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国立文楽劇場

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研修修了者インタビュー 吉田玉路さん(令和4年1月掲載)

国立文楽劇場では、第32期文楽研修生を募集しています(応募書類の受付は2月17日まで)。
今回は、第24期文楽研修修了者で人形遣いの吉田玉路(たまみち)さんにお話を伺いました。


玉路さん


―文楽研修に応募しようと思ったきっかけをお聞かせください。

僕、フリーターだったんです。元々、芸術文化全般に興味があったんですけど、プレーヤーとして職にするのはなかなか難しいじゃないですか。大学はとりあえず中退したんですけど、どう職業にしたらいいかわかりませんでした。
文楽は、高校生のとき、東京の鑑賞教室で初めて観せてもらいました。その時はあんまりピンと来なかった。ただ、クラスで仲のいいヤツが、普段あんまりそんなこと言わないのに「これはスゴイ」って言うんですよ。その後、自分でいろいろな舞台を観に行くようになって、「ああ、あの時、文楽っていうのがあったな」と思って、興味を持ち始めました。
なりたいと思ってからは、「どうしよう。菓子折り持って技芸員の家にでも行ったらいいのか、劇場の外で待ってたらいいのか」なんて考えていましたが、研修生の募集を見て「コレやな」と。

―研修生活は思い描いていたものと同じでしたか?

全然違いました。怖いところだと思っていたので、「どうやって馴染んでいこう」と考えていましたが、思ったよりも居場所がありました。もちろん厳しいですし、背筋を正してやらないといけない場面は多いですけど、最初に心配していたようなことはなかったです。古典の世界って、想像がつかない部分があるじゃないですか。でも、入ったら普通の世界の延長で、人と普通にコミュニケーションが取れるなら全然問題ないです。文楽だけのしきたり、慣習ももちろんありますけど、それはどこの業界でも同じだと思います。入ってから慣れていくことですし、入る前は固く考えすぎず、むしろ素直に、言われたことを一つ一つ覚えていけばいいと思います。

―研修では、適性審査まで三業(太夫・三味線・人形)とも履修します。

すごく良かったと思っています。やらないと分からないこともありますし、全体を知るのは大事だと思います。文楽以外の研修(日本舞踊、狂言など)も、直接ではないかもしれないですけど、きっかけになっているというか、いろんなことを吸収するための土台になっています。新しい何かに出会ったときに「ちょっとやったことあるな」とか、端っこだけでも自分の中にあると、より興味を持てたりしますね。

―人形専攻は、早い段階から舞台で実践的に学んでいくことになります。

適性審査後の舞台実習で得たこともすごく大きかったです。ただ、舞台実習では人形を持てないので、研修室での研修があって良かったなと思いますね。僕は財産になってると思います。それを舞台で証明しないといけないんですけど(笑)。

―選考試験に向けて、何か準備されましたか。

僕が受けた時は2回試験があったんですが(※第32期生募集は1回のみ)、僕、1回落ちているんです。11月に落ちて、3月で受かって。僕は埼玉出身なんですけど、受かると思っていたので、1回目にもう大阪の家を決めてたんです。でも落ちてるから、「えっ!?」と(笑)。
準備といっても正直、何をしたらいいかわからないし、何を見られるのかもわかりませんでした。1回目で失敗した原因は色々あるんですけど、まずTシャツで行った。紫色のTシャツ着て行ったんかな。行ったら周りはみんなスーツで、「あれっ?」と。手応えは終始なかったですね(笑)。
2回目の試験は、めちゃくちゃ準備したほうかもしれない。1回目が終わってからの3か月間は、国立文楽劇場の視聴室にずっと通っていました。嫌がらせみたいに(笑)。試験当日も、友達に借りたダブダブのスーツを着て、丸坊主で行きました。それが合格につながったかどうかはわからないですけど、気持ちの切り替えになりました。今までの生活とは違うんだぞ、と。周りには舞台を全然見ていないという方も多かったですけどね。

