あらすじ・見どころ

【初段】

  • 大内の段
  • 加茂堤の段
  • 筆法伝授の段
  • 築地の段

大内の段

 醍醐(だいご)天皇の御代、唐土(もろこし)の皇帝が日本の天皇の御姿を画に写させるよう僧を派遣します。折悪しく帝はご病気の最中。右大臣の菅原道真(すがわらのみちざね)【菅丞相(かんしょうじょう)】は、弟宮の斎世(ときよ)親王を帝の代理として立てることを提案します。密かに帝位簒奪(さんだつ)の野心を抱く左大臣・藤原時平(ふじわらのしへい)はこの様子を忌々しい思いで見つめます。

 宮中での時平と菅丞相の左右大臣の牽制を描きます。〝大序(だいじょ)〞と呼ばれ、御簾内(みすうち)で若手の太夫・三味線が荘重な節を演奏する形式で一大史劇の発端となります。

この神未だ人臣にまします時、
菅原の道真と申し奉り、
文学に達し筆道の奥儀を極め給へば、
才学智徳兼ね備はり右大臣に推任あり。
権威に蔓延る左大臣藤原の時平に座を連ね
菅丞相と敬はれ君を守護し奉らる、
延喜の御代ぞ豊かなる

加茂堤の段

 菅丞相(かんしょうじょう)の領地・佐太村(さたむら)の百姓・四郎九郎(しろくろう)には三つ子の兄弟・梅王丸(うめおうまる)、松王丸(まつおうまる)、桜丸(さくらまる)がおり、それぞれ菅丞相、藤原時平(ふじわらのしへい)、斎世(ときよ)親王の舎人(とねり)として仕えています。桜丸は主人の斎世親王と丞相の養女・苅屋姫(かりやひめ)との逢い引きを取り持ちます。しかし、その様子を時平の家臣に見咎められ二人は出奔、後の政変の火種となってしまいます。

※家来のこと。三つ子は牛飼舎人で、舎人の中でも最も身分が低いものでした。

 この物語の一つの軸となる三つ子の兄弟のそれぞれの姿を示し、また斎世親王と苅屋姫の恋を描きます。史実の親王も、道真の娘・寧子を后とし、その縁戚が道真左遷の政変、昌泰の変の要因となるのです。

筆法伝授の段

 帝は名筆の誉れ高い菅丞相(かんしょうじょう)に、その筆法を後世に残すため、優れた弟子を選んで伝授せよと命じます。丞相から呼び出されて訪れたのは不義により勘当されている武部源蔵(たけべげんぞう)。源蔵は丞相の求めに応じ見事に詩歌を書き上げ、筆法の伝授を許されますが、源蔵が強く念願した勘当の赦免は叶いません。そこへ急な参内の命令が下り、丞相は訝(いぶか)しがりながらも御所へ向かいます。

 〝筆法伝授の段〞は初段のクライマックスにしてこの演目の題名の由来ともなる荘重な場面です。高名な文人宰相である道真が、勅命により精進潔斎(しょうじんけっさい)して伝授に臨む気品ある姿も見どころです。

恭しく注連引き栄へ、
常に変はりし白木の机、
欣然として座し給ふ、
凡人ならざる御有様。
恐れ敬ふ源蔵が五体の汗は布子を通し、
肩衣絞るばかりなり

築地の段

 参内した菅丞相(かんしょうじょう)は藤原時平(ふじわらのしへい)の讒言(ざんげん)により罪に着せられます。斎世(ときよ)親王と苅屋姫(かりやひめ)の出奔は娘を后に立て親王を帝位に就けようとする丞相の陰謀だとされたのでした。

 流罪と決まった丞相の蕭然(しょうぜん)たる様、菅秀才を守護する梅王丸(うめおうまる)と源蔵(げんぞう)・戸浪(となみ)夫婦の活躍が描かれます。

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