦にしてやろうと声をかけたのは幕臣の一人藤沢入道でした。
入道は勅使饗応で演じられる『紅葉狩』で平維茂役の常盛に真剣を渡すよう斎姫をそそのかします。義時と常盛の諍いは、実は入道の計略によるものでした。謀反を企む入道は、頼家を放蕩させ腹を切らせたあげく、鎌倉幕府の要職である北条と和田を同士討ちさせようと、二人が仲違いするように嘘を吹き込んでいるのでした。
能舞台上で乱闘を繰り広げる義時と常盛。ほかの幕臣によって二人は止められますが、真剣を渡した責を問われた斎姫は、藤沢入道の館に預けられることになりました。


善哉丸誘拐事件

場所は変わって鶴岡八幡宮。放生会の小鳥を買おうとしているのは、今年11歳になる頼家の一子善哉丸です。頼家と妾の間に生まれた善哉丸は幼いころに出家し、若宮の別当阿闍梨の弟子となっていました。
鳥を見ていた善哉丸は、鳥屋の企みで籠から鳥をすべて逃がしてしまいます。善哉丸に代金を払えと要求する鳥屋は、ついには善哉丸を恫喝します。逃げる善哉丸を匿おうと、阿闍梨はそばにいた手車売りの荷箱に隠し、善哉丸を助けてくれるよう頼みます。追ってきた鳥屋と手車売りは乱闘になりますが、実は二人はグルで、隙を見て善哉丸を箱ごと連れ去ってしまいます。


荏柄平太の斎姫殺し

斎姫が預けられている藤沢入道の館では腰元たちが、平太が乳兄弟である身分もわきまえず斎姫に恋文を送っていると噂していました。平太の父で斎姫のめのとである城九郎資国が見舞いに訪れ、為氏を想って患う斎姫を力づけます。そこに政子の使いで平太が訪れました。為氏のいる京都へ向かいたい斎姫は、館を抜け出すため自分を連れ出してほしいと平太に恋をしかけます。しかし、その言葉を受けた平太に抱き着かれ、奥の一間へと逃げていきます。拒まれた平太もそれを追っていくのでした。
外出していた入道が館へ戻り、謀反の企みを息子の四郎と話しているところに、腰元たちが平太が恋の意趣晴らしに斎姫の首を討って逃げたと騒ぎ出します。一大事に藤沢入道は門を閉じさせます。


板額門破り

館の裏門に幕臣達がかけつけ、浅利与市が開門を命じます。しかし、与市の妻板額と平太が従弟同志であることから、藤沢四郎は主殺しの一族は入れられぬと開門を拒みます。そのため、与市は駕籠で連れてきた板額を、四郎の目の前で離縁します。十歳の子までいるのにと嘆く板額ですが、与市の決心は翻りません。しかし、それでもなお開門が許されず、板額は大力を以て門を破ります。
館へ入った与市は資国に呼び出されます。当時、主殺しは一族郎党まで責が及ぶ重罪でした。父親である資国は幕府から切腹を申し付けられ、与市が介錯をすることになります。姪である板額を案じ、資国は板額に、力を用いればより大きな力によって打ち伏せられるからと己の大力に頼らないよう諭します。そして、恨むのは藤沢入道と言い残し切腹します。


大江広元の奇策

主殺しを犯した荏柄平太の妻子を、不審なことに、政子尼公が自身の館に匿っており、鎌倉御所ではその対応の評定がなされています。実朝は、母に弓を引くことができず苦心しています。そこで大江広元が、ある妙策を提案します。
広元が用意した軍勢を呼び出すと、現れたのは十一歳以下の幕臣の子供たち。しかし、そこには十歳になる与市の子の市若はいませんでした。与市が市若のことを問うと、平太と従弟同志である板額を母に持つ市若については、実朝の指図を仰ぐことになります。実朝は市若の出陣を許し、後陣の大将を命じます。 子供武者たちは政子尼公の館へと出陣していき……。この続きは、ぜひ劇場でご覧ください。

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『和田合戦女舞鶴』「市若初陣の段」が人形入りで上演されるのは大阪では59年ぶりとなります。しかも、今回の公演では、政子尼公の館に押し寄せる子供武者とそれをとりなす板額のやりとりを描く端場を84年ぶりに復活。新若太夫の弟子である豊竹希太夫が語ります。
初代豊竹若太夫が初演し、十代豊竹若太夫が襲名披露狂言に選んだ若太夫ゆかりの演目に十一代目若太夫が新たな命を与えます。

どうぞお楽しみに!

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いよいよ4月6日(土)初日!

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