歌舞伎公演ニュース
2025年8月8日
9月歌舞伎公演
《歌舞伎名作入門》
『仮名手本忠臣蔵』
中村梅玉、中村鴈治郎、
中村扇雀が
意気込みを語りました!
令和3年から始まり、5回目を迎える《歌舞伎名作入門》。
今回の演目は、義太夫狂言の三大名作『仮名手本忠臣蔵』から二段目「桃井館力弥使者の場」「桃井館松切りの場」と九段目「山科閑居の場」を上演します。
公演に先立ち、中村梅玉、中村鴈治郎、中村扇雀が公演への思いを語りました。


中村梅玉
(加古川本蔵)
久しぶりの国立劇場公演、そして新国立劇場に出演するのも初めてで、とても楽しみにしております。
今回は、『仮名手本忠臣蔵』の中では上演機会の少ない二段目と九段目を上演し、加古川本蔵を勤めさせていただきます。
『仮名手本忠臣蔵』に初めて出演したのは大星力弥でした。もう何十年も前の話になりますね。それから、度々力弥を勤め、その後二段目の若狭之助、そして九段目の由良之助も勤め、そしていよいよ今回本蔵という役に初めて挑戦させていただくことになりました。
「忠臣蔵」はほとんどのお役、直義、判官、若狭之助、平右衛門、勘平、定九郎も勤めたことがあり、主だった役で経験していないのは、この本蔵と、高師直だけでした。先輩方のいい本蔵を手本にしながら勤めたいと思っております。
「へつらい武士」ともいわれる本蔵は、主君の若狭之助が短慮な行動を起こさないように師直に金品を渡し、三段目では判官が師直に斬りつけようとするところを止めるというお役で、九段目をやらないと本蔵の性根というものはなかなか出てきません。
「忠臣蔵」という題名は大石内蔵助の「蔵」と忠臣とを合わせたものと言われますが、私は本蔵も忠臣だと思っています。若狭之助の行動が影響しないように色々と根回しをして、お家を守ります。判官を止めたのも、やはり忠臣としては判官を止めた方が、と考えたゆえの行動だと考えています。まさか、それで判官が切腹させられるとまでは思ってもいなかったでしょうし。結果的には、それが後の悲劇にも繋がりますが、本蔵のそういう忠臣である部分を大切に演じたいと思っております。

中村鴈治郎
(桃井若狭之助/大星由良之助)
今回は二段目の若狭之助と九段目の由良之助ということで、どちらも初役でございます。
二段目と九段目は、いわゆる赤穂浪士の討ち入りによって翻弄される加古川家の物語ですが、今回、二段目は「松切りの場」の前の「力弥使者の場」からの上演ですし、九段目も「雪転し(ゆきこかし)」から上演するので、由良之助が七段目の一力茶屋から山科閑居に帰ってくる様子と繋がり、本蔵の家と由良之助の家との関係が、とても分かりやすくお客様に伝わるのではないかと思っております。
九段目は、討ち入りへと繋がる大事な場面です。由良之助が討ち入りを決意し動き出す前段ですので大変意義がありますし、私自身も由良之助という役を勤める機会を頂き楽しみにしております。
若狭之助は二段目では完全に怒ったままですね。本蔵がいなければ、判官と同じ立場だったかもしれません。家も何もかも、全てを捨ててでもと思うほど怒っているのはなぜなのか、というものがお客様にも分かっていただけるように演じなければと思っております。
九段目には、「雪転し」があるので、山科閑居が由良之助の家であるということも分かりやすいですし、由良之助と力弥とが二人になった時に腹を割った男同士の様子もあり、それが討ち入りを目指しているという伏線になることを伝えられる場面です。本蔵、そして本蔵一家に感謝をしながら、最後には力弥にもしっかりと「心残りのないように」という言葉が言えるような由良之助でありたいなと思っております。

中村扇雀
(本蔵妻戸無瀬)
今年の3月に、大序から討ち入りまで『仮名手本忠臣蔵』を歌舞伎座で上演しましたが、二段目と八段目、九段目、十段目が抜けておりました。3月に観ていただいた方は、この9月公演で二段目、九段目を観ていただければ今年1年間で忠臣蔵をほぼ完結できます。そして、6月に私の出演した歌舞伎鑑賞教室『土屋主税』を観ていただいていれば、忠臣蔵の外伝もご覧いただけたことになりますね(笑)。
父(四代目坂田藤十郎)が上方に伝わっている七役早替りという、忠臣蔵の七役を一人で全て演じる公演をしており、私も何度か出演しました。いつかは私も上方の役者として、踏襲してやってみたいなという気持ちがあります。父が「本役で九段目の戸無瀬を一度経験していないと、この七役はできないよ」と言っていたので、今回は待ちに待った戸無瀬です。
九段目の戸無瀬は、母親としての娘に対する無償の愛、これがテーマだと思っております。そして、娘をなんとか嫁入りさせたい、しかし断られてしまい自害しようとする、非常にドラマ性の深いお役です。義太夫を通じて、お客様に親子の愛情、忠臣蔵の世界の葛藤を丁寧に伝えられたらなと思います。
父の戸無瀬もよく覚えております。一緒に出演していて一番感じたのは、小浪の涙を拭いてあげたり、打掛を慌てて間違えて着せるくだりの表情や感覚に、非常にリアリティがあったことですね。
私も斬られようとする場面で、自然に涙が出てきたことが何度かあります。それはそこに至るまでの母親としてのリアルな深い愛情が、小浪に伝わっていたのだと思います。父はどの役をやってもその人にしか見えない俳優でしたので、私もリアリティのある母親らしさを目指したいなと思っています。
まだ歌舞伎をご覧になったことのない方はぜひこの機会に歌舞伎を観て欲しいですね。また、実際に人間国宝である梅玉お兄さんの芸や、歌舞伎の長い歴史で磨かれてきた魅力を生の舞台で体感して欲しいです。
《歌舞伎名作入門》では、歌舞伎の名作をご案内付きでお楽しみいただけます。
義太夫狂言の三大名作である『仮名手本忠臣蔵』、仇討ちにまつわる人々が武士としての忠義と、家族の情愛との間で葛藤する味わい深い人間ドラマをご堪能ください。
人間国宝・中村梅玉の加古川本蔵をはじめ、中村鴈治郎の桃井若狭之助と大星由良之助、中村扇雀の本蔵妻戸無瀬、市川門之助の由良之助妻お石、中村虎之介の大星力弥、中村玉太郎の本蔵娘小浪など、主な出演者がすべて初役で挑む濃密な舞台にご期待ください。
皆様のご来場をお待ちしております。
\チケットは8月13日(水)から発売!/
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