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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂5月主催公演がまもなく発売です!

 まもなく発売となる国立能楽堂5月主催公演のラインナップをご紹介いたします。27日は海外からのお客様にもお楽しみいただけるよう、Discover NOH & KYOGENと題して6ヵ国語の字幕付きでの上演です。また30日は 国立能楽堂開場40周年記念 の特別企画公演で、名人の至芸をご堪能いただきます。

佐渡狐

 年貢を納めに都へ向かう途中、道連れになった越後と佐渡のお百姓。「佐渡に狐はいるか、いないか」で賭けとなったふたりは、奏者(そうしゃ・年貢の取次役人)に判定を頼みます。実は、狐を見たこともない佐渡のお百姓は、奏者に賄賂を渡して有利に立ちますが、越後のお百姓から狐の特徴を問われ…。

賀茂

 京都・賀茂社(上賀茂神社と下鴨神社、二社一体の社)の参詣に訪れた播磨国・室明神(むろのみょうじん)の神職は、下鴨神社の糺(ただす)の森を流れる御手洗(みたらし)川のほとりに祀られた白羽の矢に目を留めます。水汲みにやってきた女に矢の謂われを尋ねると、実はこの矢こそ上賀茂の祭神・別雷神(わけいかずちのしん)のご神体なのだと言います。さらに女は、昔、川上から流れてきたこの矢を拾った秦氏女(はだのうじにょ)が別雷神の子を宿して生み、その後、下鴨の祭神・御祖神(みおやのしん)となったという社の由緒を語り、やがて自らが神の化身であることを明かして姿を消してしまいました。
 夜になって、御祖神が姿を現し御代を寿ぐ舞を舞うと、続いて大地が鳴動して別雷神が来臨します。別雷神は、轟く雷となって恵みの雨を降らせ、豊穣を約束するのでした。
 「御田(おんだ)」の小書により替間(かえあい・特殊な演出の間(あい)狂言)となり、神主と早乙女の掛け合いで田植歌が謡われる、華やかな演出です。

貰聟

 酔った勢いの夫から「暇をやる」(離婚する)と言われた妻は、残していく子どものことを気にかけながら実家に帰ります。話を聞いた舅は説得を試みますが、もう家にはもどらないという我が子(妻)の決心はゆるぎません。ならば、もし夫が迎えにきても「ここにはいない」と断るから絶対に表に出てきてならない、と言い渡します。一方、酔いが醒めた夫は、ばつの悪さを感じつつ妻を迎えに舅の家へとやってきますが…。

班女

 美濃国・野上(のがみ)の宿(しゅく)の遊女・花子(はなご)は、東国へ向かう吉田少将と恋仲になり、再会の約束に互いの扇を取り交わします。その日以来、花子は、扇を眺めてばかりで仕事に身が入りません。やがて秋になり、吉田少将は再び野上に立ち寄りますが、すでに花子は宿を追い出されて行方知れずになっていました。
 都にもどった吉田少将が糺の森(下鴨神社)に参詣すると、そこに偶然、恋慕を募らせて物狂いとなった花子がやってきます。あまりに変わりはてた風貌に吉田少将はそれが花子と気づきません。けれど、かつて取り交わした扇がきっかけとなり、ふたりはめでたく再会を果たすのでした。

杭か人か

 自分の留守をいいことに、使用人の太郎冠者が留守番もせず勝手に出歩いていると耳にした主人。真相を確かめようと、太郎冠者に留守番を命じ、出掛けるふりをして物陰から様子を見ることにします。ボヤきながらも今日は大人しく留守番をしていた太郎冠者ですが、気晴らしに棒を手にして邸の外の夜回りをはじめます。そして暗闇で人影が動くのを見かけ、おそるおそる「杭か人か」と問いかけると…。

東岸居士

 都の名所見物で清水寺へと向かう途中の東国の男。これから喝食(かっしき・在家修業する有髪の青年)の東岸居士が勧進説法をして面白い舞を舞って見せるというので、見物をすることにします。現れた東岸居士は、説教や勧進、自らの素性について男から問われるままに答えます。さらに、男の求めに応じてさまざまな舞を披露して、ともに悟りの道に入ろうと人々を誘うのでした。

