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国立劇場

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【2月文楽】好評上演中、26日(水)まで!(舞台写真あり)

 2月文楽公演が大井町のきゅりあん大ホール、後楽園/春日の文京シビックホール大ホールの2会場で開催されます。きゅりあんでの公演が8日(土)に初日を迎えました。
 初代国立劇場さよなら特別公演以来となる通し上演にて、歴史劇の金字塔『妹背山婦女庭訓』を3部制で上演しています。通しでのご鑑賞はもちろん、各部のみでもお楽しみいただける構成の公演です。
 舞台写真とともに、みどころをご紹介いたします。

『妹背山婦女庭訓』(いもせやまおんなていきん)
 『妹背山婦女庭訓』は、明和8年(1771)1月、大坂竹田新松座(竹本座)で初演されました。人形浄瑠璃黄金期の最後の名作者と評される、近松半二ほかによる合作です。
 中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣(藤原)鎌足が、大豪族・蘇我入鹿を武力によって排除し天皇中心の新政を到来させた「大化の改新」や、大和地方に点在する名所旧跡や伝説を題材とした、複雑な伏線と鮮やかな謎解きが、洗練された義太夫の演奏により進行し、舞台一面に日本の美しい四季が展開する大作です。

【第一部】
〈小松原の段〉
 春日大社に程近い小松原で、狩りの帰りに大判事清澄の息子・久我之助が休憩していると、武家の娘らしい雛鳥の一行が現れ、互いの素性を知らずに二人は恋に落ちます。そこへ、蘇我蝦夷子の家来で雛鳥に恋慕する宮越玄蕃が現れ、久我之助に、雛鳥が大判事と領地をめぐる争いで対立する太宰少弐の娘であることを告げます。久我之助と雛鳥は驚き、遺恨のある家同士で結ばれることはないと嘆きます。腰元が吹矢で玄蕃を懲らしめる隙に、雛鳥たちは帰っていくのでした。


小松原の段


 玄蕃の去った直後、藤原鎌足の娘で帝の寵愛を受ける采女の局が内裏から逃げて来ます。采女は、娘の橘姫を后にと望む蝦夷子の企みにより失脚した父・鎌足の行方を探していたのです。采女に仕える久我之助は、自分が処罰されるのを承知の上で采女を逃がします。

〈太宰館の段〉
 亡き太宰少弐の後室定高が守る館を訪れた蘇我入鹿は、大判事清澄を呼びつけ、久我之助と雛鳥が恋仲である両家の不仲は表向きで、密かに天智帝と采女を匿っているのではないかと、定高と大判事に疑いの目を向けます。入鹿は匿っていないのならその証拠にと、定高には娘の雛鳥の入内を、大判事には息子の久我之助の出仕を命じます。


太宰館の段

〈妹山背山の段〉
 吉野川を挟んでそびえる妹山と背山には桜が咲き乱れ、春の風情が色濃く漂っています。
 妹山にある太宰の館には雛鳥が、背山には大判事の咎めを受けた久我之助が身を寄せていますが、川を渡ることは禁じられていて二人は言葉も交わせません。
 そこへ帰館した大判事と定高は川を挟んで対峙し、お互いの子が入鹿から下された命令に従えば花を散らさずに桜の枝を川へ流すが、命令に背く場合はその命を絶ち、花を散らして枝だけを川に流すと約束したのです。
 定高は雛鳥に、久我之助の命を救いたいならば入内するようにと説得します。定高は、久我之助への愛を貫けば入鹿に背くことになり、雛鳥が入鹿に嫁げば久我之助の命が助かると説き、雛鳥は泣く泣く受け入れます。
 一方の背山では、大判事が久我之助の切腹を許していました。出仕を条件に久我之助を助けるというのは入鹿の策謀で、実際には拷問にかけて采女の行方を知ろうと企んでいることを、大判事は見抜いていたのです。久我之助は、自らの腹に短刀を突き立てると、雛鳥が後を追うことを恐れ、入鹿の命令に従ったことにしてほしいと大判事に頼み、大判事は花の咲いた桜の枝を川へ流します。


妹山背山の段


 妹山では、不意に落ちた雛人形の首を見た定高が、雛鳥は入内すれば貞節を守るために自害すると察し、自ら娘の首を切って入鹿の元に届けることを告げます。大判事の流した桜の枝を見た雛鳥は、久我之助の無事を喜び、定高も同じく花の咲いた桜の枝を川に流して久我之助を安心させますが……。


