トピックス
【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂令和7年4月主催公演がまもなく発売です!
狂言 腰祈
出羽国・羽黒山の新米山伏が、葛城山で修行を終えて帰る途中、都の祖父(おおじ)を訪ねます。久しぶりに会った祖父は腰がひどく曲がっていたので、山伏は行力(ぎょうりき・修行で身に着けた力)を使って、祖父の腰をまっすぐに伸ばすことにしました。祈り始めると、祖父の腰は見る見る伸びてきて、まっすぐに! ところが、伸びの効果はそこで止まらず、今度は体がどんどん反り返っていき…。
能 歌占
加賀国・白山(はくさん)の麓に住む男が、生き別れになった父を探している少年を連れて、歌占(引き当てた和歌で吉凶を占う)で評判の男巫(おとこみこ)を訪ねます。この男巫は、もともとは伊勢国・二見(ふたみ)の浦の神職でしたが、旅先で頓死し、三日後に蘇生したという不思議な過去がありました。少年が引いた歌で、「彼はすでに父親とめぐり逢っている」と判じた男巫は、素性を打ち明けた少年の言葉から、自分こそが父であったことを知ります。親子は再会を喜び、これも神の引き合わせと、ともに帰国する決意をします。名残にと、少年を連れてきた男の求めに応じて男巫は、頓死の折に経験した地獄の有様を舞って見せます。この舞は、神の憑依を引き寄せる力があり、舞ううちに男巫は神がかりし、狂乱の態となります。やがて正気を取り戻した男巫は、わが子とともに故郷へと帰って行くのでした。
「歌占」のシテは、面をかける場合と面なし(直面(ひためん))の場合があります。今回はどちらになるか、お楽しみに。
狂言 重喜
法要を頼まれた住持は、新発意(しんぼち・修行中の新米僧)の重喜に準備を命じ、自身の頭を剃ってもらうことにします。剃刀を手に住持の後ろに立った重喜に、住持は、「弟子七尺を去って師の影を踏まず」ということわざを引いて注意を促します。すると重喜があわてて飛びのいたので、わけを訊ねると、「師の影を踏まないよう、七尺離れた」と言います。それは言葉の喩えで、不注意や失礼がないようにしろという意味だと教えるのですが、重喜はあくまでも影を踏まないように、遠くから師の頭を剃ろうと、長い竹竿の先に剃刀をくくりつけて…。
能 野守
大和国・春日野を訪れた山伏は、野守(野を守る番人)の老人に出会います。老人は山伏に、足元の溜り水が「野守の鏡」と呼ばれていることを教え、けれど本当の「野守の鏡」とは、昼は人としてこの野を守っていた鬼神がもつ鏡なのだと語ります。山伏は、その真実の「野守の鏡」をぜひ見たいと願いますが、老人は、それは恐ろしい鏡だから、この水鏡を見ておくに留めた方がいいと言い残し、姿を消しました。
夜になり、勤行をする山伏の前に鬼神が姿を現します。鬼神は、手にした鏡に、天界から地獄まで、この世のすべてを映し出して見せた後、大地を踏み破り地の底へと帰って行くのでした。
能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの公演です。公演当日の上演前には、ロビーに能楽体験コーナーを設け、舞台では能楽師による簡単なプレトーク(解説)があります。
狂言 長光
訴訟のため田舎から都に上り長らく滞在していた男。決着がつき帰国することになったので、寺町の市に出かけて故郷への土産を探しています。そこに、男がもっている太刀に目をつけて近づいてきたすっぱ(騙り者)が、何食わぬ顔で太刀に手をかけ奪おうとするので、二人は言い合いになります。騒ぎを聞きつけた目代(もくだい・代官)が仲裁に入りますが、男もすっぱも太刀は自分のものだと主張して譲りません。そこで、持ち主ならば当然知っている太刀の特徴をさまざま訊ねるのですが…。
能 羽衣
穏やかに波が打ち寄せる春の三保の松原。漁夫の白龍(はくりょう)が漁を終えて浜にあがってくると、松の枝にかかった衣が目にとまります。この世のものとは思えないその美しさに、手に取り持ち帰ろうとすると、そこに天人が現れ、それは自分のものだから返してほしいと頼みます。白龍は、天人の舞を見せてもらうことを条件に衣を返すことにしますが、先に返してしまったら天人は舞わずに天に帰ってしまうのではないかと疑います。けれど天人から「疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と言われ、疑った自分を恥じるのでした。天人は、返された衣をまとうと、美しい舞を見せ、数々の宝を降らせながら天高く昇って行きました。
狂言 鶏聟
ある男のもとに、聟入りの作法を教わりたいと若者がやってきます。男は、この聟をちょっとからかってやろうと、いたずら心を起し、「当世風の聟入りでは、鶏の鳴き方や、蹴り合うさまを真似るのが作法だ」と、嘘を教えます。真に受けた聟は、舅のもとに行き、いきなり鶏の真似をはじめ…。さて、聟入りは無事に果たせるのでしょうか?
狂言 金藤左衛門
このところ不運続きでいい獲物にありつけない山賊の金藤左衛門。今日こそは、と思っているところに、里帰りの女が通りかかりました。長刀で女を脅し、奪い取った荷を開けてみると、中からは上等な帯や小袖が出てきたので、思わぬ収穫に金藤左衛門が喜んでいると…。
狂言 瓢の神
例年通り瓢の神に参詣してお勤め(勤行)を行おうと、都に住む鉢叩(はちたたき・踊念仏の僧)とその仲間たちが、北野神社にやってきました。礼拝をすると、瓢の神が姿を現して彼らの信心を喜びます。瓢の神から富貴にしてやろうと言われた鉢叩たちは、瓢を授かり、お勤めを始めます。
能「輪蔵(りんぞう)」の替間(かえあい・通常の間(あい)狂言に替えて上演する特殊演出)を独立させた作品として、和泉流には「鉢叩」があります。野村又三郎家では、本狂言(独立した狂言作品)として上演する際には「瓢の神」となります。又三郎師によれば、又三郎家での上演はおよそ100年ぶりとのことです。大蔵流の類曲には「福部の神」、「福部の神・勤入(つとめいり)」があります。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●令和7年4月主催公演発売日
- 電話インターネット予約:令和7年3月10日(月)午前10時~
- 国立能楽堂チケット売場窓口・自動発券機は国立能楽堂主催公演日(*)のみの営業(午前10時~午後6時)です。
*販売開始は電話・インターネット予約開始日の翌日以降 - 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
https://ticket.ntj.jac.go.jp/