トピックス
【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂令和8年10月主催公演がまもなく発売です!

狂言 禁野
河内国・交野(かたの)にある禁野(殺生禁断の野)で密猟をする者をこらしめようと、土地の男たちが隠れて見張っています。そこに弓矢をもった大名がやって来ました。男のひとりが大名に禁野のいわれを問うと、「自分は密猟をしてもよい子細があるのだ」と言って、昨日は雉を2羽射止めたと自慢します。男たちは「向こうに雉がいる」と嘘をつき、狩りを手伝うふりをして…。
能 熊坂
美濃国・赤坂の宿にさしかかった旅の僧は、僧形の男に呼び止められて、「ある人の回向」を乞われます。案内された庵に着くと、中には拝むべき像もなく、おびただしい武具がずらりと並んでいるばかりでした。怪訝に思う旅僧に、男は「この辺りは盗賊がよく出没して人を襲うので、そのための備えだ」と説明し、「今夜はひとまず休みましょう」と僧を促します。旅僧がまどろむと、不思議なことに男も庵もすべてが消え失せてしまいました。
目を覚ました僧に、通りかかった土地の者が、かつて牛若丸によってこの土地で討たれた大盗賊・熊坂長範(ちょうはん)の話をし、先ほどの男はその亡霊であろうと語ります。僧の弔いで再び姿を現した熊坂の亡霊は、牛若丸との戦いで命を落とした顛末を語り、さらなる回向を頼むのでした。
狂言 鳴子
収穫の時期が間近になった田を鳥が荒らすので、主人は太郎冠者と次郎冠者に鳥追いを命じます。ふたりは田に向かい、鳴子を鳴らし声をあげて鳥を追います。やがて主人が陣中見舞いにやってきて、差し入れの酒を置いて帰って行きました。その酒を酌み交わしつつ、鳥を追い、舞い謡ううちに、ふたりはすっかりいい気分になり、眠り込んでしまい…。
能 夕顔
旅の僧が都の五条あたりにさしかかると、とある破家(あばらや)から「山の端(は)の心も知らで行く月は上の空にて影や絶えなむ」という和歌を口ずさむ声が聞こえ、女が姿を現しました。僧の問いかけに女は、ここは『源氏物語』に書かれた「何某(なにがし)の院」で、光源氏との逢瀬で訪れた夕顔の君が物の怪に憑かれて命を落とした場所だと語り、姿を消してしまいます。
日が暮れて、読経する僧の前に夕顔の霊が現れると、荒れ果てた景色を見つめながら、光源氏とのはかない恋の記憶やかつてこの場所で過ごした夜の恐ろしさを語ります。そして、僧の弔いにより成仏できることに感謝し、報謝の舞を舞い、夜明けとともに消えて行くのでした。
山の端之出の小書(特殊演出)は、シテの登場の仕方が変わり、幕の内で姿を見せずに前出の和歌を謡い出します。また、通常は出さない作リ物を出し、廃墟の情景を印象づけます。
10月15日(木)企画公演◎さだめの彼方に 午後6時30分開演
人は老い、いつか必ず死を迎える━━それは、誰も逃れることのできない運命です。死をテーマとしたふたつの作品を通して対極にある生にも目を向けます。
新作狂言 楢山節考
おりんが暮らす貧しい村には、70歳になると深い山奥の「楢山さん」へと背負われて行き、二度ともどらない「楢山まいり」の風習がありました。現在69歳のおりんは、家族に迷惑をかけないため、一日も早く楢山まいりに行くことを願っています。そんなおりんの思いを孝行息子の辰平は複雑な思いで見守る一方、孫のけさ吉は、自分の子供が生まれるのが近いこともあって、早くおりんが楢山まいりに行った方がいいと言うのですが…。
昭和31年(1956)に発表されベストセラーとなった深沢七郎の小説『楢山節考』をもとに、翌年、研鑽のための会「冠者会」で野村万作らが初演した作品です。
復曲能 鐵門
信濃国・善光寺を訪れた旅の僧は、門前の者の案内で、本尊を安置する本堂奥の瑠璃壇下の回廊「暗穴道(あんけつどう)」へと入ります。真っ暗闇の中を進んで行くと、美しい姫とその老僕・衛門(えもん)の介(すけ)の亡霊が現れ、「本尊と結縁を結ぶための、錠前に触れたか」と僧に問いかけて、在りし日の出来事を語りはじめます。━━かつてある城に、両親を亡くした孤独な姫と、密かに心を寄せながら姫を守る衛門の介がいました。ある夜、悪尼(あくに)の姿で現れた死の使いに姫がさらわれ、衛門の介は必死に後を追いましたが、行く手にそびえる鐵の門に阻まれて、姫の命は失われてしまったのです。やがて自らの命も尽きた後、なお消えぬ妄執を抱いたままさまよう衛門の介の霊は、僧に回向を求め、暗闇の彼方へと消え去って行くのでした。
メーテルリンクの戯曲『タンタジールの死』に着想を得て、俳人・高濱虚子が大正4年(1915)に詞章を書き上げた作品です。
10月30日(金)外国人のための能楽鑑賞教室 Discover Noh & Kyogen 午後6時30分開演
海外からのお客様にもわかりやすく楽しめる作品を選んで、どなたさまでもお楽しみいただける公演です。冒頭では英語による解説を行います。解説と上演には6カ国語の字幕(日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語)が付きます。
狂言 二人袴
最上吉日の今日、舅は"聟入り"(結婚後に聟が初めて妻の実家を訪ねて挨拶をする儀式)の準備に追われています。一方、甘えん坊で恥ずかしがり屋の聟は、駄々をこねて兄にさまざまなおねだりをしたあげく、舅の家の門前まで付き添ってもらいました。晴れの正装で袴を身に着けた弟が舅の家に入ると、兄は門前で様子を見守り待つことにします。その姿を目撃した使用人の太郎冠者から報告を受けて、舅が兄にも家に入るようすすめたから、さあ大変。対面のための袴は弟が着けている一枚しかありません。このピンチ、兄弟はどう切り抜けるのでしょうか。
能 安達原
廻国巡礼をする熊野那智の山伏・祐慶(ゆうけい)とその一行が、行き暮れて奥州・安達原で一夜の宿を借りることにします。野中にぽつりとあるわびしいその家には、女がひとりで暮らしていました。女は、快く一行を迎え入れ、求めに応じて賤女(しずのめ)の営みである糸繰りのさまを見せてもてなします。深夜になると女は、暖を取る薪を採って来ようと思い立ち、「決して閨(ねや)(寝室)は開けないように」と言い残して出かけて行きました。女の言葉が気になって仕方ない一行の強力(ごうりき)(従者)は、約束を破って閨を覗いてしまいます。するとそこには累々たる死骸の山が!女の正体が安達原の鬼女だと悟った一行は、一目散に逃げだします。本性を現した鬼女は、猛烈な勢いで追いかけます。激しい対決の末に、山伏の力で調伏(ちょうぶく)された鬼女は、安達原の深い闇の中へと消えて行くのでした。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●令和8年10月主催公演発売日
- 電話インターネット予約:令和8年9月10日(木)午前10時~
- 国立能楽堂チケット売場窓口・自動発券機は国立能楽堂主催公演日(*)のみの営業(午前10時~午後6時)です。
*販売開始は電話・インターネット予約開始日の翌日以降 - 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
https://ticket.ntj.jac.go.jp/