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【9月文楽】くろごちゃんが解説! 悪七兵衛景清ってどんな人?

 9月文楽公演第二部で上演する『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』は、一門滅亡後、盲目となった平家の勇将・悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)と生き別れた娘の邂逅、そして、父娘の情愛を描く文楽作品屈指のヒューマンドラマです。
 公演を前に、くろごちゃんが主人公の景清についてご紹介します。

◆◆◆

付き人:くろごちゃん、なに読んでるの?

(⌒v⌒):9月文楽公演で上演される『嬢景清八嶋日記』のあらすじだよ。予習しておかなくちゃ、と思って!

付き人:さすが、くろごちゃん! 黒衣の鑑だね♪

(⌒v⌒):(付き人さんもたまにはさぁ……)

付き人:『嬢景清八嶋日記』って、チラシで男の人が女の子の顔に手をかざしてる写真が使われてるけど、どんな場面なの?



『嬢景清八嶋日記』


(⌒v⌒):これはね、「日向嶋(ひゅうがじま)の段」の一場面で、平家滅亡後に生き延びた盲目の悪七兵衛景清が、幼いころに生き別れた娘・糸滝(いとたき)の顔を確かめているところなんだ。

付き人:なるほど、目が見えないから顔に触れてるんだね。ふんふん(あらすじを読みながら)、糸滝は、零落して九州の日向国(現在の宮崎県)に暮らす父親を官位につけようと、遊女屋の花菱屋(はなびしや)に身売りしてお金を作ろうとするんだね。すごく健気な子だなぁ。周りの人たちも、日向に行きたいという糸滝に贈り物をしたり年季を減らしたり、すごくいい人たちだし!

(⌒v⌒):「花菱屋の段」では、父を想う糸滝の述懐と、その孝心に同情した花菱屋の亭主や肝煎左治太夫(きもいりさじだゆう)たちの温情が涙を誘うんだ。人使いの荒いおかみさんが最後に取る行動も意外に思うと同時にほほえましくなるよ。


花菱屋の段
(平成22年2月文楽公演より)


付き人:続く「日向嶋の段」で、糸滝は父親の景清に会いに日向国に行くんだね。どうして景清は、日向国にいるの?

(⌒v⌒):源氏の世をどうしても受け入れられなかった景清は、自ら盲目となって日向国で遁世しているんだ。今は一人、亡き主君である平重盛(たいらのしげもり)を弔いながら日々を過ごしているんだ。

付き人:そっか・・・・・・。あれ?そういえば、景清って源平合戦の後の時代を描いた『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)』「阿古屋琴責(あこやことぜめ)の段」に出てきた阿古屋の恋人だよね? 2月の文楽公演で観たのを覚えているよ。そうすると、糸滝は阿古屋の子供?

(⌒v⌒):付き人さんにしては、よく覚えてたけど、違うんだな、それが。糸滝と阿古屋は全く関係ないんだ。『嬢景清八嶋日記』に阿古屋は出てこないしね~。

付き人:えっ、そうなの!? ・・・・・・ そういえば、そもそも景清って平家の武将ってこと以外、どんな人なのかよく知らないや。

(⌒v⌒):景清は平家滅亡後も生き残ったとされていて、そこからいくつかの景清が主人公となる作品群「景清物」が作られたんだ。『嬢景清八嶋日記』もその一つなんだよ!

付き人:そうなんだ! 景清のことが分かるともっと『嬢景清八嶋日記』が楽しめそう!! ねぇ、くろごちゃん、教えて~!

(⌒v⌒):本当は付き人さんにも解説できるようになってほしいんだけど・・・・・・。う~ん、しょうがないな。じゃあ、今回はぼくが景清について解説するね♪

◆◆◆

(⌒v⌒):源平合戦について書かれた『平家物語』には、屋島合戦の際、景清が源氏の武士・美尾谷(三保谷)十郎の兜の錣(しころ)を引きちぎったという「錣引き」のエピソードが載っているんだ

付き人:錣ってちぎれるものなの? 無理じゃない?

