歌舞伎公演ニュース

2023年2月10日

初代国立劇場さよなら公演

【3月歌舞伎公演】
『一條大蔵譚』『五條橋』

中村魁春、中村又五郎、
中村歌昇、中村種之助が
意気込みを語りました!

 〈初代国立劇場さよなら公演〉3月歌舞伎公演は、一昨年より始まった「歌舞伎名作入門」の第三回! 歌舞伎鑑賞教室では取り上げられない名作や名場面を深く味わっていただく公演です。
 今回は、《鬼一法眼三略巻》より『一條大蔵譚』の「曲舞(くせまい)」と「奥殿」、『五條橋』を上演いたします。平家が栄華を極める時代に、源氏再興を目指す人々の物語がドラマチックに展開する義太夫狂言の名作です。
 公演に先駆け、中村魁春、中村又五郎、中村歌昇、中村種之助が意気込みを語りました。



(左より)中村種之助、中村又五郎、
中村魁春、中村歌昇

◆◆◆



中村又五郎
(『一條大蔵譚』一條大蔵卿長成)

 一條大蔵卿長成を勤めさせていただきます。『一條大蔵譚』は、初代中村吉右衛門も、二代目中村吉右衛門のお兄さんもお好きな作品と伺っており、この度、勤めさせていただくことをとてもありがたく思っております。

 数十年前に歌舞伎座で「子供かぶき教室」(昭和62年1月)という公演がございまして、その月に上演しているお芝居を若手が朝早くに演じて学生の方々に見ていただくというものでしたが、私は当時、十七代目中村勘三郎のおじ様に教わってこの役を勤めた記憶がございます。

 それから度々、吉岡鬼次郎で出させていただくようになりました。本公演で一條大蔵卿長成を勤めるのは初めてなので、少しでも吉右衛門のお兄さんの大蔵卿に近付けるように努力精進をしなくてはならないと思っております。大蔵卿という役は、「奥殿」での“作り阿呆”と正気との代わり映えに面白みがあると言われますが、よく吉右衛門のお兄さんがおっしゃっていたのは、面白おかしく見せてはいけないということでした。位の高いお公家さんが作り阿呆をして生きていかなければいけない、という人間像をお見せするお芝居ですし、何より品を大事に演じるお役だと思っています。

 「曲舞」に関しては、初代吉右衛門や十七代目勘三郎のおじ様が勤めた頃の資料が全くと言ってよいほど残っておりませんが、お客様には作り阿呆というよりも、本当に浮世離れしてしまったお公家様かと思って見ていただきたいですし、この場面では性根を持った一條大蔵卿というのはあまり意識しないで勤めようと思っております。

◆◆◆



中村魁春
(『一條大蔵譚』常盤御前)

 常盤御前を勤めさせていただきます。又五郎さんご一家のお芝居ですので、私は脇で勤めさせていただきたいと思っています(笑)。

 『一條大蔵譚』では、最初の何年かは鬼次郎女房お京を勤めさせていただいて、最近は常盤御前を勤めさせていただくようになりました。初役で常盤御前を勤めた時(平成23年10月名古屋御園座)は播磨屋(二代目中村吉右衛門)のお兄さん、最近(平成31年1月・令和2年11月歌舞伎座)は松本白鸚のお兄さんの大蔵卿でも勤めております。

 初役の時は、父(六代目中村歌右衛門)も亡くなって10年経っておりましたし、七代目中村芝翫さんも亡くなられていて、教えていただくことはできませんでしたけれど、うちのお弟子の初代中村歌江さんが、よく父のお芝居を覚えていたので、細かいところは教わりました。とにかく、一所懸命勤めさせていただきます。

 常盤御前はあまり動きがないので、座って気持ちを出すこと、本当にわずかな動きですけれど、そういう動きが大切になります。若い方々に教える時も、座って動くと小さく見えてしまうので、なるべく大きく動くように、そして乱暴にならないように、何といっても常盤御前は格があるお役ですから、できるだけ自分の気持ちで格を出すようにということを申しております。

 国立劇場は50年以上、私にとって歌舞伎の修業をさせていただいた、本当に大事な劇場でございます。父が亡くなって葬儀の時には、国立劇場の舞台に父の写真と上がってお別れをさせていただいたことも思い出でございます。3月31日は父の命日ですが、偶然にも今回3月の公演で、父がよく勤めておりました常盤御前をこうして勤めさせていただくということは、父に「もっと頑張らなくちゃいけないよ」と言われているような気がいたします。

◆◆◆



中村歌昇
(『一條大蔵譚』吉岡鬼次郎/
『五條橋』武蔵坊弁慶)

 『一條大蔵譚』は、播磨屋にとりまして非常に大事な作品でございます。私も、国立劇場で行われた伝統歌舞伎保存会研修発表会(平成24年12月)や新春浅草歌舞伎(平成27年1月)で一條大蔵卿を勤めさせていただいておりますが、とても大好きな作品です。

