歌舞伎公演ニュース

2023年10月6日


<初代国立劇場
さよなら特別公演>

【10月歌舞伎公演】

『妹背山婦女庭訓』<第二部>

好評上演中 


10月26日(木)まで!

(舞台写真あり)

 ついに初代国立劇場では見納めとなる歌舞伎公演の幕が開きました。
 10月は、2か月連続通し上演の『妹背山婦女庭訓』が完結し、入鹿誅伐に至るまでの物語を上演します。

 初代国立劇場で思い出に残る名舞台をつくってきた、歌六、時蔵、芝翫、菊之助ら、豪華な出演者が気迫溢れる芝居を繰り広げます。

 舞台写真とともに、見どころをご紹介します。

◆◆◆


序幕「布留の社頭の場」
<道行恋苧環>竹本連中
[右]杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)、
[中央]烏帽子折求女(中村梅枝)
[左]入鹿妹橘姫(中村米吉)

 舞台は、布留の社頭(石上神宮の社殿近く)。烏帽子折の求女(中村梅枝)が橘姫(中村米吉)を追ってきます。求女は、三輪の里に住むうちに、杉酒屋の娘・お三輪(尾上菊之助)と恋仲になります。七夕祭の宵、求女のもとへやってきた橘姫とお三輪が出くわし、求女をめぐって言い争いになります。そして、求女は立ち去った橘姫を追い、また求女を追ってお三輪も布留の森へとやってきたのです。
 求女は、姫に追い付き、深夜に訪れる橘姫を不審に思い、素性を尋ねます。その時、追いついたお三輪が二人の間に割って入ります。


序幕「布留の社頭の場」
<道行恋苧環>竹本連中
[中央]杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)
[右]烏帽子折求女(中村梅枝)、
[左]入鹿妹橘姫(中村米吉)

 お三輪は、橘姫に対して、人の恋人に断りなしで惚れるとはどんな女庭訓(※)にも書いていないと責め立て、女同士の争いとなります。
(※)女庭訓【おんな-ていきん】…江戸時代、女性の手本となる教訓などを記した書物。


序幕「布留の社頭の場」
<道行恋苧環>竹本連中
[左]杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)
[中央]烏帽子折求女(中村梅枝)、
[右]入鹿妹橘姫(中村米吉)

 二人の気持ちは強く、戸惑う求女の手を双方から引き合います。暁を告げる鐘の音を聞き、帰りを急ぐ姫の振袖に求女は苧環の赤糸を結びつけ、お三輪も求女の裾に苧環の白糸をつけ追っていきますが、お三輪が求女の裾につけた白糸は切れてしまいます…。


序幕「布留の社頭の場」
<道行恋苧環>竹本連中
杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)

 華やかな道行とは裏腹に、入鹿打倒を目指す求女の思惑や嫉妬に燃えるお三輪など、その後の物語の萌芽が感じられます。


二幕目「三笠山御殿の場」
[奥]蘇我入鹿(中村歌六)、
[手前]漁師鱶七(中村芝翫)

 三笠山にある蘇我入鹿(中村歌六)の御殿に、藤原鎌足からの書状を携えた漁師の鱶七(中村芝翫)が乗り込んできます。入鹿は鎌足の心中を探ろうと脅しますが、鱶七は動じず、不敵な様子で人質になります。


二幕目「三笠山御殿の場」
漁師鱶七(中村芝翫)

 豪胆な鱶七は、入鹿の手の者に命を狙われても、ものともせずに寝そべります。さらに官女たちが毒酒を呑ませようとしますが、これも失敗。歌舞伎ならではの面白い演出や、工夫された仕掛けも楽しみです。


二幕目「三笠山御殿の場」
[中央]漁師鱶七(中村芝翫)
[右]宮越玄蕃(坂東彦三郎)、
[左]荒巻弥藤次(中村萬太郎)

 隙のない鱶七に手を焼く家臣たちは、鱶七をとり囲み奥へ引き立てていきます。


二幕目「三笠山御殿の場」
入鹿妹橘姫(中村米吉)、
烏帽子折求女実ハ藤原淡海(中村梅枝)

 三笠山御殿に橘姫が帰館します。橘姫は、実は蘇我入鹿の妹だったのです。また、橘姫に結びつけた糸をたぐって求女もやってきます。橘姫は、求女の正体が入鹿誅伐を胸に秘める藤原鎌足の息子・淡海と見破ります。そして、二人は、夫婦になるために協力を誓い、求女は橘姫に入鹿が盗んだ十握の宝剣を奪いとるように迫ります。橘姫は、兄の入鹿を裏切ることに苦悩しますが、愛する人、さらには天子様のためと引き受けるのです。


