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第13回文楽特別講座を開催しました!
開催日:令和7年6月6日(金)
場所:国立文楽劇場小ホール
第13回文楽特別講座「文楽アメリカ公演 レポート&トーク」を開催しました。
最初に、アメリカ公演の制作担当者より、アメリカ公演実施に至る経緯と、公演ツアーの内容をご紹介しました。
令和6年9~10月に開催したアメリカ公演では、「荷物の軽量化」と「日本文化の発信」を見据え、アニメの背景美術をもとにした映像を使用するという新たな試みを行いました。その制作資金を調達するためにクラウドファンディングを実施し、たくさんの方から温かいご支援をいただきました。
冒頭では、こうしたチャレンジの成果を初めて披露する公演となった令和6年3月の「BUNRAKU 1st SESSION」の紹介映像を放映しました。
アメリカ公演は5都市で9公演を開催し、全公演完売。日米交流団体ジャパン・ソサエティのコーディネートにより、ワークショップ、レクチャー、展示なども実施され、充実のプログラムとなりました。
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続いて、アメリカ公演に参加した豊竹芳穂太夫さん・鶴澤寛太郎さん・吉田簑紫郎さんが登場。制作担当者が進行役となり、 アメリカ公演ツアーを振り返るトークショーを行いました。
アメリカ公演の思い出を語らう3人(左から簑紫郎、寛太郎、芳穂太夫)
背景に映像を使うと聞いて───
寛太郎「見る前はあまり期待していなかったのですが、実際の映像を見てクオリティの高さに驚きました」
アメリカ公演への出演を打診されて───
芳穂太夫「(BUNRAKU 1st SESSIONに出演していなかったので)自分が参加していいのかなという思いでした」
日本芸術文化振興会が海外公演を主催するのは、今回が初めて───
簑紫郎「振興会の方々をどれだけサポートできるか、気を付けていました」
海外公演の経験が豊富な技芸員の方々のご協力もあり、荷物のスリム化やスムーズな出入国が実現しました。
今回のツアーでは、アメリカの5都市を訪問。 トークショーでは、訪れた都市ごとに、写真を見ながら思い出を語り合いました。
ロサンゼルスのワークショップでは、現地の人形劇団のメンバーも参加。
ご厚意で、劇団が使っている人形を操作させてもらいました。
東海岸の都市フェアフィールドのレクチャーは、学生の方々も多数参加し、技芸員が質問攻めに。
簑紫郎「アメリカの人はもっと派手なエンタメが好きなのではという先入観がありましたが、文楽にすごく興味を持ってもらえたようでした」
アメリカ最大の都市ニューヨークでの文楽公演は34年ぶり。ツアーのコーディネーターでもあるジャパン・ソサエティの主催により実現しました。現地で行ったイベントでは、通訳の方の的確な翻訳が3人とも特に印象深かったそうです。
芳穂太夫「物価が本当に高かったですね。ワシントンやロサンゼルスはそれと比べると安かった」
寛太郎「終演後、ロビーで若い女性の観客に”incredible!” (感動しました!) と声をかけられました」
簑紫郎「前回(34年前)のニューヨーク公演は自分が初めて参加した海外公演で、師匠の簑助がお初を遣いました。この場所でお初を遣わせてもらえて、うれしかったです」
ワシントン公演は、首都ワシントンD.C.の中心部にあるケネディ・センターで開催。
劇場のスタッフの方が、人形遣いの黒衣をきれいに洗濯してくださいました。寛太郎さんも「せっかくだから」と衣服を洗ってもらったそうです。(芳穂太夫「ぼくも出しとけばよかったな」)
最後の都市ヒューストンは、真夏のような暑さ。
ツアーの千穐楽となる公演を前に、吉田玉助さんの音頭で「大阪締め」を行いました。
アメリカ公演を振り返って、最後に3人からひとこと───
芳穂太夫「今回の形式の「曾根崎心中」を、大阪でもご覧いただく機会があればいいなと思います」
寛太郎「ぜひ他の国でもやってみたいですね。回数を重ねてさらに質を上げていきたいです」
簑紫郎「やっぱり文楽ってすごいなと感じました。国内外でもっと文楽をアピールしたいです」
アメリカ公演に続くさらなる展開に期待をふくらませて、講座は幕となりました。
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三人の和気あいあいとしたやりとりに、会場は終始和やかな雰囲気に包まれました。ご参加のお客様からは、「海外公演ならではの興味深い話が聞けてよかった」「アメリカでも文楽への関心が高いことがわかってうれしかった」「ぜひ凱旋公演を!」などの声をいただきました。終了後は、大勢のお客様が資料展示室で展示「BUNRAKU×WORLD」(終了しました)を観覧し、アメリカ公演の舞台写真や男鹿和雄さんが描いた「曾根崎心中」背景原画などの資料をご覧になっていました。
国立文楽劇場では、伝統芸能をより深く楽しんでいただける講座を、今後も開催してまいります。
どうぞご期待ください。