玉路さん

そこまで極端にかしこまらなくても技芸員になることはできますが、そこからは努力して、自分で学んでいかないといけない。好きだったり、自分の中でモチベーションがあると、すごく楽しめると思います。我慢して仕事して、プライベートを充実させようという感じで選ぶ仕事ではないと思います。金銭的な見返りもそこまで多くないですし。 ただ、生活はできます。一人暮らしでもやっていけると思いますよ。僕は修了後早いうちに結婚して家庭も持ちました。
もし本当に好きになれそうなら、やりがいはすごくあります。文楽は自分のためにやれる仕事だと思いますね。例えば、会社なんかで「営業が好きです」「この仕事がしたいです」と言っても、なかなかそうはいかない。でも、文楽だったら、人形遣いという目標を追求することができる。人形が好きだったり三味線が好きだったり、今好きじゃなくても好きになれる気がするなら、とてもいいと思います。

―技芸員になった現在はどのような生活を送っていますか?

国立劇場・国立文楽劇場の公演だけでも約9か月は仕事があります。その間に地方公演が入り、師匠や先輩が個人的に依頼された仕事もあるので、かなり忙しいですね。慣れないうちは公演とその準備で、本当に忙しいという感覚でした。
わりと休みは少ないんじゃないかな。個人差はありますが、月に休みが数日あるかないかぐらいの人もいます。人形遣いは、普段は技芸員同士での稽古はありませんが、太夫・三味線は相手の方と合わせる稽古をしたり、師匠のところに伺って稽古をつけてもらったりするので、全く何もない日は年に2日しかなかったという方もいます。地方や海外の仕事も多いので、家で安定して働きたい方には苦痛かもしれないですね。体力的には大変ですが、返ってくるものもある。ですから、僕は苦痛に思ったことはないです。

―師匠との関係や楽屋での雰囲気を教えてください。

僕はいろんな仕事をしてきましたけど、文楽が一番楽しいです。やっぱりね、この世界…周りはいろんな人がいますよ。師匠も舞台では怖いですけど、普段は気さくに喋ったり笑ったりしています。太夫・三味線はまた違った雰囲気ですので、どちらが合っているかは、研修に入ってから決めてもいいと思います。ただ、上下関係はどちらも厳しいです。

―文楽の世界に入ってみて良かったことはありますか?

仕事で海外に行けるのはいいですよね。僕は2年に1回くらいですが、毎年のように行っている人もいます。やはり日本を代表する文化なんだなと思います。文化としてそれだけの価値があるものですし、文楽にしかない価値はすごく大きいと思うんですよ。それに携われるのは有難いことだと思います。自分が一人で全部やる訳ではないですけど、文楽という歯車の一つになれるので、すごく充実感があります。舞台に立って拍手をもらったり、お客さんに「頑張ってください」って言われたりすると、文楽という文化の一端を担わせてもらっている自覚も出てきますし、頑張ろうという気持ちも自然に生まれます。いい職業を選択したと思います。

―研修修了から10年が過ぎましたが、今後の抱負を教えてください。

あんまり10年という実感がなくて(笑)。プロになってもあんまり自信がなかったんですけど、もう10年だし、そろそろ自覚を持たないといけないなと感じています。早く一人前の人形遣いになりたいですね。

―応募を考えている未来の後輩たちへ、メッセージをお願いします。

楽しいですよ、絶対。絶対楽しいと思います。普通は文楽なんて知らないので、どこかから集まってきたというだけでも、大きな縁だと思います。一生懸命、何かを素直にできるというのも、現代では貴重なことなんじゃないかな。もし「やれそうだな」と感じるものがあるなら、それは間違いではないと思いますよ。
挫折したら、またそっちを全力でやったらいいんじゃないですか? ケガとか事故とかあったら大変ですが、一生懸命やっていたら何とかなると思っています。何とかなるし、何とかするしかない。やりたいと思ったことをやるのが、一番いいと思います。

―ありがとうございました。

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