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国立劇場

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【8・9月文楽】好評上演中、24日(日)まで!(舞台写真あり)

8・9月文楽公演が8月31日(木)に初日を迎えました。
いよいよ初代国立劇場最後の文楽公演の開幕です。
第一部と第二部では、『菅原伝授手習鑑』の三段目~五段目を上演し、5月から続く通し上演が完結します。上演が稀な場面も含めた51年ぶりの完全通し上演で、物語の全貌をご覧いただける貴重な機会です。
第三部では『曾根崎心中』をお楽しみいただきます。文楽を代表する人気演目で、初代国立劇場文楽公演の締めくくりにふさわしい極め付きの名作です。
舞台写真とともに、みどころをご紹介いたします。

【第一部】
『菅原伝授手習鑑』
(すがわらでんじゅてならいかがみ)三段目~四段目「天拝山の段」まで
菅原道真(劇中では菅丞相)の悲劇と、丞相を慕って恩に報いようとする三つ子の兄弟の物語が絡み合う大作です。本公演では、丞相が藤原時平の讒言によって筑紫に配流されたのちの展開を描きます。

京の吉田神社近くで怨敵・藤原時平の行列に出会った梅王丸と桜丸。恨みを晴らそうと立ち塞がり、時平に付き添う松王丸と押し問答になります。しかし、現れた時平の眼光に圧倒されてしまい、動くことができません。
歌舞伎でも有名なこの場面は様式美に彩られた一幕で、三つ子の個性やそれぞれの立場が描かれます。


『菅原伝授手習鑑』車曳の段



三つ子の父は佐太村に住む百姓の四郎九郎で、丞相の下屋敷を預かり、梅・松・桜の世話をしています。70歳の祝いに丞相から白太夫という名前を与えられました。今日が70歳の誕生日ですが、丞相の流罪もあって、小さな餅に茶筅で酒を振ったものでささやかな祝宴となっています。
そこへ三つ子それぞれの妻たちが訪れます。白太夫は、まだ現れない三つ子のために、庭の木を息子たちに見立てて陰膳を据えさせると、氏神詣でに出かけます。
白太夫の柔らかい人柄が描かれる温かな場面で、これからの悲劇を対照的に際立たせます。


『菅原伝授手習鑑』茶筅酒の段



白太夫と桜丸の妻・八重の外出と入れ違いに、松王丸と梅王丸がやってきます。吉田神社での遺恨もあり、二人は掴み合いの喧嘩になります。庭の桜の木にぶつかって折ってしまったところへ、白太夫が帰ってきます。
二人の喧嘩によって折れた桜の枝が、この後の悲劇を想像させます。


『菅原伝授手習鑑』喧嘩の段



梅王丸は筑紫にいる丞相のもとへ行くことを願い出ますが、白太夫は御台所と菅秀才の安全が先だと叱り、自分が筑紫に行くと言います。また、松王丸は勘当を願い出ます。すぐに聞き入れられますが、白太夫は時平への忠義を尽くす姿勢を非難し、二組の夫婦を追い出しました。


『菅原伝授手習鑑』訴訟の段



隠れていた桜丸が姿を見せ、八重に丞相流罪の原因を作った責任から切腹をすると告げます。八重は泣いて引き止めますが、白太夫は既に切腹の覚悟を聞いており、運命だと受け止めていました。白太夫は鉦を打つことで桜丸の切腹を、介錯します。悲劇的な最期を遂げる桜丸と、それを見送る人々の嘆きが涙を誘います。


『菅原伝授手習鑑』桜丸切腹の段



筑紫の丞相のもとを訪れた白太夫は、不自由な暮らしを慰めています。そこへ梅王丸がやってきて、丞相殺害を目論む時平の家臣を取り押さえると、丞相へ妻子の無事を伝えました。時平の家臣から時平の謀反を知ると、丞相形相は一変。雷神となり、帝を守護するために都へと向かって飛んでいきます。
特殊なかしら「丞相」によって、憔悴した姿から怒りの形相へと一瞬で変化します。火を吹くなど迫力満点の演出も見どころです。


『菅原伝授手習鑑』天拝山の段


◆◆◆



【第二部】
『寿式三番叟』
(ことぶきしきさんばそう)
能楽でも特別な演目とされる『翁』を人形浄瑠璃に移した作品です。松の絵を背景に、千歳の颯爽な舞、祈りを込めた翁の荘重な舞、そして三味線の華やかな演奏で二人の三番叟が躍動的に舞います。長きにわたり支えていただいた皆様への感謝と、劇場の豊かな前途を祈念しての上演です。


『寿式三番叟』



『菅原伝授手習鑑』
(すがわらでんじゅてならいかがみ)四段目「寺入りの段」~五段目
第一部に続き、三つ子の次男・松王丸を中心とした名場面「寺子屋」や、物語の結末となる「大内転変」をお届けし、5月から続く通し上演も大団円を迎えます。

