国立劇場あぜくら会

イベントレポート

あぜくらの集い
「国立劇場あぜくら会会員特別 バックステージツアー」

開催日:平成28年4月23日(土)
場所:国立劇場

4月23日(土)、国立劇場大劇場にて「あぜくら会会員特別バックステージツアー」を開催いたしました。平成25年からご好評をいただいている人気企画で、今回は4度目の開催となりました。

驚きと発見の舞台裏

まずは舞台機構のデモンストレーションから。軽快な音楽にのせて、大劇場の廻り舞台(盆)や大迫り(おおぜり)のダイナミックな動き、星空から明け方へと刻々と変わる照明効果などをお楽しみいただきます。毎年、夏の歌舞伎鑑賞教室でもお見せしているものですが、今年からのリニューアル版を初披露させていただきました。

華やかな舞台機構演出でツアー開始
華やかな舞台機構演出でツアー開始

ここからは三班に分かれ、舞台上から楽屋までをご見学いただきます。

花道を通って舞台上の「盆」の上へ。はじめはゆっくりと、やがて速度を上げながら廻る盆の動きを体験していただきました。舞台上から客席の奥までよく見渡せることに感嘆の声が上がります。「緞帳(どんちょう)」を降ろすと、裏側の目立つ場所には〈舞台禁煙〉の注意書きも張られています。もちろん火気厳禁です。

普段は見られない緞帳の裏側
普段は見られない緞帳の裏側

また、多くの方の興味をひいていたのが、舞台下手(客席から見て左側)で歌舞伎音楽を演奏する「黒御簾(くろみす)」でした。こぢんまりとした御簾内に十数人がひしめいているという説明に、「うわぁ、狭いですね」と率直な感想が。とはいえ、御簾内から舞台は意外なほどよく見えるため、驚かれる方が多かったようです。

黒御簾内のつくりに驚きの声
黒御簾内のつくりに驚きの声

歌舞伎を彩る演出と背景

お次は「浅葱幕(あさぎまく)」の振りかぶせと振り落としの実演です。バトンに掛けられた浅葱幕を降ろし、下で待ち構える参加者の皆さんに幕を巻くお手伝いをしていただきます。幕を引っかける突起がついたバトンの仕掛けも見ていただきながら、巻き終えた幕を上昇させ、合図とともに「振りかぶせ」、そしてバトンを回し「振り落とし」でバサッと幕が落ちるやいなや、拍手と歓声があがります。

浅葱幕の振り落としを体験
浅葱幕の振り落としを体験

前回のバックステージツアーから登場した「雪籠(ゆきかご)」にも触れていただきました。横長の「振り籠」に入った紙製の雪は、一センチ角ほどの四角形です。「昔は三角形の雪だったのでは?」という質問に、「三角形は速く落ちてしまうんです」とスタッフが答えます。「すごく薄い紙」「和紙じゃないんだ」と、紙の雪の手触りを確かめる皆さん。高く掲げた振り籠を左右にゆっくり揺らし、はらはらと舞い落ちてくる雪を見て、「(籠を揺らすのは)機械ですか?」との質問が出ると、「人力です。上手な人がやらないときれいに雪が降りません」とスタッフ。「立派な社会科見学ですね」という参加者の方の言葉が印象的でした。

雪籠から雪の降る様子を間近に
雪籠から雪の降る様子を間近に

すると今度は、舞踊劇などでもおなじみの「松羽目(まつばめ)」が描かれた吊り物が、高い天井から降りてきました。ここでしばし撮影タイム。松羽目を背景にして、皆さん思い思いに記念撮影をされていました。スタッフの「松羽目、飛びます!」の大きな声と共に、再び天井へ収納されます。ちなみに「飛ばす」とは舞台用語で、吊り物を上昇させることを指します。

おなじみの「松羽目」が降りてきました
おなじみの「松羽目」が降りてきました

機能的な楽屋

大劇場の広い舞台袖に置かれた道具類や装置を横目に見ながら、舞台裏にある楽屋エリアへと移動します。

公演を取りまとめる頭取と、俳優の楽屋入り状況がわかる「着到板(ちゃくとうばん)」の俳優名や小道具の手紙など、文字を書く役割を一手に引き受ける狂言作者が待機するのは「頭取部屋」です。座頭が使用する二間続きの楽屋から大人数用の大部屋、立役と女方それぞれの鬘を拵える「床山部屋」、刀や煙管などの道具類をメンテナンスして翌日に備える「小道具部屋」などのほか、大小二つある風呂場もご見学いただきました。掃除の行き届いた各部屋や廊下の様子に、「塵ひとつ落ちていないね」との声も聞かれました。

熟練スタッフの技術

楽屋を後にして、再び舞台上を通り、花道の先にある「鳥屋(とや)」もご見学いただきました。役者の花道への出や引っ込みを印象づける「チャリン」という音は、「揚幕(あげまく)」を開閉する際におなじみでしょう。ただし演目によっては、あえて音を立てずに役者が花道に登場する場合もあり、揚幕の係には経験や芝居の知識が必要とされます。

最後に三班に分かれていた見学の方々が客席に戻り、質疑応答タイムに。舞台スタッフの人数、道具や衣裳、音響、舞台機構の仕組みや操作についてなど、皆さんからは次々と質問が飛び出しました。

「スタッフの方たちが暗い場所で作業されていることに驚きました」「裏方さんは大変ですねぇ」「こういう舞台裏を見せていただくと、また舞台を違う目で観劇できそうです」などと話される方々も。今回のバックステージツアーも大盛況のうちに終了しました。

あぜくら会ではこれからも会員限定の様々なイベントを開催してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。

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