 今回は吉岡鬼次郎を勤めます。我々兄弟の「双蝶会」という勉強会で、弟の種之助が大蔵卿を勤めた時、鬼次郎を演(や)らせていただいております。今回は、本公演では初めてということで、もう一度しっかり勉強して勤めたいと思っております。

 そして、『五條橋』の弁慶ですが、六代目尾上菊五郎の古い写真がありまして、それをモチーフに演らせていただきます。隈を取る弁慶ということで、今回のような形(なり)で演るからには、荒事の大仰な明るいところが出せればいいなと思っております。

 大蔵卿は、二代目中村吉右衛門のおじ様に、私も弟も教えていただきました。父も申していた通り、品を非常に大事にしなさいとおっしゃられていました。大蔵卿で一番難しいと感じたのは“公家言葉”で、浅草で一カ月演らせていただきましたけれど、最後の最後まですごく難しいと思いながら勤めていたことを覚えています。

◆◆◆



中村種之助
(『一條大蔵譚』鬼次郎女房お京/
『五條橋』牛若丸)

 〈初代国立劇場さよなら公演〉ということで、私は種之助を名乗る前、本名の時の初お目見得がこの国立劇場でした。それから子役でも出させていただき、大人になってからも本公演や研修発表会で様々なことを勉強させていただきました。

 伝統歌舞伎保存会研修発表会の『一條大蔵譚』(平成24年12月国立劇場)で、鬼次郎女房お京を演らせていただきましたが、今回は「曲舞」が付きます。「曲舞」の上演記録を見ると、曽祖父の三代目中村時蔵がお京を勤めていることもあって、縁というものを感じますし、家にとっても大事な作品になりますので、よく勉強して大切に勤めたいと思います。

 また、『五條橋』はこの公演の最後の演目に当たりますが、源氏再興の未来、これから活躍する義経像というものを皆様に思い浮かべていただけるよう、牛若丸を勤めたいと思っております。

 自分の勉強会の演目を選ぶに当たり、(二代目中村)吉右衛門のおじ様に相談した時、「やはり勉強するなら大蔵卿だよ」とおっしゃっていただいたことをよく覚えております。印象的だったのは、私が子役を離れて大人の役をいただき始めた頃、おじ様から「大蔵卿のセリフを言ってみろ」と抜き打ちテストのようなことがありまして、その後に「今の君はこうだよ」と、いけない点をご指導いただきました。その時、楽屋の外で聞いていらっしゃった十八代目中村勘三郎のお兄さんが「今度、大蔵卿、演るのかい」とおっしゃられて、「演らないですけど、教えていただいていただけです」と答えたら、「えーそうなんだ、うらやましいな」とおっしゃっていました。今思い出しても、私たちにとって大切な演目なんだなと感じます。

◆◆◆

 歌舞伎になじみの薄い方から、“本物”をたっぷり楽しみたい愛好者の方まで、名作の魅力を解説付きで心ゆくまで味わっていただける「歌舞伎名作入門」。

 大蔵卿を当たり役とした二代目中村吉右衛門の薫陶を受けた又五郎が、吉右衛門が望んでいたという「曲舞」の上演とともに、大蔵卿に初役で挑みます。そして常盤御前は、この役を度々演じ、洗い上げてきた魁春が勤め、定評ある演技が舞台に一層の品格を加えます。常盤御前の真意を探る、忠義一途の臣・吉岡鬼次郎を又五郎の長男・歌昇が、その妻お京を次男・種之助が勤めるほか、充実した配役でお楽しみいただきます。

 本編に先駆けて、解説として『入門 源氏の旗揚げ』をご覧いただきます。過去、令和3年3月公演では『入門 歌舞伎の“明智光秀”』を、令和4年3月公演では『入門 “盛綱陣屋”を楽しむ』を上演し、ご好評をいただいた人気企画です。本編に出演する歌舞伎俳優により、作品の見どころをわかりやすくご案内。物語の世界をより深く知ることができ、お芝居をより楽しくご観劇いただけます。

 令和3年3月公演でもご案内を勤め、客席を大いに沸かせた片岡亀蔵が、皆様を源平の世界にいざないます。今回はどんな解説となるか、お楽しみに!

【関連トピックス】
舞台写真を公開しました! 見どころはこちら
中村魁春、中村又五郎、中村歌昇、中村種之助よりメッセージ(動画)
特別当日券「さくら割引」のご案内【3月11日より発売】
3月歌舞伎公演における大向うの実施について
WELCOME!KABUKI TICKET(外国人向け特別プラン)



\チケット好評販売中!/
国立劇場チケットセンターはこちら ≫


\公演詳細はこちら/