トピックス
【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂令和7年7月主催公演がまもなく発売です!
狂言 萩大名
わけあって長らく都に滞在していた遠国の大名が、気晴らしに遊山に出かけることにします。どこに行こうか相談された太郎冠者は、下京の知人の庭がちょうど萩の花盛りだと言ってすすめました。ただし庭の亭主は、萩を見に来た者には当座(とうざ)(即興の和歌)を求めると聞いて、大名は尻込みしてしまいます。そこで、太郎冠者が聞きかじりの和歌を主人に教えますが、物覚えの悪い大名はなかなか歌を覚えることができず…。
能 楊貴妃
寵妃・楊貴妃の死を悼(いた)む唐の玄宗皇帝の命を受けて、方士(ほうし)(道教の仙術師)が楊貴妃の魂魄こんぱくのありかをたずねて蓬莱宮(ほうらいきゅう)へとたどりつきます。方士と対面し、皇帝の嘆きの深さを知った楊貴妃は、皇帝との昔日を懐かしみ愁いに沈みます。皇帝に報告するため“対面を果たした証”を請う方士に、楊貴妃は髪に挿していたかんざしを渡し、皇帝と交わした秘密の言葉を明かして、去り行く方士をひとり寂しく見送るのでした。
玉簾の小書(特殊演出)は、蓬莱宮の作り物に多数の鬘帯を垂らして帳(とばり)に見立て、厳かななかに華やぎが加わる演出です。
狂言 宝の槌
近ごろ流行しているお宝比べ(愛蔵の逸品を持ち寄って優劣を競う)。主人は、「奇瑞を現わす霊験あらたかな宝」を比べる集まりに参加することになりましたが、そんなお宝は家にはないので、太郎冠者に買い求めてくるよう命じます。都についた太郎冠者は、目的のお宝がどんなものか、どこで売っていいのかわからないため、「宝、買おう」と大声を出しながら歩き出しました。すると、すっぱ(騙り者)が近寄ってきて、宝屋の主だと名乗り、古い太鼓の撥を持ち出します。これは、その昔、鎮西八郎為朝が鬼ヶ島で鬼と戦った際の戦利品のひとつで、呪文を唱えて振れば欲しいものが自在に出る打出の小槌だ、というのですが…。
能 一角仙人
天竺(てんじく)(インド)の波羅那(はらな)国では、一角仙人が神通力を使って龍神を岩屋に閉じ込めてしまったため、雨が降らず困っていました。そこで帝は、仙人のもとに絶世の美女・旋陀夫人(せんだぶにん)を送り込み、酒と色香に酔わせて神通力を失わせようと策を練ります。計画通り、旋陀夫人と官人たちの一行は、道に迷ったふりをして一角仙人に一夜の宿を借り、酒宴を催しました。旋陀夫人の美しさに惑い、したたかに酒を飲んだ一角仙人は酔いつぶれて、神通力を失ってしまいます。その隙に龍神は岩屋を破り出て、一角仙人を倒し、恵みの雨を降らせるのでした。
7月23日(水)午後2時/24日(木)午後7時開演 国立能楽堂ショーケース
7月の公演では、能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの国立能楽堂ショーケースを盛りだくさんでお届けします。公演当日の上演前には、ロビーに能楽体験コーナーを設け、舞台では能楽師による簡単なプレトーク(解説)を行ないます。
狂言 寝音曲
ある晩、太郎冠者の家の前を通りかかりその謡を耳にした主人は、翌日、太郎冠者を呼び出して、謡うように命じました。けれど、これからたびたび謡わされることになるのは面倒だと思った太郎冠者は「酒をたっぷり飲んで、妻の膝枕がなければ謡えない」と嘘をつきます。ならば酒を飲ませよう、自分の膝も貸そう、と主人に言われ、酒を飲んだ太郎冠者は仕方なく主人の膝枕で謡い出しますが…。
能 鵜飼