27日(土) 外国人のための能楽鑑賞教室 Discover NOH & KYOGEN 午後1時開演

 狂言方大蔵流茂山千之丞による英語の解説と、6ヵ国語の字幕(日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語)付きでの上演です。

二人袴

 今日は日柄が良いので、息子に“聟入り”(結婚後に婿が初めて妻の実家を訪ねて挨拶をする儀式)を勧める父親。けれど恥ずかしがり屋で甘えん坊の息子は、聟入りに行く条件に父親におねだりをした上、舅の家まで同行するようせがみます。舅の家に入った息子を見届けて、父親は門前で様子を見守ります。その姿を目撃した使用人の太郎冠者から報告を受けて、舅が父親にも家に入るようすすめたから、さあ大変。正装で対面ための袴は息子がつけている一枚しかありません。親子はどう切り抜けるのでしょうか。

邯鄲

 中国・邯鄲の里で女主人が営む宿には、行く末を悟ることができる不思議な枕がありました。その宿に、進むべき道の教えを乞うため尊い僧のもとへと旅する青年・盧生(ろせい)がやってきます。宿の女主人は、件の枕を盧生に勧めると、粟粥を炊く支度にかかります。眠りについた盧生は、夢のなかで皇帝として迎えられ、華やかな王宮での日々を送ります。50年という月日がたちまちに過ぎて、栄華もいよいよ絶頂に――。その瞬間、宿の女主人に起こされて、盧生の夢は破れます。見渡すとそこはもとの宿屋で、栄耀の50年も、粟の飯が炊けるまでのつかのまの夢でした。人生とこの世の真理を悟った盧生は、母が待つ故郷へと帰っていくのでした。

30日(火) 国立能楽堂開場40周年記念 特別企画公演 午後1時開演

 今年40周年を迎える国立能楽堂では、9月に開場40周年記念のプログラムを上演します。今回の公演は、そのプロローグとなる特別企画公演です。

源氏供養

 近江国・石山寺の観世音を信仰する安居院法印(あぐいのほういん)が、石山寺参詣へと向かう途次、琵琶湖の岸でひとりの女から呼び留められました。女は『源氏物語』の作者・紫式部の霊と名乗り、源氏の供養を怠った科(とが)で成仏できずにいると明かし、この苦しみから救ってほしいと頼んで消えます。
 石山寺に着いた法印は、頼みに応えて弔いをはじめます。すると紫式部の霊が在りし日の姿で現れ、法印の弔いに感謝して、『源氏物語』の巻の名を連ねながら優美な舞を舞い、やがて空に消え失せてしまいました。実は、紫式部こそ、石山寺の観音菩薩の化身だったのです。

舟船

 西宮に遊山に出かけた主人と太郎冠者。渡し場で船を呼ぼうとして、「ふね」か「ふな」かで論争に。どちらも古歌を引き合いに出し自らの正しさを主張するのですが…。

檀風

 鎌倉幕府打倒計画が露呈し、佐渡に配流となった公家・日野資朝(ひのすけとも)。資朝の子・梅若は、帥(そつ)の阿闍梨(あじゃり)とともにはるばる海を越え佐渡に渡り、父との対面を願い出ます。折しも鎌倉から処刑の命令が下された資朝は、梅若にも類が及ぶことを恐れ、「自分に子はいない」と対面を拒みます。資朝の身を預かる本間三郎は、梅若を無事に帰すことを資朝に約束し、資朝の処刑を断行するのでした。父の敵と本間を恨んだ梅若は、阿闍梨の助力を得て本間を討ち果たします。追手が迫るなか、阿闍梨の祈祷により出現した熊野権現が風向きを変えて、二人を乗せた舟を無事、若狭の浦へと送り届けたのでした。
 通常は、主人公であるシテの相手役として物語の展開を見守る役割を担うワキですが、本作はワキの阿闍梨の活躍が光る作品です。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

 
●5月主催公演発売日
  • ・電話インターネット予約:4月10日(月)午前10時~
  • ・窓口販売:4月11日(火)午前10時~
  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/