本文へ移動
公式アカウント
公演カレンダー チケット購入
English
カレンダー チケット
国立文楽劇場

トピックス

【講座】第12回文楽特別講座を開催しました!

開催日:令和7年2月1日(土)
場所:国立文楽劇場小ホール

昨年文化功労者として顕彰された人形遣い・吉田和生さんを講師に迎え、第12回文楽特別講座「吉田和生の人形もの語り」を開催しました。(太字は和生さんのお話)

満場のお客様に迎えられる和生さん

最初に、和生さんの師匠・吉田文雀さん(1928-2016)と和生さんから劇場に寄贈された資料を中心に、お二人にゆかりの深い「もの」にまつわるエピソードなどが語られました。

話題となった「もの」は、和生さんが収集した浮世絵、文雀さんが収集したブロマイドや海外公演のプログラム、文雀さんの師匠である三代吉田文五郎さん(1869-1962)が使用した人形の胴など、興味深い品々ばかり。
公演記録がびっしりと書き記された文雀さんのノートには、和生さんが入門した時のことも───
私も書こうと思ったことがありますが、とても師匠のように細かくは書けず、2、3ページでやめました(笑)。

自身や文雀さんゆかりの資料について語る和生さん

続いて、お客様から事前に寄せられた質問に答えるコーナーへ。
限られた時間の中、たくさんの質問に対してたっぷりとお答えいただきました。

人形細工師・大江巳之助さん(1907-1997)の工房を訪ねたのが縁で、初めて文楽の舞台を鑑賞。紹介された文雀さんの家に泊めてもらい、思いがけず「人形遣いの道」へ───
翌朝食事しながら「どないする?」と言われ、何を考えたのか「やります」と言いました。それだけなんです。

文雀さんとの思い出は尽きない───
わからんことがあったら何でも聞きや、とよく言われましたが、若い頃はわからないことが何かがわからんもんで(笑)。技術的なことはあまり言われませんでしたが、うるさく言われたのは、「人形はいつ見てもきれいに美しくできてないとあかん」ということ。人形拵えは何度もやり直しさせられました。

「好きな演目・好きな役」は───
言わないようにしています。いただいた役を一所懸命に勤めるのが仕事です。
ただ、「印象に残っている役」を挙げるなら、「仮名手本忠臣蔵」の塩谷判官です。50代の頃に勤めて手応えを感じた役ですが、もう一つ思い出があります。平成28年の夏、師匠が倒れ、私が内子座文楽で塩谷判官を勤める直前に、師匠の訃報を聞きました。判官は師匠の持ち役の一つでもありましたから、言いようのない思いで「切腹」の段を勤めました。

講座の最中に幾度も手にしたのは、和生さんが個人で所有する「老女方」のかしら───
昭和22年に大江巳之助さんが作った、(22年生まれの)私と「同い年」のかしらです。師匠が苦労して手に入れ、大切にしていたものを譲り受けました。先月の初春文楽公演「仮名手本忠臣蔵」では戸無瀬として使いました。2月の「妹背山婦女庭訓」では定高になります。

文雀さんから受け継いだ老女方のかしらを手に、お話しする和生さん

文雀さんの後を継ぎ、「かしら割り」の役目を担う───
公演ごとに、どの役にどのかしらを使用するかを、劇場のかしらの担当者と相談しながら決めています。今は参考資料が色々とありますが、師匠は自分の頭の中だけで考えてかしら割りをしていました。とても真似できません。

座右の銘は───
「夢」。いくつになっても夢を持っていたいですね。

これからのこと───
基本的には「終活中」です。どこで終止符を打つか。どこまで行けるか……。
ただ、伝統芸能の道に入った者の義務として、師匠や先輩の教えをきちんとしたかたちで次の世代に伝えたい。そして、少しでも多くのお客様に文楽を観に来ていただきたい。そのために、努力して芸を磨きたいです。

◆◆◆

ご参加のお客様からは、「貴重な話が聞けてよかった」「和生さんの人柄がにじみ出るようなお話しぶりに感動した」など、喜びの声を多数いただきました。また、終了後は大勢のお客様が資料展示室に立ち寄り、講座で話題となった資料の実物を鑑賞されました。

国立文楽劇場では、伝統芸能をより深くお楽しみいただける講座を、今後も開催してまいります。
どうぞご期待ください。

ページの先頭へ