文化芸術振興費補助金助成事業令和3年度助成事業事例集
公益財団法人 静岡県舞台芸術センター
(助成金額:25,936千円)
© Jean Couturier
事業名:フランス国立ケ・ブランリー美術館&SPAC共同制作作品『ギルガメシュ叙事詩』公演
台本・演出:宮城聰
翻訳:月本昭男
(ぷねうま舎刊『ラピス・ラズリ版
ギルガメシュ王の物語』)
音楽:棚川寛子、寺内亜矢子
照明デザイン:吉本有輝子
衣裳デザイン:駒井友美子
人形デザイン・操作:沢則行
美術:深沢襟
音響:澤田百希乃
ヘアメイク:梶田キョウコ
演出補:中野真希
舞台監督:村松厚志
字幕翻訳:コリーヌ・アトラン
舞台監督助手:山田貴大、小川哲郎
ドラマトゥルク:横山義志
制作兼字幕操作:大石多佳子
本事業は当初、令和2年度事業として計画されていたものだったが、新型コロナウィルスの感染拡大により令和3年度に延期実施となったものである。海外での公演が困難なタイミングで、本助成を獲得できていたことは実現に向けての大きな支えとなった。特に新型コロナウィルス感染拡大に加え、ロシアのウクライナ侵攻のタイミングと重なり、渡航費の高騰、フライトの欠航による日程の変更、宿泊費の追加などの部分が当初予定を大きく上回る結果となったが、これらが対象経費として計上できたのは大変ありがたかった。
本作品はフランス国立ケ・ブランリー美術館との国際共同制作作品である。ケ・ブランリー美術館が収蔵品として紹介しているメソポタミア文明・ギルガメシュ叙事詩の世界を、初めて舞台作品として提示することができた。美術館に所蔵された人類の太古の記憶の断片と演劇が出会うとき、そこには、国も言語のボーダーも超えた、人類の知恵の召喚ともいうべき現象が立ち現れる。他の劇場では得られないこの瞬間は、観客に忘れがたい経験を提供するばかりでなく、創作者側の我々にも「演劇の始原の機能」への気づきをもたらし、同時に美術館自身も、過去の文物を収蔵するという旧来の役割を超えたメッセージを持つことになる。
SPACはこれまで海外の劇場・フェスティバルと、継続的な芸術を通した交流を通して信頼関係を築くことで、国際共同制作を実現してきた。フランス国立ケ・ブランリー美術館からの委嘱作品上演は今回で2作品目、舞台作品を上演するのは4回目となる。国際情勢が不安定な現在、異文化同士が出会い協働して作品を創造し、観客に提供することの重要性は一層高まっていると考える。海外公演や海外との共同制作が困難な時にも世界とのコミュニケーションを継続し、分断の時代に芸術文化が果たせる役割を担っていきたい。
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