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国立劇場

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【5月文楽】好評上演中、27日(火)まで!(舞台写真あり)

 北千住のシアター1010(センジュ)にて開催中の5月文楽公演が9日(金)に初日を迎えました。
 第三部は、本格的な文楽を短い時間とお求めやすい価格でお楽しみいただける《文楽名作入門》として、お芝居の前の解説付きで「文楽は初めて」という方にもぴったりです。シアター1010は北千住駅直結の商業施設マルイの中にありますので、お買い物やお食事などお出かけのご予定と一緒に、文楽の魅力に触れてみませんか?
 舞台写真とともに、みどころをご紹介いたします。

【第一部】『芦屋道満大内鑑』(あしやどうまんおおうちかがみ)
 享保19年(1734)10月に大坂竹本座にて初演された、初代竹田出雲による全五段の時代物です。
 平安時代の陰陽師・安倍晴明は、和泉国(現在の大阪府)信田の森の白狐と安倍保名の間に生まれた子であるという「信田妻」伝説がもとになっています。本作は、人間以外の者と人間が夫婦になる「異類婚姻譚」として、柳の精と人間との婚姻を描いた『卅三間堂棟由来』と並ぶ代表的な作品の一つです。

〈加茂館の段〉
 天文博士・加茂保憲の急死により、娘・榊の前は、父の弟子である芦屋道満と安倍保名のどちらかに、家に伝わる天文の秘伝書『金烏玉兎集』を伝授して後継者にしようと考えました。そこで、道満と保名のそれぞれが仕える家の執権・岩倉治部と左近太郎の立ち会いのもと、御鬮で神慮を問うことになりました。
 治部の妹である保憲の後室は、兄の娘の夫である道満に『金烏玉兎集』を渡そうと、秘伝書を盗み出し、榊の前とその恋人の保名に紛失の罪を被せます。


加茂館の段


 さらに、保名が隠れていたところを引き出され、後室は二人を罪人として責め立てます。保名が疑いを晴らすために切腹しようすると、榊の前はその刀で自らの喉を突いて自害し、身の潔白を訴えます。突然の恋人の死に保名は正気を失い、榊の前の小袖をまとって館をさまよい出ていくのでした。


加茂館の段


〈保名物狂の段〉
 榊の前は、保憲が信田庄司からもらい受けた養女でした。その妹の葛の葉姫は、毎夜見る夢から姉の身を心配して、信田の森の社へ参詣に訪れます。
 そこへ、亡き恋人を求めて狂い歩く保名と家来の与勘平がやってきます。榊の前に生き写しの葛の葉姫が、与勘平から事情を聞いて保名に優しい言葉をかけると、保名は正気に戻ります。


保名物狂の段

 


保名物狂の段


 そこへ、森から狩人に追われた白狐が逃げてきて、保名はとっさに匿います。狐を追ってきたのは、庄司の甥で葛の葉姫に好意を抱いている石川悪右衛門でした。保名は葛の葉姫を逃がしたものの、悪右衛門に散々に打ちのめされ、恥辱のあまり自害しようとします。しかし、いつの間にか戻った葛の葉姫が思い留まらせると、保名は葛の葉姫とともにしばらく身を隠すため、阿倍野の里へ向かうのでした。


〈葛の葉子別れの段〉
 それから六年、保名と葛の葉の間には童子という男の子が生まれています。保名の留守中に、信田庄司夫婦が娘の葛の葉姫を連れて保名を訪ねてきました。庄司が窓から機屋を覗くと、中には娘と瓜二つの葛の葉がいます。庄司は驚き、庄司の妻と葛の葉姫も不思議がります。


葛の葉子別れの段


 戻った保名が庄司一行と出会います。葛の葉姫を連れてきたと言う庄司に促され、保名が機屋を覗くと、中にはもう一人の葛の葉がいました。不審に思った保名は真実を確かめようと、庄司夫婦と会ったことを告げ、奥の一間から女房の様子を窺っています。すると、衣服を改めた女房が童子を抱きながら身の上を語り始めます。この葛の葉の正体は、六年前に信田の森で保名に助けられた白狐だったのです。保名の自害を留めるため葛の葉姫の姿を借り、愛し合うようになりましたが、本物の葛の葉姫が現れては妻子の縁もこれきりに別れなければならない、と息子を抱きしめて嘆きます。


葛の葉子別れの段


 保名たちが駆け出ると、狐の葛の葉は童子を置いて姿を消してしまいます。母を慕って呼び叫ぶ童子の姿に、保名も、たとえ狐であっても夫婦や親子の愛に偽りはないと嘆き悲しみます。奥の障子には『恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信田の森のうらみ葛の葉』の一首が残されていたのでした。


葛の葉子別れの段


 そこへ、木綿買になりすまして様子を探っていた悪右衛門の家来・荏柄段八たちが踏み込んできて、葛の葉姫を奪おうとしますが、保名はたちまち打ちのめして追い払います。保名は夜明けを待ち、童子と葛の葉姫を伴って信田の森へ狐の葛の葉を訪ねることにするのでした。


