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【開場35周年記念】野村萬氏特別インタビュー

 開場35周年を記念して、国立能楽堂に開場当時からご出演いただいている和泉流狂言方の野村萬氏にお話を伺いました。


野村萬 氏

 父(6世野村万蔵)は国立能楽堂開場の5年ほど前に亡くなりましたが、今は池袋の東京芸術劇場が建っている場所に公共の能楽堂を誘致しようとするなど、新しい能楽堂に対する想いは深かったのです。ですから、国立能楽堂の舞台に立てなかったのは本当に悔しかったでしょうね。出来ればこの舞台に立たせてあげたかった。開場当時のこと、と言われた時にはまずそのことが思い浮かびました。

 9月21日(金)の開場記念公演で「見物左衛門 深草祭」に出演します。一人で演ずる狂言はこの曲だけでしょうか。父にこの作品を教わった時に、「この曲は和泉流の番外曲で、私も自分が作りあげたような曲だから、お前も自分の心でつくればよい」と言われたのを覚えております。そんなことを言われたのはこの作品くらいですから強く印象に残っています。「見物左衛門」には今回演じる「深草祭」と「花見」の二つありますが、一方は写実、もう一方は様式と、全く違います。役者の方向性としても「深草祭」向きと「花見」向きがあるのではないでしょうか。例えば、能の方でも「姨捨」に帰着していく道と「檜垣」に帰着していく道が違うように、その人にふさわしい演目というのはやはりあるんだと感じています。近頃は老女物もよく演じられるようになりましたが、昔は老女物が出ることは滅多になく、三番目物では「定家」がとりわけ大切に扱われて、たまに出るくらいでした。ですから「定家」の間狂言といえば先代山本東次郎さんか父が演じていた印象があります。9月15日の開場記念公演では「定家」のアイを勤めますが、父のアイを思い出しますね。

 35年前の開場記念公演は、喜多実先生の「翁 白式 松竹風流」で幕を開けました。私も開場一周年記念公演で「翁 父之尉風流」に出ましたが、「翁」はともかく「風流」は見る方も演じる方も晴れがましさを感じるような特別な時に行われるものです。国立能楽堂では大きな節目に「風流」を出していますが、それまで台本上でしか見たことのなかった様々な「風流」を舞台の上で見られるようになったのは、やはり国立能楽堂のおかげですね。

 開場した時にはまだ明治・大正生まれの大事な先輩方がいらっしゃいましたが、35年の時の流れの中で、一緒に舞台に立たせて戴いた先輩方が旅立たれて、いつの間にか一番の年長になってしまいました。仕方がないことではありますが、やはり寂しいことです。再来年には東京でオリンピックもありますが、時代の流れは本当に早く、舞台での表現やお客様の嗜好もどんどん変わっていきます。昔は一世紀が一区切りなどと言いましたが、今では30年くらいのサイクルになっているんじゃないでしょうか。こんな時代の中でいかに芸を伝承していくかが難しいところですが、時代のサイクルと伝承のサイクルをうまく結び付けられないかと考えています。これは私の考えですが、いわゆる「老・壮・青」で一番大事なのは、「壮」なんですね。壮年時代は公私ともにいろいろと大変な時期ですけれど、ここで頑張ることが本人の将来に実を結んでいくのです。公演を企画する方も公演をご覧になる方もこのことをご理解いただいて、「壮」を暖かく見守って欲しいですね。伝統芸能はやはり鑑賞してくださるお客様に育てられ、支えられるものです。舞台をしっかりとご覧くださるお客様の存在は本当にありがたいことです。そして国立能楽堂にも今後さらに芸能全体を洞察する目を持っていただき、お客様と一緒に能・狂言をはじめとする伝統芸能を盛り上げていって欲しいと強く思います。

 

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