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【9月文楽】解説!! 『仮名手本忠臣蔵』からたどる『増補忠臣蔵』の魅力【前編】


 9月文楽公演の第一部『増補忠臣蔵』。“忠臣蔵”という言葉にはなじみのある方も多いと思いますが、そもそも「増補」とは一体どのような意味でしょうか。今回は文楽・歌舞伎の三大名作の一つ『仮名手本忠臣蔵』のストーリーをたどりながら、『増補忠臣蔵』の魅力をご紹介します。


「増補」とは? 『仮名手本忠臣蔵』との関係
 「増補」とは、内容を増やし補うことですが、補筆された部分が単独で上演され、一つの作品となることもありました。このような作品を“増補物”と呼びます。『増補忠臣蔵』もその一つで、基となった作品が『仮名手本忠臣蔵』です。
 『仮名手本忠臣蔵』の本筋にあたる大星由良助(おおぼしゆらのすけ[史実では大石内蔵助])ら浪士が主君の無念を晴らすまでの艱難辛苦の物語、その陰にあったエピソードとして補筆され、桃井家当主・桃井若狭之助(もものいわかさのすけ[『仮名手本忠臣蔵』では“桃井若狭助”])とその家老・加古川本蔵(かこがわほんぞう)にスポットライトが当てられています。つまり現代の小説や映画、ドラマでも見られる、いわゆるスピンオフ作品と同じことなのです。

桃井若狭之助 加古川本蔵


 さて、『増補忠臣蔵』の主要キャストである桃井若狭之助と加古川本蔵は、『仮名手本忠臣蔵』でも重要な役割を果たしています。
 ではこの二人が『仮名手本忠臣蔵』にどのように登場するか、ストーリーに沿ってご紹介します。


◆◆◆



『仮名手本忠臣蔵』では、大序・二段目・三段目・九段目に登場
 大序「鶴が岡兜改めの段」において、高師直(こうのもろのう[史実では吉良義央])に悪し様に罵倒され、遺恨を抱いた桃井若狭之助。二段目「桃井館本蔵松切の段」で若狭之助は、家臣・加古川本蔵に対し、自らの恥辱を晴らし、また天下国家のため、家の断絶を覚悟で師直を切り捨てるつもりだと打ち明けます。本蔵はそんな主人をなだめるどころか、「この通りにさっぱりと」と松の枝を切り落とし、若狭之助を激励します。しかし、本蔵は続く三段目「下馬先進物の段」で予想外の行動に出るのです。それは、高師直に多額の賄賂を渡すというものでした。

 そして「殿中刃傷の段」。師直を斬ろうと息巻いた若狭之助でしたが、本蔵からの多額の賄賂を受けた師直が頭を下げて詫びるため、若狭之助は刀を抜くことができません。若狭之助は師直の行動が本蔵の渡した賄賂によることとも知らず、怒りのやり場を失い当惑して場を去ります。その陰には家の断絶を免れたことを安堵する本蔵の姿がありました。本蔵は、元来短気な性格である主君を諫めても聞き入れられないことを悟っていたため、策を弄して、あえて主君を留めることをせず、その裏で師直の機嫌をとることでその難を逃れようとしたのでした。

 しかし、師直の矛先はその後、塩谷判官(えんやはんがん[史実では浅野内匠頭])へと向けられます。もともと判官の妻・顔世御前(かおよごぜん)に横恋慕していた師直は、自らの邪恋が思いのままにいかない怒りに、目下の若狭之助へ詫びた鬱憤も加わって、判官を激しく罵倒します。ついに堪忍袋の緒が切れた判官は、師直に斬りつけてしまいますが、なんと物陰に隠れていた本蔵が判官を抱き留めたため、師直を討ち漏らしてしまうのでした。


高師直 塩谷判官 顔世御前


文楽屈指の名場面・九段目「山科閑居の段」
 さて、本蔵の行動はさまざまな悲劇の原因となってしまいます。一つ目は本蔵が判官を抱き留めたために、判官は師直を討ち果たすことができなかったこと、二つ目は自らの娘・小浪と塩谷家の家老・大星由良助の息子・力弥(りきや)は許婚の間柄でしたが、塩谷家断絶によってうやむやとなってしまったことです。力弥を恋い焦がれる小浪(こなみ)は、母の戸無瀬(となせ)と共に、大星家が隠遁している京・山科へと旅立ちます。

小浪 戸無瀬


 大星家の閑居を訪ねた戸無瀬と小浪でしたが、金品で師直の機嫌をとった本蔵の行動が受け入れられず拒絶されます。それもそのはず、判官は師直に斬りつけたにもかかわらず、本蔵に抱き留められたために本意を遂げられず、塩谷家家臣にとって、主君の無念を思えば、本蔵は許せる相手ではありません。祝言がかなわないことに絶望した戸無瀬と小浪は自害しようとしますが、そこに虚無僧姿の本蔵が現れます。

虚無僧姿の本蔵 加古川本蔵

◆◆◆


 本蔵が意外な姿で現れたのはなぜか。「山科閑居の段」のクライマックスと、『増補忠臣蔵』とのつながりについては、後編に続きます!


《解説・後編はこちら》


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