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国立文楽劇場

笑って泣いて全部盛り!「一谷嫰軍記」

たきいみき

4カ月ぶりの文楽劇場。
場内には第3部の「勧進帳」のための花道がどーーーん!
文楽では珍しいのです。
折角の花道横のお席だったのですが第2部では花道、使われません。涙

今回の11月文楽公演は第2部のみの観劇です。
「一谷嫰軍記」三段目

いま、大河ドラマでもアツいあの時代、のちょっと前。
ドラマがスタートした頃と重なります。
平家が源氏に追いつめられどんどん西へと追いやられている中でのお話し。

これは、まさに、
盛りに盛られたスーパーフィクションエンタメ作品でした。

今回も、ネタバレ覚悟でわたしがハートを射抜かれた見どころを箇条書きにしようと思います。
何も知らずに見たかった!!という方はご観劇後にお読みくださいませ。
(そういえば坂本龍馬が大河ドラマのテーマだった時、毎週楽しみに見ていた女子高生が電車の中で「教科書に、龍馬殺されるって書いてあった!ネタバレやめてほしかった!!マジで腹立つ!」って話してたというのを何かで読んだ記憶がよみがえりました。余談。)

「弥陀六内の段」
◎冒頭から小雪ちゃんの可愛いこと!!!
恥じらう乙女の姿にキュンキュン。モジモジする姿が堪りません。
◎お岩さんのおばちゃん的押しの強さにシンパシー。心が実年齢を感じる。
◎美男美女のやり取りがいじらしくて、若返り気分に。心は10代に戻れました。


「脇ヶ浜宝引の段」
◎終始、笑いに包まれていた。こんなにも楽しい場面とは!
時間的にかなりの尺がありましたが、テンポも小気味よく軽妙、
それでいて物語がきちんと伝わって来て、充実の段でした。
◎咲太夫師がご病気療養のため拝聴できなかったのは残念でしたが、
咲太夫師ならばどのように語られるのかな、と想像しつつ、
織太夫さんのエネルギッシュなお声を堪能。燕三師の音色にほれぼれ。
◎たくさんしゃべる登場人物が多い場面で、珍しく感じる。
ツメ人形さんたちがアクティブな動き、役の語り分けの妙技も楽しい。

この後休憩。
ロビーでは「こんな賑やかな場面はじめて見たわ!」と皆さん、えびす顔。
わたしも重めの時代物と思い込んでいたので、意外な開幕で次がより楽しみに。


「熊谷桜の段」
◎希太夫さんの微妙な音の使い分けで会話が生き生きと聞こえてきて、笑いで上がった空気を上昇させつつ悲劇的なクライマックスへと運ぶ力に引っ張られる。
◎特に女性二人の会話。
同性で同世代の登場人物の語り分け、難しいのよね…と、
自分が朗読の時などに感じることを思い返しつつ、素晴らしいなと感服。


「熊谷陣屋の段」
◎クライマックスでの爆発のために、まずは、ぐっと場を鎮める時間。
じっくりこーーーんとした場面構成。敦盛の最期にしっとり。
◎一気に点が線になっていくラストは、ジェットコースター。
どんでん、どんでん、エンタメ度マックス。
◎来年のカレンダーに選ばれそうな美しい構図が続々と。
こんなに名構図を大盤振る舞いしていいの?というほど。
特に熊谷の、取りすがる相模と藤の局を立札で抑えつつ義経へ敦盛と入れ替わったわが子の首を差し出す、ややオフバランス気味な身体。
忠義と親子の愛情の上にギリギリのところで立つ姿。
際どいバランスが今にもくずおれそうな悲しみを感じさせて、胸を締め付けられる。

◎そして、もう、わたしの大大大大好きな!和生師の「嘆く女性」
この世の中にこれ以上美しいものがあるのかと思うくらい好きなのです。
「花上野誉碑」のお辻で大号泣して以来、大ファンになってしまいました。
今回もお美しゅうございました!!!!
もっと長い時間見ていたいくらい美しくて悲しくて。
人物の心がわたしの心に乗り移ってくるかのような体験で、落涙してしまうのです。

◎その小さい箱に敦盛入ってるの?こっちも首?と思うけれど、どうやら生きて入っている模様。よかった!
◎ラストの弥陀六、動きがすごい!これを3人で遣ってらしゃることを忘れるほど。


観劇後、心からの拍手。
笑って泣いて、充実の全部盛り満足度100%の観劇でした。

そして帰り際、ロビーで看板を発見。
当日券のみで「勧進帳」がリーズナブルに幕見できるというプランです。
社会人にとっては、今日早く帰れる!となった時にとても嬉しい企画だと思いました。
今後もこのような企画があります事を願っています。

■たきいみき
舞台女優。大阪生まれ。
主演作に「黒蜥蜴」「ふたりの女」「夜叉ヶ池」(演出:宮城總)、「令嬢ジュリー」(演出:フレデリック・フィスバック)など。野田秀樹作、オン・ケンセン演出「三代目、りちゃあど」では歌舞伎や狂言、バリ伝統影絵などジャンルを超えたメンバーと共演の他、クロード・レジ「室内」、オマール・ポラス「ドン・ファン」など、海外の演出家とのクリエーション作品も多数。来春2〜3月「人形の家」に主演。

(2022年11月21日 第二部『一谷嫰軍記』観劇)

 

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