菅丞相の御台所は、梅王丸の妻・春と八重とともに、北嵯峨へ隠れ住んでいます。そこへ時平の家来が襲来し、御台を守ろうとした八重が命を落とします。危うい状況の御台を連れ去ったのは、謎の山伏でした。
後の「寺子屋」に続く場面で、昭和47年以来51年ぶりの上演です。


『菅原伝授手習鑑』北嵯峨の段



武部源蔵と戸浪の夫婦は寺子屋を営み、丞相の子・菅秀才を匿っています。その寺子屋へ母親と息子・小太郎がやってきます。母親は小太郎を預けると、また戻ると言って去っていきます。


『菅原伝授手習鑑』寺入りの段



源蔵が思いつめた様子で帰ってきました。菅秀才を匿っていることが時平方に伝わってしまい、首を差し出せと厳命されたというのです。そこで源蔵は小太郎を身代わりとすることに決めます。そこへ松王丸と春藤玄蕃がやってきます。検分役は菅秀才をよく知る松王丸。源蔵が一か八かと小太郎の首を差し出すと、松王丸は「相違なし」と結果を述べます。
源蔵夫婦の苦悩が描かれ、首実検の張りつめた緊張感に思わず手に汗握る場面です。


『菅原伝授手習鑑』寺子屋の段



源蔵夫婦が安堵したのも束の間、小太郎の母が戻ってきました。源蔵が斬りつけると母親は「お役に立ててくださったか」と叫びます。この母親は松王丸の妻・千代で、小太郎は松王丸の息子だったのです。松王丸は矛盾する自身の立場から、わが子を身代わりとする道を選んだのでした。一同は小太郎の菩提を弔います。
千代のクドキや小太郎を称える松王丸の泣き笑い、そしてクライマックスの「いろは送り」と、見どころ聴きどころに溢れた文楽屈指の名場面です。


『菅原伝授手習鑑』寺子屋の段



都では天変地異が続き、宮中では祈祷が行われていました。そこへ斎世親王が苅屋姫と菅秀才を連れて参内します。時平は激怒し彼らを討たせようとしますが、雷鳴が鳴り響き桜丸と八重の亡霊が現れ、時平を成敗するのでした。長年の遺恨が晴れ、菅秀才が菅原家を相続することが認められ、菅丞相には正一位追贈、そして天満大自在天神の称号が与えられるのでした。
この場面も昭和47年以来の上演です。菅原家の復興が描かれ、大団円となります。


『菅原伝授手習鑑』大内天変の段


◆◆◆



【第三部】
『曾根崎心中』
(そねざきしんじゅう)
近松門左衛門の作品で初演で大ヒットしますが、すぐに上演が途絶えてしまいます。文楽では戦後、野澤松之輔の脚色・作曲によって昭和30年に復活上演されました。これ以来、文楽を代表する人気作として数多く上演されています。初代国立劇場文楽公演の締めくくりにふさわしい作品と言えるでしょう。
醤油屋平野屋の手代徳兵衛は生玉神社で恋人のお初と出会います。徳兵衛は伯父である主人から娘との縁談を持ち掛けられていますが、お初のために縁談を断り、継母が勝手に受け取っていた結納金を伯父へ返そうとしていました。しかし、そのお金を信頼してた友人の九平次にだまし取られてしまうのです。お初もいる中、大勢の前で辱められます。


『曾根崎心中』生玉社前の段



その日の夜、曽根崎新地の天満屋に徳兵衛がやってきて、信用を無くしてしまった自分はもう生きていられないといいます。お初は打掛の裾に徳兵衛を隠して縁先に座り、足元に徳兵衛を忍ばせます。すると九平次がやってきて、お初に徳兵衛の悪口を言います。お初は悔しさに震える徳兵衛を制し、独り言に見せかけて心中する覚悟を問うと、徳兵衛はお初の足を喉元に当てて、覚悟を示します。
通常女方の人形には足がありませんが、初演時に徳兵衛を遣った初代吉田玉男のこだわりで、お初が足をつけて演じられ、それ以来この場面のお初は足を用います。二人は言葉を交わしませんが、足を通じて添い遂げる覚悟を確かめ合うのでした。


『曾根崎心中』天満屋の段



夜明けが近づくころ、二人は天神の森にたどり着きます。徳兵衛は愛おしさに思わずためらいますが、帯で互いの体を結び付け、お初と自らの命を絶つのでした。
「この世の名残、夜も名残……」の名調子にのせて、二人の最期が美しく描かれます。


『曾根崎心中』天神森の段


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8・9月文楽公演は24日(日)まで!


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