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国立劇場

研修インタビュー 杵屋 巳千雄(きねや みちお)
※令和4年1月掲載

 杵屋巳千雄さんは、平成25年に第5期長唄研修を修了後、尾上菊五郎劇団音楽部で長唄三味線方として活動しています。

《長唄を仕事にできる道》
Q. 巳千雄さんが長唄を始めたきっかけについてお話しください。
A. 高校生の頃、母が長唄を習い始めたので、私も一緒に稽古を始めました。母は今でも私の舞台を毎年観に来てくれて、応援してくれています。その後、東京藝術大学で長唄を専攻しました。

Q. 当時から長唄のプロになりたいと思っていましたか?
A. 長唄を仕事にできるという確証はなかったです。長唄を仕事にできる道として研修制度があることを知って、大学卒業後に研修生に応募しました。

Q. 巳千雄さんが初めて歌舞伎を観たのはいつですか?
A. 高校の授業で歌舞伎のビデオを観たことはありましたが、生で拝見したのは大学生になってからです。

《即戦力になるための研修》
Q. 2年間の研修生活はいかがでしたか?
A. 研修は長唄を職業にするためのものですので、修了時に即戦力として活躍できるようにならないといけません。大学のレッスンでは覚えた曲を忘れてしまってもなんとかなりましたが、研修では一度習った曲を全部覚えていて、いきなり「弾いて」と言われてもできるようにしないといけませんでした。大学生の頃はアルバイトもしていましたが、研修生になってからはアルバイトをせずに研修に専念し、より集中して稽古に励みました。

Q. 好きな科目は何でしたか?
A. 鳴物が好きでした。先生方が優しかったです。曲を覚えるのは大変でしたが。体操の研修も好きでした。ストレッチで身体をほぐし、リラックスすることができました。身体が緩んで、気付いたら寝てしまったこともあります(笑)。研修修了後は、体操の代わりにジムでウエイトトレーニングをしています。運動していれば風邪をひかなくなりますし、ストレス解消にもなります。

Q. 苦手な科目はありましたか?
A. 作法(茶道を通して礼儀作法を学ぶ)や謡曲(能の声楽部分である謡曲を学ぶ)の研修では、礼儀作法を覚えることが難しかったです。

Q. 研修で大変なことはありましたか?
A.先生との口の利き方など、礼儀作法を身に付けるのが大変でした。

Q. 研修で特に思い出に残っていることはありますか?
A. 国立劇場の歌舞伎公演で、2カ月間楽屋実習をさせていただいたことです。歌舞伎の登場人物の心情や情景を表現する黒御簾音楽は、舞台下手側(客席から向かって左側)の黒御簾で演奏されますが、その黒御簾に初めて入らせていただきました。「こんな中で演奏していたんだ」と分かり、感動しました!就業したら黒御簾で仕事をするので、研修期間中に入れて頂けたことは大変勉強になりました。黒御簾に一度も行ったことがない状態で、就業後にいきなりそこで演奏しろと言われても、怖くて弾けないと思います。

Q. 同期には鳥羽屋三之助(とばやさんのすけ)さん(鳥羽屋三右衛門社中唄方)がいらっしゃいますね。
A. はい。研修時代からよく一緒に遊びに行ったりご飯に行ったりしていて、今でも仲が良いです。歌舞伎俳優研修の20期の人たちとも研修期間が被っていて、今でも地方巡業で一緒の時などにご飯に行きます。

Q. 長唄研修では、1・2年次には唄と三味線を同じ比重で稽古し、どちらに進んでもプロになれるように先生方がご指導くださいます。3年次になる時に入門先を決め、唄と三味線の専攻も決めます。三味線に進まれた経緯を教えてください。
A. 子供のころから楽器をさわることが好きで、研修生になってからも唄うことよりも楽器を演奏することの方が好きだったからです。

Q. 幼少期から音楽に親しんで育ったのですね。
A. はい。幼い頃に習っていたピアノのほか、ギターやドラムでも遊んでいました。

Q. 西洋由来の音楽に慣れ親しんだ状態で、和音階を用いる長唄を習得するのは大変でしたか?
A. あまり大変だったという感触はありません。邦楽の音階は相対的なもので、絶対的な正解があるわけではありません。稽古を重ねるうちに、それに慣れたのだと思います。

《発見が尽きない!》
Q. 修了後についてお伺いします。舞台に出る時に心がけていることはありますか?
A. 修了したばかりの頃はかなり気合を入れて演奏していましたが、今はそこまで構えずにできるようになりました。自分なりに舞台に出る前のルーティーンを作り、それを実践することで気持ちを落ち着け、舞台に臨んでいます。

Q. 出番以外の時間は、普段どのように過ごしていますか?
A. 三味線弾きは基本的に暗譜で弾くことが求められるので、覚え物をして過ごすことが多いです。自宅での三味線の自主稽古も欠かせません。近所迷惑にならないように、三味線に布をかけて消音して弾いています。それと、犬を飼っているので、舞台がない時は犬の散歩をして過ごしますね。

Q. 歌舞伎長唄の演奏家になってよかったことは何ですか?
A. 仕事で全国の様々な土地に行けることです。家にいることも好きですが、強制的に出歩くチャンスがあって楽しいです。

Q. 今後の目標を教えてください。
A. 細く長く続けていきたいです。

Q. 長唄の魅力は何だと思いますか?
A. 長唄は唄と三味線とお囃子から成る音楽で、三者が「せーの」で音を出すとかっこいいです。三味線の音は日本人なら一度くらいは聞いたことのある音で、三味線の音を聞いて不快に思う人はいないのではないかと思えるくらい心地よい音色です。

Q. 長唄研修生に応募するにあたって、何か準備しておいた方がよいことはありますか?
A. 特にありません。研修生になるとかなりの時間稽古することになるので、研修生になる前の時間のあるうちに、しっかり遊んでおいてください(笑)。音楽が好きで長唄に興味があるなら大丈夫です!

Q. 研修生を目指す人にメッセージをお願いします。
A. 長唄は稽古すればするほど知らないことが出てきて、いつまでも発見が尽きない面白いものです。長唄に興味を持ちやってみたいと思ったら、ぜひ研修生になってください。向上心があればどんどんできることが増えていき、とても楽しいですよ!

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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