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【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂令和7年9月主催公演がまもなく発売です!
狂言 才宝
財宝というめでたい名前をもつ祖父(おおじ)の元を、元服する三人の孫が訪ねてきます。元服名をつけてもらい、祖父の富裕と長寿にあやかろうというわけです。かわいい孫たちをいくつになっても幼子扱いする祖父ですが、それぞれに「嬌(きょう)あり」「冥加(みょうが)あり」「面白う」と名付けます。やがて祖父を囲んでのにぎやかな祝いの酒宴が繰り広げられます。
能 玄象
琵琶の名手・藤原師長(もろなが)は、奥義をきわめるため唐に渡ろうと、都から須磨の浦にやってきました。そこで一夜の宿を借りると、主の老夫婦は、評判の高い師長の琵琶を所望します。そして板庇(いたびさし)を打つ村雨の音が琵琶の音と調和するように、雨音を和らげる苫(とま)を庇に葺きました。その心配りに感心した師長がぜひにと演奏を請うと、老人は琵琶を、姥は琴を弾じました。あまりに見事な演奏に、師長は唐に渡る前にまだまだ学ぶべきものがあると自らの未熟を悟ります。老人は、師長に入唐(にっとう)を思いとどまらせるために現れた、琵琶の名手・村上天皇の霊と梨壺の女御であることを明かして姿を消してしまいました。
やがて師長の前に神々しい姿の村上天皇の霊が現れて、琵琶の名器・獅子丸を師長に授けます。村上天皇の霊が天上へと去り、師長も獅子丸を手に都へと戻って行くのでした。
狂言 墨塗
長らく都に滞在していた大名は訴訟が無事に解決したので、国元に帰ることになりました。そこで、都で親しくしていた女の元に暇乞(いとまご)いに訪れます。別れを告げられた女が泣き出したので、大名も思わずもらい泣きに。ところが、大名の従者の太郎冠者がふと見ると、なんと女は脇においた水を目につけて泣きまねをしているではありませんか! その事実をなんとか大名に知らせようと、太郎冠者は…。
能 花筐
越前国で暮らしていた男大迹皇子(おおあとめのみこ)は、降って湧いた皇位継承のため、大和へと旅立ちました。長く親しんだ照日前(てるひのまえ)は、皇子から託された手紙と形見の花筐(花籠)を受け取って、晴れの出来事を喜びつつも別れを悲しみます。
都で即位した皇子は継体(けいたい)天皇となり、今日は、紅葉狩の行幸をしています。そこに、恋慕を募らせて物狂いの体となり、はるばる大和へとたどりついた照日の前が現れます。古代中国の武帝と李夫人の逸話に託して切々と思いを訴えて舞う照日の前。手にしていた花筐に目をとめた継体天皇は、彼女がかつての恋人であると気づき、ふたたび宮廷に召すことを告げるのでした。
小書(特殊演出)、大返で、囃子の手が変化し型が加わります。舞入によって、常にはない中ノ舞が後場で舞われます。
狂言 謀生種
法螺(ほら)が上手な伯父にたびたび騙されている甥は、今日こそは逆に騙してやろうと、伯父の家へと向かいます。富士山に紙袋を着せたとか、琵琶湖を茶碗にして茶を飲んだとか、互いに大袈裟な法螺を吹き合った後、降参した甥は、上手な法螺を吹く秘訣を伯父に尋ねます。すると伯父は「謀生種という“嘘の種”があるので、おまえにも一粒やろう」と言い出して…。
能 野宮
秋深まる夕暮れ時の嵯峨野。斎宮となる皇女が精進潔斎のためにこもった仮宮(野宮)の旧跡に、旅の僧がやってきました。そこに里の女が現れて、遠い昔に、光源氏が六条御息所を訪ねてここにきたこと、そして今日はその日と同じ九月七日なのだと語ります。女は、自身が御息所の亡霊だと明かすと、姿を消してしまいました。
夜が更け、弔う僧の前に、牛車に乗った御息所の亡霊が現れます。そうして、賀茂祭の車争いで負った心の傷を抱えながら懐旧の舞を舞い、やがてまた車に乗り、闇の向こうへと去っていくのでした。
舞の後に合掌の型が加わる合掌の型が加わる合唱留、終曲部が変化する火宅留の小書がつきます。
海外からのお客様にも能楽に触れていただけるよう、わかりやすく楽しめる作品を選んで、冒頭では英語の解説を行います。解説と上演には6ケ国語の字幕(日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語)が付き、どなたさまでもお楽しみいただける公演です。
狂言 鴈礫
狩りに出た大名が雁を見つけて、ここでもない、あちらでもないと、さまざまに狙いをつけているところ。すると、通りすがりの男が、石礫(いしつぶて)を投げてあっさりと仕留め、持ち去ろうとします。大名は、「それは自分の雁だ!」と言って、ふたりは諍(いさか)いに。そこに仲裁人が現れて、事態を収拾しようとするのですが…。
能 清経
源平の戦いで都を追われた平家一門。もはや勝ち目はないと絶望した平清経(たいらのきよつね)は、豊前国の柳が浦で入水して命を絶ちます。船中に残された遺髪を清経の妻に届けるため、家臣の粟津三郎(あわづのさぶろう)が、はるばる都へとやってきました。夫の自死を知らされた妻は、嘆き悲しみ、遺髪を受け取ることを頑なに拒みます。
その晩、妻の枕元に清経の亡霊が現れて、なぜ遺髪を受け取ってくれなかったのかと恨みを述べると、妻は、ひとりで勝手にあきらめて命を絶たれたことが口惜しいと夫を責め恨みます。清経は、神に見放され敵におびえる船上での日々の苦しさと、世の無常を説き、戦に明け暮れた者が落ちる修羅道の様子を語ります。けれど最後に念仏を唱えた功徳で、自らの魂は救いの船に乗ることができたと告げて、闇の中へと消えていくのでした。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●令和7年9月主催公演発売日
- 電話インターネット予約:令和7年9月10日(水)午前10時~
- 国立能楽堂チケット売場窓口・自動発券機は国立能楽堂主催公演日(*)のみの営業(午前10時~午後6時)です。
*販売開始は電話・インターネット予約開始日の翌日以降 - 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
https://ticket.ntj.jac.go.jp/