甲斐国・石和(いさわ)を訪れた旅の途中の僧は、石和川のほとりで里の男に一夜の宿を乞います。けれど、この土地では旅人に宿を貸す事は禁じられていると断られ、怪しいものが出没するという川辺の御堂で一夜を明かすことになります。やがて御堂に、鵜使いの老人を乗せた一艘の鵜舟が漕ぎ寄せました。僧は、老人に殺生をやめるよう諭しますが、老人は「仕事だからやめるわけにはいかない」と答えます。そのやりとりを聞いていた供の僧が、数年前にこの川下で、同じような鵜使いの家に泊めてもらったことを思い出します。すると老人は、その鵜使いが殺生禁断の掟を破ったため里の人々に捕らえられ川に沈められた経緯を語り、自分はその亡霊であるとほのめかし、消えていきました。
やがて僧が鵜使いを弔っていると、閻魔大王が現れて、かつて僧を泊めた善行と法華経の功徳で鵜使いが成仏したことを告げるのでした。
狂言 棒縛
酒好きの太郎冠者と次郎冠者が自分の留守を幸いにこっそり酒を飲んでいることを日ごろから苦々しく思っている主人。今日こそはふたりの盗み飲みを阻止しようと一計を案じ、ひとりの両腕を棒に縛り付け、もうひとりの手を後ろ手に縛りあげ、酒が飲めないようにして出掛けて行きました。ところが、そんな状態になってもどうしても飲みたいふたりは、あの手この手でついに酒を飲むことに成功し、すっかり酔っぱらってしまいました。そこに帰ってきた主人は…。
能 葵上
光源氏の正妻・葵上は、物の怪にとりつかれ床に臥せっています。物の怪の正体をつきとめるため、照日(てるひ)の巫女が呼び出され、梓弓を用いた祈祷(弓の弦(つる)を叩いて鳴らし、その音で怨霊や神霊を導き出す呪法)を行なうと、源氏の愛人だった六条御息所の生霊が現れて、我が身のつらさを語り、葵上への恨みと怒りを吐露し、姿を消しました。急ぎ、高い験力(げんりき)を持つ横川(よかわ)の小聖が呼び出されます。怨霊退治の祈祷がはじまると、鬼女の姿となった御息所の霊が姿を現しました。激しい応酬の末、小聖の法力の前に力尽きた御息所の霊は、ついに成仏得脱を遂げるのでした。
7月28日(月)午後2時/29日(火)午後7時開演 国立能楽堂ショーケース
狂言 蝸牛
出羽国・羽黒山の山伏が、修験道の霊地、大峰山・葛城山での修行を終えて帰国の途中、あまりに眠くなってしまったので藪に入って一休みすることにします。
一方、祖父(おおじ)に長寿の妙薬である蝸牛を差し上げようと思う主人は、太郎冠者に蝸牛を採ってこいと命じます。ところが太郎冠者が蝸牛を知らないというので、主人は、「藪にいて、頭が黒く、腰に貝をつけ、ときどき角を出すもの」だと教えます。その特徴をたよりに太郎冠者が藪に入って行くと、そこには眠り込んでいる山伏がいて…。
能 船弁慶
兄・頼朝から嫌疑をかけられ追われる身となった源義経は、愛妾・静御前を伴って摂津国の大物浦(だいもつのうら)まで落ち延びてきました。腹心の家来・弁慶から、ここで静を都へ帰すよう説得された義経は、断腸の思いで静を残し、船に乗り込みます。
漕ぎ出した船が沖に出ると、にわかに海が荒れはじめました。義経に滅ぼされた平家一門の亡霊が海上に現れて、平知盛(たいらのとももり)の怨霊が襲いかかってきます。義経は動じることなく立ち向かい、弁慶の懸命の祈りによって調伏された怨霊は波の内へと消えて行きました。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●令和7年7月主催公演発売日
- 電話インターネット予約:令和7年6月10日(火)午前10時~
- 国立能楽堂チケット売場窓口・自動発券機は国立能楽堂主催公演日(*)のみの営業(午前10時~午後6時)です。
*販売開始は電話・インターネット予約開始日の翌日以降 - 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
https://ticket.ntj.jac.go.jp/