二幕目「三笠山御殿の場」
豆腐買おむら(中村時蔵)、
杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)

 苧環の糸が切れ、求女の姿を見失ったお三輪が御殿に迷い込んできます。豆腐買のおむら(中村時蔵)から、求女が橘姫と祝言することを聞き、お三輪は、思わず奥へ駆け込もうとしますが、官女たちに見つかってしまいます。


二幕目「三笠山御殿の場」
杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)

 官女たちはお三輪が淡海を追ってきたと勘づいて、お三輪をいたぶりはじめます。


二幕目「三笠山御殿の場」
杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)

 行儀作法についてさんざんなぶられたお三輪は、官女たちに謡をうたえと無理強いされます。山家育ちで謡など知らぬお三輪は、代わりに馬子唄をうたうよう迫られます。


二幕目「三笠山御殿の場」
漁師鱶七実ハ金輪五郎今国(中村芝翫)、
杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)

 求女に会わせてもらえると信じ、官女たちの責めに耐え続けたお三輪でしたが、官女たちはそんな約束はしていないとかえってお三輪を突き飛ばして去っていきました。
 こらえにこらえてきたお三輪は、胸をなだめ帰ろうとした瞬間、求女と橘姫の婚礼を祝う声を聞いて逆上します。「このままでは帰れぬ」と、御殿の奥に踏み込もうとしたところへ、鱶七が現れ、お三輪の腹を刀で差します。


二幕目「三笠山御殿の場」
漁師鱶七実ハ金輪五郎今国(中村芝翫)

 鱶七の正体は、鎌足の臣・金輪五郎今国でした。嫉妬に狂った女の生血と爪黒の鹿の血を注いだ笛の音を聞くと、入鹿が正体をなくすことを知った鎌足たちにとって、入鹿を倒すために、嫉妬に狂うお三輪の血が必要だったのです。


二幕目「三笠山御殿の場」
杉酒屋娘お三輪(尾上菊之助)

 鱶七は、嫉妬に燃えたお三輪の血が、入鹿打倒を目論む淡海の役に立つのだとお三輪に伝えます。お三輪は、自分の命が恋い慕う人の役に立つことを喜びつつ苧環を抱いたまま死んでいきます。


大詰「三笠山奥殿の場」
[右]蘇我入鹿(中村歌六)
[左]藤原淡海(中村梅枝)
[中央]入鹿妹橘姫(中村米吉)

 奥殿で、賑やかな酒宴が行われている最中、淡海が入鹿に向けて矢を放ちます。この騒ぎの隙に、橘姫は十握の宝剣を奪い取りますが、入鹿に押さえこまれます。とっさに橘姫は剣を庭に投げ、淡海が受け取りますが、奪った剣は偽物で、本物は自分が帯びる剣だと入鹿は言い放ちます。


大詰「三笠山奥殿の場」
[右より]蘇我入鹿(中村歌六)、
入鹿妹橘姫(中村米吉)

 橘姫はその剣を奪おうとし、入鹿によってこれで斬られてしまいます。
 その時、どこからか笛の音が聞こえて、入鹿は正体を失います。十握の宝剣は入鹿の手を離れ、龍となって庭の池に入っていきます。橘姫は剣を追って池に飛び込みます。


大詰「同 入鹿誅伐の場」
[左より]金輪五郎今国(中村芝翫)、
藤原淡海(中村梅枝)、
蘇我入鹿(中村歌六)、
藤原鎌足(中村時蔵)、
采女の局(尾上菊之助)、
大判事清澄(河原崎権十郎)

 奥庭は鎌足の軍勢によって取り囲まれ、藤原鎌足(中村時蔵)たちが姿を現します。追い詰められた入鹿は、必死に戦いますが……。

 果たして鎌足の軍は、入鹿を討つことができるのか!
 劇的に展開する物語の全容は、ぜひ劇場でお楽しみください。

◆◆◆

 掉尾の公演にふさわしい名作で、57年にわたる初代国立劇場のフィナーレを飾ります。
開場以来、国立劇場が育んできた通し上演の魅力をご堪能ください。
 皆様のご来場をお待ちしております。

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