妹山背山の段


妹山背山の段


 通常、太夫と三味線がいる床は上手側(客席から見て舞台右側)のみですが、「妹山背山の段」では下手側(同 左側)にも床を設置します。華やかな舞台の様子とともに上手と下手の掛合での演奏もお楽しみください。


妹山背山の段


妹山背山の段


【第二部】
〈猿沢池の段〉
 猿沢池のほとりへ、ここで入水したという噂の采女を慕い、天智帝が人目を忍んでやってきました。
 そこへ、鎌足の息子・藤原淡海が現れます。淡海は帝の怒りを買って遠ざけられていましたが、蝦夷子の横暴や父の蟄居を聞き、帝を守ろうと駆けつけてきたのです。帝から許しを得た淡海は、入鹿の謀反を聞いた盲目の帝を安心させるために、遠見をしたところ禁裏は穏やかな様子に戻っているようだと告げます。そして禁裏へ戻ると偽り、帝の一行とともにその場を去るのでした。


猿沢池の段


〈鹿殺しの段〉
 葛籠山で息子の三作と狩りをしていた猟師の芝六は、猟が禁じられている爪黒の牝鹿を仕留めます。二人は仕留めた鹿を担ぎ、人目を避けて我が家に帰ります。


鹿殺しの段

〈掛乞の段〉
 芝六や女房のお雉が住む貧家には、天智帝一行が匿われています。そこに米屋の新右衛門が借金の取り立てにやってきますが、大納言兼秋には勘定書も珍しい和歌に見えるようで、話が通じません。金の代わりにとお雉に抱きついた新右衛門は、芝六に投げ飛ばされ、逆に間男代を請求されて逃げ帰るのでした。


掛乞の段


〈万歳の段〉
 奥から出てきた天智帝は、盲目のために自分が禁裏にいると思い込み、雅楽の演奏を望みます。淡海が困っていると、芝六はかつて覚えた万歳を三作とともに披露して急場をしのぎます。


万歳の段

 そして芝六は、密かに射止めた爪黒の牝鹿の血を入れた壺を淡海に渡します。入鹿誅伐のためには、爪黒の牝鹿の血が必要だったのです。実は芝六は、鎌足の旧臣でかつて勘当を受けた玄上太郎利綱でした。淡海は、父の鎌足が興福寺の裏の山中で帝の病気平癒を祈っており、今日が百日目の満願の日で、明朝、鎌足がここに来た時には勘当も許されることを伝えます。

〈芝六忠義の段〉
 禁猟の鹿殺しの犯人の噂を聞いた三作は、弟の杉松に手紙を持たせて興福寺に届けさせます。そこへ、入鹿の命により帝の行方を詮議しているという捕手が現れて芝六に自白を迫ると、芝六は申し開きをするために庄屋へ向かいます。
 淡海が芝六の裏切りを案じていると、興福寺の衆徒が鹿殺しの犯人として三作に縄をかけます。お雉と前夫の子である三作は、継父の芝六に孝行をせよというお雉の言葉を守り、犯人は三作だという手紙を杉松に持たせて、芝六の身代わりとなったのです。衆徒は明け方に三作を石子詰の刑(地面に掘った穴に人を入れ、周りに石を詰めて生き埋めにする刑)に処するため、引き立てていくのでした。
 お雉が悲嘆にくれるところに帰ってきた芝六は、上手く弁明して鹿殺しの疑いが晴れたので、夜が明ければ鎌足から勘当を許されると、上機嫌で寝入ります。しかし夜明けとともに芝六は抱いて寝ていた杉松を刺し殺します。


芝六忠義の段


 狼狽し嘆くお雉に、芝六は、先ほどの捕手は自分の心底を見極めるために鎌足が遣わした偽物だと分かっていたが、迷いを見せてしまったため実の子の杉松を犠牲にして覚悟を示したことを明かします。そこへ、鎌足が采女、三作とともに現れて……。


芝六忠義の段

 かつて興福寺の小僧が神鹿とされていた春日大社の鹿を殺めてしまったところ、当時、その鹿を「殺した者は石詰の刑に処す」という掟があり、十三歳の幼い命が失われたという「十三鐘」の伝説を下敷きに、わが子を犠牲にして忠義を貫く芝六の壮絶な覚悟が涙あふれる展開とともに綴られます。

