トピックス
【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂令和8年12月主催公演がまもなく発売です!

狂言 縄綯
博奕(ばくち)が大好きな主人は、勝負に負けた借金のかたに奉公人の太郎冠者を差し出すことになりました。けれど太郎冠者が素直に応じるとは思えない主人は、使いに出すふりをして相手のもとへ向かわせます。到着してはじめて真相を知った太郎冠者は、すっかりへそを曲げてしまいました。新しい主人から使いを命じられると、持病の脚気(かっけ)で行けないと断り、縄を綯(な)えと言われれば、縄など綯ったことがないと言い、仕事をすべて拒否しつづけて…。
能 遊行柳
一遍上人が説いた念仏を布教するため、全国を旅する遊行上人(時宗の指導者の敬称)の一行が奥州・白河の関にやってきます。さらに奥地を目指して整備された新道へ向かおうとしたところに、ひとりの老人が現れました。老人は、過去の遊行上人が通ったという旧道を示して、そこに生えている苔むした柳の前へと導きます。この木こそ、"朽木(くちき)の柳"として知られる銘木でした。老人は、西行法師がこの柳を歌に詠んだことを懐かしそうに語り、上人から念仏を授かると、柳の蔭に姿を消してしまいました。
夜になり、念仏を唱える一行の前に老柳の精が現れ、上人の念仏に感謝します。昔日を懐かしみ、柳にまつわる古今東西の故事を語った老柳の精は、草木の身ながら成仏できたことを喜びます。そして、静かに舞を舞うと、夜明けとともに消えていくのでした。
小書「青柳之舞」(序ノ舞を短縮して杖をついて舞う)と「朽木留」(通常は幕入りするシテが舞台に残る)によって、老柳の儚さや余韻が強調された演出となります。
狂言 呼声
無断で出かけた太郎冠者に憤懣(ふんまん)やる方ない主人は、厳しく叱りつけようと、帰宅した太郎冠者の家に次郎冠者を伴ってやってきました。次郎冠者が呼び出すと、叱られると察した太郎冠者は居留守を使って出てきません。今度は主人が作り声をして案内を乞いますが、敵もさるもの、作り声で留守を使ってきます。平家節や小歌節を使ってさらに呼び出しを続けるうちに、三人はだんだんと面白くなってきて...。
能 巻絹
「諸国から千疋(せんびき)(一疋(ひき)は反物二反分)の巻絹を集めて三熊野(熊野三社)に奉納せよ」との宣旨(せんじ)が出され、帝の臣下が熊野に赴いて各地から運ばれてくる巻絹を取りまとめています。ところが都からの荷だけが、定められた期日を過ぎてもまだ到着していません。実は、都を出立した荷役の男は、熊野に着くと真っ先に音無天神に参詣し、梅の香にひかれて胸中に詠んだ和歌を神に手向けていたのでした。そうして遅参した男は、罰として縛り上げられてしまいます。すると天神が乗り移った巫女が現れて、男が遅れたのは参詣のためだったことを告げると、天神に捧げた歌が証拠となって男は赦されます。臣下の求めで巫女が祝詞をあげ神楽を舞います。すると、熊野の神々が次々と巫女に憑依して神話の世界を繰り広げ、やがて天へと帰っていくのでした。
能の作品を通じて作者の視点に着目するシリーズ企画。11月に続いて、世阿弥の息子・元雅を特集します。
狂言 塗師
都で仕事にあぶれた塗師(漆塗りの職人)が、弟子の平六を頼って越前国・北ノ庄へとやって来ました。家を訪ねた塗師に、夫の仕事を奪われるのではないかと案じた平六の妻は、「夫は三年前に亡くなった」と嘘をつきます。そこに当の平六が仕事からもどってきたから、さあ大変! 妻はあわてて平六を物陰に隠し、事情を打ち明けます。ところが師匠を懐かしく思う平六はどうしても会いたいと言うので、しかたなく妻は「幽霊になって会う」という策をひねり出したのですが…。
能 隅田川
武蔵国と下総国の境を流れる隅田川の渡し。客待ちをする船頭の前に、人商人(ひとあきびと)(人買い商人)にさらわれたわが子を探して都からはるばるやってきた女が現れます。女は、子への執心による物狂い(心が極度に高ぶった状態)ながらも、『伊勢物語』の歌やエピソードを引いた教養ある話しぶりで、感心した船頭は船に乗ることを許します。船中、対岸から大念仏の声が聞こえてくると、船頭は乗船客たちに「去年の今日、人買いにさらわれ、病になり見捨てられて亡くなった少年の供養が行なわれているのだ」と教えます。話を聞くうちにそれこそわが子と悟った女は、船が対岸に着くと塚の前で弔いに加わりました。やがて、涙ながらに念仏を唱える母の耳に土の中から懐かしいわが子の声が響き、目には幻が映ります。けれどその小さなからだを腕に抱くことはかなわず、泣き暮れる母の絶望と悲しみが晩春の川辺に広がるばかりでした。
蝋燭のほの灯りに照らされた舞台で、光と陰のコントラストのなかに描き出される幻想的な世界をお楽しみください。
謡講
舞や所作、囃子を伴わずに、正座での謡(うたい)だけの上演形式を「素謡」と言います。江戸時代以降の京都では、座敷を障子や御簾で仕切って、謡い手を見えないようにして楽しむ素謡の集い「謡講」が隆盛しました。
耳を澄まし、イメージをふくらませてお楽しみください。
狂言 木六駄
歳の瀬になると、都に暮らす伯父に薪と炭を贈る主人。今年も届ける役目を命じられた太郎冠者は、大雪のなか、薪を積んだ牛六頭(木六駄)と炭を積んだ牛六頭(炭六駄)を引き、酒樽を携えて都へ向かいます。あまりの寒さに峠の茶屋で酒を飲もうとしますが、あいにくの品切れで、届けるはずの酒樽についつい手をつけてしまいます。茶屋の亭主と酒盛りがはじまって、すっかり気が大きくなった太郎冠者は、木六駄も亭主に与えてしまい…。
能 籠太鼓
肥前国・松浦某(まつらのなにがし)は、口論の末に人を殺めてしまった下人・関清次(せきのせいじ)を牢に閉じ込めます。けれど清次が脱獄したため、妻を呼び出して行方を聞きますが、妻は「知らない」の一点張り。身代わりとして妻を幽閉し、牢に掛けた鼓を一刻ごとに打って見張れと従者に命じます。やがて夫への思いで狂乱の態となった妻を、松浦は哀れに思い出牢を許します。しかし、妻は牢に固執して出ようとはせず、夫への思いを募らせて鼓を打ちながら舞います。妻の夫を思う心に動かされ、松浦は清次を許し、夫婦は元通りの暮らしを取り戻すのでした。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●令和8年12月主催公演発売日
- 電話インターネット予約:令和8年11月10日(火)午前10時~
- 国立能楽堂チケット売場窓口・自動発券機は国立能楽堂主催公演日(*)のみの営業(午前10時~午後6時)です。
*販売開始は電話・インターネット予約開始日の翌日以降 - 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
050-3641-2810
https://ticket.ntj.jac.go.jp/