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国立劇場あぜくら会

イベントレポート

あぜくらの集い
「四谷怪談」「忠臣蔵」ゆかりの地バスツアーを開催いたしました

平成27年10月13日(火)開催

10月13日の「あぜくらの集い」では、国立劇場12月歌舞伎公演『通し狂言 東海道四谷怪談』と、物語の背景となっている『仮名手本忠臣蔵』のゆかりの地を訪ねる貸切バスツアーを開催いたしました。アニメの声優やナレーターとしても活躍中の女流講談 一龍齋貞友(ていゆう)師とご一緒に、於岩(おいわ)稲荷田宮神社、陽運寺、妙行寺、泉岳寺を巡りました。

国立劇場あぜくら会御一行様と書かれたバス 写真
国立劇場あぜくら会御一行様と書かれたバスで出発

二つのお岩稲荷

気持ちのいい秋晴れに恵まれた当日。『忠臣蔵』にちなんで「四十七人」の参加者の方々が、国立劇場前からバスに次々と乗り込みました。ご案内いただく貞友さんをお迎えして、いざ出発。「『講釈師、冬は義士、夏はお化けで飯を食い』と申します」と笑わせる貞友さんの軽快なお話に耳を傾けながら、まずは新宿区四谷左門町にある於岩(おいわ)稲荷田宮神社、陽運寺へと向かいます。

バスを降りて閑静な住宅地の路地を少し歩くと、鮮やかな紅い幟が見えてきました。道を挟んで斜向いに立地する二つの寺社は、ともに「お岩稲荷」と称されます。四世鶴屋南北による『東海道四谷怪談』の主人公、民谷伊右衛門のモデルとなった田宮伊右衛門の妻、お岩が祀られています。

田宮神社では、江戸時代から伝わるゆかりの井戸を特別に見せていただきました。今でも『四谷怪談』を上演する際の清めの水として、この井戸水を求められることがあるそうです。

田宮神社 写真
田宮神社ではゆかりの井戸を見せていただきました

また陽運寺でも、門外不出のお岩様像を特別に拝観させていただきました。本堂には、日蓮大上人と並んでたおやかなお岩様の木像が祀られています。奇しくも、当日は日蓮上人の七三四回目のご命日でもありました。

陽運寺本堂 写真
陽運寺本堂でお岩様の木像を見せていただきました

お岩様が眠る妙行寺

次に目指すは豊島区西巣鴨にある妙行寺です。墓地の一番奥に、実在したお岩様のお墓があります。お岩が夫伊右衛門との折り合いが悪く病身となって亡くなった後、田宮家には数々の災いが続きましたが、田宮家の菩提寺である妙行寺の四代目日遵上人の功徳によって、一切の因縁が取り除かれたと伝えられます。もともとは「お岩稲荷」同様に四谷にありましたが、明治末期に現在地に移転しました。

墓地内には浅野内匠頭の妻瑶泉院の供養塔も建てられ、お岩様のお墓とともに参加者の皆さんが手を合わせていかれました。夏に逆戻りしたかのような強い陽射しが照りつける中での墓参となりましたが、「こうして一度にお岩様ゆかりの地を巡ることができるなんて最高です」とおっしゃる参加者の方も。

妙行寺近くの商店街には、「お岩通り商店会」の看板が掲げられていました。

「忠臣蔵もの」として

妙行寺から最後の目的地である泉岳寺(港区高輪)へ移動するバスの車中では、12月の歌舞伎公演『通し狂言 東海道四谷怪談』制作担当者より、なぜ夏芝居の代表的な怪談狂言を真冬に上演するのか、企画意図を説明させていただきました。

『東海道四谷怪談』は『仮名手本忠臣蔵』の外伝となっています。初演時には『忠臣蔵』と二日がかりで交互に上演され、両作品には深い関係性があったのです。今回も「忠臣蔵もの」として楽しんでいただくため、12月の上演となった次第です。普段は上演されない「小汐田又之丞(おしおだまたのじょう)隠れ家」では、義士の一人で、小仏小平(こぼとけこへい)の旧主であった又之丞が登場し、なぜ小平が民谷家の秘薬ソウキセイを盗もうとしたのか、その背景が明らかになります。

泉岳寺で聴く講談「潮田又之丞」

泉岳寺への道中、港区新橋には、田村右京大夫邸で切腹した浅野内匠頭終焉の地があります。「刃傷事件の即日、庭前(ていぜん)での切腹は武士として最大の屈辱でした」と貞友師。今や屋敷の跡形もなく、交通量の多い道路脇に、「浅野内匠頭終焉之地」の石碑と辞世の句が残るのみ。車窓から石碑を眺め、内匠頭の無念に思いを馳せました。

さて、内匠頭と赤穂義士が眠る泉岳寺に到着です。中門を抜けると山門の手前に大石内蔵助良雄銅像が立ち、連判状を手に東の空(江戸方向)を見据えています。

ツアーの最後は、講堂にて貞友師が「潮田又之丞」の一席をご披露。内蔵助と行動を共にして東に下った潮田又之丞が、船頭に身をやつして情報を集めながら討ち入りに至るまでを、迫力たっぷりに語っていただきました。派手さはなくも手堅く果たすべき役割を全うした又之丞の人となりを知ると、『通し狂言 東海道四谷怪談』での「小汐田又之丞隠れ家」も、いっそう味わい深くなることでしょう。

一龍齋貞友さん 写真
一龍齋貞友さん
貞友さんによる講談 写真
泉岳寺講堂にて貞友さんによる講談を鑑賞

最後の自由時間では、赤穂義士記念館や赤穂義士墓地を思い思いに散策していただき、夕闇も迫る頃にツアーは終了しました。皆さま、お疲れさまでした。

あぜくら会で初の試みとなった今回のバスツアー。アンケートでは、「貞友さんの案内と講談がすばらしかったです」「四谷怪談ゆかりの地のみならず、都内観光も楽しめました」「演目ゆかりの地をめぐるバスツアーをこれからも企画してください」などの感想を頂きました。これからも会員限定の多種多様なイベントを企画してまいります。皆さまのご参加をお待ちしております。

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