【第三部】
〈杉酒屋の段〉
 三輪の里・杉酒屋の隣にある求馬の家へ、七夕の夜に人目をはばかるように白い被衣で顔を隠した女が訪ねてきました。求馬と契りを交わしていたお三輪に不実を責められた求馬は弁解します。心変わりはないという求馬の言葉に安心したお三輪は、赤い苧環(麻糸を玉状に巻いたもの)を求馬に手渡しました。七夕には、白い糸を男、赤い糸を女に見立て、男の心が変わらないようにとの願いを込めて、苧環を祀る風習があるのです。お三輪は求馬との変わらぬ仲を願うのでした。


杉酒屋の段


 そこに、先ほどの被衣の女が再び求馬を訪ねてきます。求馬はこの女にも言い逃れをし、お三輪とその女とで求馬の奪い合いとなりました。求馬の正体が藤原淡海だと睨んだお三輪の母まで諍いに加わるうちに、被衣の女はそっと抜け出し、求馬とお三輪も外へ逃れていくのでした。

〈道行恋苧環〉
 三輪の里から北へと夜道を進んでいく白い被衣姿の女は、実は入鹿の妹の橘姫で、素性を隠したまま、夜な夜な求馬の元へ通っていたのです。布留の社で、姫に追いついた求馬が名前を尋ねても、姫は恋が叶わない辛さを訴えるばかりです。そこへお三輪が追いつくと、お三輪は恋人を横取りしようとする姫と、再び求馬の奪い合いとなります。しかし、夜明けの鐘が鳴ると、姫は驚いて帰ろうとするので、求馬はとっさに持っていた赤い苧環の糸を姫の袖に付け、後を追います。その求馬の裾に白い糸を付けたお三輪もまた、糸をたどり二人の後を追いかけていくのでした。


道行恋苧環


〈鱶七上使の段〉
 三笠山にある蘇我入鹿の御殿に、藤原鎌足の書状を携えて鱶七と名乗る漁師が使者として乗り込んできます。鎌足の心中を探ろうとする入鹿の脅しに鱶七はものともせず、入鹿は鱶七を人質に取ります。


鱶七上使の段


 豪胆な鱶七は、床下から槍を突き出されても動じず、そのまま寝そべります。さらに官女たちが毒酒を呑ませようとしますが、怪しんだ鱶七が庭の草花に酒を注ぐとたちまち枯れてしまいました。
 隙のない鱶七に手を焼く入鹿の家来たちが鱶七を取り囲むと、鱶七は自ら先頭に立ち、取り調べに向かうのでした。


〈姫戻りの段〉
 入鹿の御殿に戻ってきた橘姫の袂には、赤い糸が付いています。官女たちが糸を手繰り寄せると求馬が現れました。入鹿の妹だと求馬に知られてしまった橘姫は、求馬の正体もまた藤原淡海であることに気付いていたのです。そして、二人は、夫婦になるために協力を誓い、求馬は橘姫に入鹿が盗んだ十握の宝剣を取り戻すように迫ります。橘姫は、兄の入鹿を裏切ることに苦悩しますが、帝のためと引き受けるのです。


姫戻りの段

〈金殿の段〉
 求馬の裾に付けた白い糸が切れ、はぐれてしまったお三輪が御殿に迷い込んできます。豆腐買いの女に尋ねると、求馬が橘姫と内祝言することを聞き、お三輪は思わず御殿に足を踏み入れます。


金殿の段


 お三輪が求馬を追ってきたと気付いた官女たちは、お三輪をからかいはじめます。求馬に会わせてもらえると信じて耐え続けたお三輪でしたが、官女たちはさんざん笑い者にした挙げ句、取り縋るお三輪を捨て置いて奥へ入ってしまいました。


金殿の段


 屈辱と橘姫への嫉妬から逆上したお三輪の前に鱶七が現れ、押しのけようとするお三輪の脇腹に刀を突き立てます。鱶七の正体は、鎌足の忠臣・金輪五郎だったのです。お三輪を討った金輪五郎の入鹿誅伐に向けた狙いとは……。


金殿の段


 『古事記』に綴られる三輪山の伝説が物語のエッセンスであり、名前のもととなった可憐な少女・お三輪。入鹿の御殿で繰り広げられる政権をめぐる闘争の渦、そんな争いとは無縁の存在であったはずのお三輪の犠牲がこの一大叙事詩を、悲恋の涙とともに大団円に向かわせます。

◆◆◆

2月文楽公演のきゅりあん大ホールでの開催は、16日(日)まで!
20日(木)から26日(水)は、文京シビックホール大ホールで開催いたします!


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