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第17回青翔会 出演者インタビュー (シテ方金春流 柏崎真由子さん)

青翔会は、国立能楽堂研修生をはじめとする、若手能楽師の日ごろの研鑽の成果を発表する公演です。第17回青翔会が来たる10月16日(火)に開催されます。
今回は、能「花月」のシテを勤めるシテ方金春流の柏崎真由子さんに、公演にかける意気込みをうかがいました。

―シテ方を志したきっかけは何ですか?

私は北海道函館市の出身で、進学で上京するまで能楽には全く所縁がありませんでした。東京の美術大学で絵画を専攻していたのですが、講義内に「身体表現」という科目が組み込まれていました。実は身体を動かす事が苦手で、それまで出来るだけ運動を避けて通ってきました。しかし、この体験が能に熱中するきっかけとなりました。おかしな話ですが、私は身体を動かすことによって自分に身体が存在していることを知りました。それは、自分の存在を確かめるような作業でした。それ程、私の内部と身体を繋ぐ経路に支障があったのだと思います。この頃から身体に対する興味が急激に高まり、様々な舞台を観るようになりました。ある時、「薪能」のポスターが目にとまり、「能」を観てみようと思い立ちました。私の人生において「能」との運命的な出会いでした。
「薪能」の会場はまさに大都会の中心で、防御壁のような高いビルにひっそりと守られた森の中、『翁』が上演されました。上空にはヘリコプターが飛んでおり、私の目の前に広がっている舞台が今と昔という時を繋げる接着剤のように感じました。

―そこから能の稽古を始められたのですか?

それからというもの毎週のように能楽堂へ通い詰めました。ただ観るだけでは物足りなくなり、お稽古をする事でより能を理解出来るのではないかと思いはじめました。
ある時、「円満井会定例能」(金春流の中堅能楽師を主軸とした定期演能会)を拝見させて頂く機会に恵まれ、観能後、円満井会のHPを閲覧すると「能(謡や仕舞)を習ってみたい方へ」という文字が目に飛び込みました。
これがきっかけとなり、最初の師である高橋万紗先生に入門させて頂く事となりました。女性能楽師の道を切り開いてこられた先生のお人柄に触れ、稽古に通う内、能の世界をもっと知りたいという思いが日に日に募っていきました。

―で、プロになろうと思われたのですね。

差し出がましくも、正式に入門させて頂きたい旨を高橋万紗先生にご相談申し上げました。先生は、首を縦に振ることはありませんでした。保証のない厳しい世界、ご自分が歩まれた茨の道を思っての事と思います。しかし、どうしても諦められず数度目のお願いでやっとご承諾くださり、現在に至ります。

―10月青翔会では能「花月」のシテでご出演されますが、「花月」という演目について、どのような作品なのでしょうか。

曲全体の雰囲気は明るく、可愛らしい作品です。能を初めてご覧になる方でも、鑑賞しやすい演目だと思います。しかし、根底には少年がさらわれ、過酷な状況に置かれてしまうという中世の暗い部分も描かれている作品だという事も忘れずに頭の片隅に置いておきたいと思います。
演じる上で、「羯鼓」は手と足の動きをバラバラに動かしながらも、快活に楽しげに舞う事が要求されます。小道具の扱いや間狂言とのやり取りも多いので、その点も注意が必要です。また、花月が様々な芸を披露する場に伴って、地謡も変化に富み、小作品ながらも大変謡いがいのある曲だと思います。
以前、「花月」を舞わせて頂いた経験はありますが、その時は型を追うことで精一杯でした。今回は少し背伸びをし、花月という曲の持つ軽やかさを少しでも表現出来るよう稽古を重ねて参ります。花月が可憐であればあるほど、作品のテーマがよりはっきりと見えてくるのではないだろうかと考えております。

―最後に今後の抱負など教えて下さい。

抱負は3つあります。
まずは頂いたお役を大切に、一つ一つ真摯に向き合うこと。
2つ目は、平成28年に宗家のお許しを得、立ち上げさせて頂いた「み絲之會」を後に続く人たちに繋げていけるよう育てていくこと。この会は、金春流女性能楽師の研鑽の場として、同輩である村岡聖美、林美佐と共に立ち上げ、今年で3年目を迎えます。9月21日(金)にセルリアン能楽堂公演を控えております。
最後は、私の故郷である北海道をはじめ、普段能に触れることの出来ない地域に能の面白さを伝える活動を展開して行きたいということです。それが能に魅了された私の使命だと思っております。

<プロフィール>
柏崎真由子(かしわざき まゆこ)
シテ方金春流、1980年生、80世宗家金春安明及び高橋万紗に師事。
リンク:み絲之會(外部サイト)

能「花月」

幼い我が子と生き別れて出家した男は、訪れた清水寺の門前で、舞いに興じる少年、花月と出会います。花月が、清水寺草創の縁起を舞う「曲舞(くせまい)」を舞ううち、男は、花月が成長した我が子だと気づきます。
花月は、父との再会を喜び「羯鼓(かっこ)」を舞い、また、幼いころ天狗にさらわれ、諸国を巡った様子を山尽くしの謡で語ります。
中世の芸能をちりばめた、芸尽くしの一曲です。

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