(⌒v⌒):だーかーらー! それだけ景清の力が強いってことだよ。悪七兵衛の「悪」は、「悪い」って意味じゃなくて「力強い」って意味なんだ。

付き人:なるほど~。

(⌒v⌒):当時、一番よく知られていたのはこのエピソードなんだけど、『平家物語』には、色々なバージョンがあって、合戦後も生き残った景清の後日譚が載っているものがあるんだ。

付き人:へえ、『平家物語』ってひとつじゃないんだね。

(⌒v⌒):その後日譚では、景清は捕らえられても源氏に従わず、源頼朝が行った東大寺大仏供養の日に絶食して死んだ、とされているんだ。

付き人:敗者となっても源氏に従わなかったなんてすごいね!

(⌒v⌒):そうだよね。そして、そんな景清の姿は様々な作品に採り入れられたんだ。たとえば、鎌倉時代や室町時代に創られた能や幸若舞(こうわかまい)の作品には景清が主人公のものがあって、能の『大仏供養』や幸若舞の『景清』では、大仏供養の日に源頼朝を討とうとした姿が描かれているよ。

付き人:源氏に従わなかった景清が、頼朝に抵抗する景清に発展したんだね。

(⌒v⌒):おっ、付き人さんにしては、するどい!

付き人:……まあ、いいか。それで阿古屋や糸滝はどれに登場するの?

(⌒v⌒):阿古屋が登場するのは、幸若舞の『景清』(作中では「あこ王」)だよ。この作品を基に古浄瑠璃や近松門左衛門の『出世景清』が作られて、2月文楽でも上演した『壇浦兜軍記』は、その流れを組む作品なんだ。

付き人:それでそれで?

(⌒v⌒):そして、名前は糸滝じゃないんだけど、景清の娘が登場するのが能の『景清』だよ。

付き人:阿古屋は幸若舞の『景清』……、景清の娘は能の『景清』……、ややこしい……!

(⌒v⌒):能の『景清』は、日向国の流人となった盲目の景清が、鎌倉から訪ねてきた娘と会い、「錣引き」を語って別れる、というものなんだ。

付き人:ふんふん。

(⌒v⌒):能で描かれた日向国での景清と娘の物語を基に、浄瑠璃や歌舞伎の作品が作られて、さっきの「大仏供養」の流れを汲むものと「日向」の流れを汲むもの、二つの系統ができあがったんだ。

付き人:それでそれで?

(⌒v⌒):その二つを取り合わせて作られたのが、享保10年(1725)に豊竹座で初演された『大仏殿万代石楚(だいぶつでんばんだいのいしずえ)』。景清物の集大成とされているよ。『嬢景清八嶋日記』の「花菱屋の段」と「日向嶋の段」は、この作品が原作なんだ。

付き人:そうなんだ!? 能とはどう違うのかな?

(⌒v⌒):能の詞章や先行作を巧みに用いながらも、敗者となってなお旧主に忠義を尽くし、武士であろうとする景清、そして、そんな武士の誇りと娘への情愛の狭間で葛藤する景清が描かれているよ。景清が糸滝に父と名乗る場面、互いに思いやる父と娘の心底、そして糸滝の孝心を知った景清の決断には胸が震えるよ。



日向嶋の段
(平成22年2月文楽公演より)


付き人:なんか早く見たくなっちゃった……、あっ! 特設サイトに、『嬢景清八嶋日記』の動画が上がってる!

(⌒v⌒):景清を遣う人形遣いの吉田玉男さんのインタビューや予告もあるよ。

付き人:お芝居観る前に見なきゃ~!

◆◆◆
早速動画を見始める二人なのでした




(⌒v⌒):11月歌舞伎公演で上演する『孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)―日向嶋―』では、景清が大仏供養で頼朝を討とうとする場面も描かれるんだ。「大仏供養」が付くことで、源氏の治世での景清の想いや、なぜ盲目となったのかが明らかになるんだ。

付き人:物語の背景が分かって、より楽しめるね♪

(⌒v⌒):しかも! 文楽と歌舞伎、両方の公演をご覧のお客様には、特製グッズをプレゼント! 題して「日向嶋」W観劇キャンペーン!

付き人:歌舞伎と文楽の競演が楽しめる、国立劇場だからこそできた企画です!

(⌒v⌒)&付き人:どうぞ、お楽しみに!

(⌒v⌒):詳細は国立劇場ホームページを見てね。

◆◆◆


父と娘の情愛を描く、文楽作品きってのヒューマンドラマをどうぞお見逃しなく。

9月文楽公演は、7日(土)から23日(月・祝)まで
第一部:午前11時開演/第二部:午後4時開演

好評販売中!
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公演詳細は↓↓↓   

 

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