〈信田森二人奴の段〉
 信田の森で、保名の帰りを待つ葛の葉姫と童子に、悪右衛門が襲いかかります。そこへ、与勘平が現れ、逃げる悪右衛門を追いかけます。葛の葉姫は、戻ってきた与勘平の手柄を褒めますが、与勘平は覚えがない様子です。実は、先ほど悪右衛門を追いかけた与勘平は、狐の葛の葉の従者である野干平という狐が化けたものだったのです。葛の葉姫と童子のもとへ、悪右衛門たちを退散させた二人の奴が戻ってきて……。
 人形の三人遣い発祥とされる演技にもご注目ください。多彩な場面が織りなす一大叙事詩をどうぞお見逃しなく。


信田森二人奴の段


【第二部】『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら)
 二世竹田出雲、三好松洛、並木千柳(宗輔)による合作で、『菅原伝授手習鑑』『仮名手本忠臣蔵』とともに“三大名作”と呼ばれる、全五段の時代物です。延享4年(1747)11月、大坂竹本座で初演されました。源氏と平氏の戦いの後、都から落ち延びる源義経を中心に、史実に様々な伝説や虚構を織り交ぜて大胆に脚色し、平家滅亡の悲劇を描きます。


〈伏見稲荷の段〉
 兄・頼朝との対立を避けるため都から落ち延びた源義経。追ってきた静御前が同行を願いますが、義経は許さず、形見として「初音の鼓」を託して立ち去ります。


伏見稲荷の段


 鎌倉(頼朝)の追手に襲われた静御前は、故郷へ帰っていたはずの義経の家来・佐藤忠信に救われます。その一部始終を見ていた義経は褒美として忠信に「源九郎」の名と鎧を与え、静御前を託すと、九州へ逃げるため摂津国の大物浦へと向かうのでした。


伏見稲荷の段


〈渡海屋・大物浦の段〉
 大物浦にやってきた義経一行でしたが、雨続きで船が出ず、船宿「渡海屋」で足止めされています。
 そこへ、鎌倉方の家来と名乗る相模五郎が訪れ、義経の後を追うために船を出すよう、女房おりうに強引に迫りますが、帰宅した主の銀平が制して船宿から追い出しました。様子を窺っていた義経は銀平の働きに感謝し、再び敵が来ないうちにと船乗り場へ急ぎ、銀平は手持ちの船で見送る準備にかかるのでした。


渡海屋・大物浦の段


 暮れ方、白糸縅の鎧を身にまとい、白柄の長刀を携えた銀平が現れました。実は銀平の正体は、源平合戦後に生き延びた平知盛で、安徳天皇を娘のお安、その乳母の典侍局を女房おりうとして守護しながら、義経に復讐する機会を狙っていたのでした。相模も実は家来で、義経を荒れた海へおびき出すために仕組んだ罠だったのです。知盛は義経との勝負に臨みます。


渡海屋・大物浦の段 


 典侍局と安徳天皇も装束を改めて戦いの吉報を待ちますが、義経に計略が悟られていたのか、やがて知盛が討死した合図が見えます。嘆き悲しんだ典侍局は、帝を抱いて海中に身を投げようとしますが、義経が現れて二人を抱き止めます。


渡海屋・大物浦の段

 
 手負いの知盛は、帝を抱いた義経に勝負を挑みますが、安徳天皇は献身を感謝して自分を助けた義経を恨まないよう諭します。典侍局は平家方の自分がいると帝の難儀になると、義経に後を託して自害します。知盛は義経に帝の供奉を願ってその場を去り、碇を背負って渦巻く波間に消えていくのでした。


渡海屋・大物浦の段


〈道行初音旅〉
 義経が吉野にいるという噂を聞いた静御前は、忠信を伴って大和路を急ぎます。忠信とはぐれてしまった静御前が、義経から託された初音の鼓を打つと、いつの間にか忠信が姿を現すのでした。二人は源平合戦に思いを馳せながら、吉野への道を進んでいきます。
 太棹の三味線の豊かな響きと、桜が咲き誇る絢爛たる舞台を背景に、二人が踊りなす名曲をお楽しみください。


道行初音旅


【第三部】《文楽名作入門》
入門「名作『平家女護島』の魅力を探る」
 「俊寛」とも呼ばれる名作『平家女護島』をより深くご鑑賞いただくために、お芝居の前に作品の面白さを解説します。


入門「名作『平家女護島』の魅力を探る」


『平家女護島』(へいけにょごのしま)
 全五段の時代物で、享保4年(1719)8月に大坂竹本座で初演されました。『平家物語』や謡曲『俊寛(喜多流では『鬼界島』)』で知られる俊寛僧都の悲劇を、近松門左衛門が浄瑠璃として再構成したのが、二段目の切に当たり、今回上演する「鬼界が島の段」です。


〈鬼界が島の段〉
 俊寛、丹波少将成経、平判官康頼の三人は、平清盛への反逆計画を企てたために絶海の孤島・鬼界が島に流罪となりました。三年の月日が経ち、成経は海女の千鳥と恋に落ち、契りを結びます。
 するとそこに、都から赦免状を持った使者・瀬尾太郎兼康がやってきますが、船には三人しか乗れず、千鳥の同行は許されませんでした。成経との別れを悲しむ千鳥のクドキは聴きどころです。


鬼界が島の段

 


鬼界が島の段


 瀬尾は俊寛の妻が清盛の意に背いて自害したことを告げます。最愛の妻の死を知った俊寛は、思いがけない行動をとります。孤独と絶望に襲われる俊寛の悲劇を、劇場でご堪能ください。


鬼界が島の段

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5月文楽公演は27日(火)まで!

チケット好評販売中
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※残席がある場合のみ、会場にて当日券の販売も行っています。

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