能楽三役 研修修了生からのメッセージ

加藤洋輝(かとうひろき)

  • 加藤洋輝(かとうひろき)
  • 第6期能楽(三役)研修
    (平成11年4月~17年3月)修了生
  • 昭和49年10月生まれ 愛知県出身
  • 太鼓方・観世流 十六世宗家観世元信に師事
  • 平成13年3月 舞囃子「善界」、能「猩々」で初舞台
  • これまでに「猩々乱」「獅子」「翁付脇能」を披く
  • 平成17年 金春流アメリカ公演に参加

能楽の世界に入ろうと思った動機を教えてください。

 学生のころ、能楽サークルに入ったのがきっかけで能や狂言を見るようになりました。卒業してからも、趣味として続けていましたが、自分の好きなことを仕事にしたいと思い、一念発起してこの世界に入ることに決めました。

能楽囃子方という仕事の魅力を教えてください。

 能、狂言が上演されるときに、能舞台後方で楽器を演奏するのが囃子方の仕事です。笛、小鼓、大鼓、太鼓の4種類の楽器がありますが、それぞれの楽器は完全に専門が分かれています。私は太鼓方ですから、太鼓だけを担当します。ほかの楽器を担当することはありません。楽器の音色と間、掛け声というとてもシンプルな要素で曲の雰囲気や情景を表現して、おシテや、おワキ、地謡の方たちと一緒に舞台を作り上げていくのが魅力であり、やりがいのあるところだと思います。
 掛け声は「ヤ」「ハ」「ヨーイ」「イヤー」というたった4種類だけですが、声の強弱や調子を変えることによって多彩な表現ができます。

研修中と舞台に立つようになってから一番印象に残っていることを教えてください。

 前にも述べたように能の囃子で掛け声というのは重要な要素なのですが、研修中はその掛け声が思うように出なくてずっと苦労していました。私の場合、研修に入る前に趣味で習っていて、ある程度の心得はあったつもりですが、それまでの声の出し方では全然通用しないことを思い知らされました。声量が足りなかったので、大きな声をだそうと思ってちょっと頑張って声を出すと、調子はずれの声になったり、すぐ喉がかれて声が出なくなったりしました。
 研修が修了すると、それまであまりお相手する機会のなかった方々とも一緒に舞台を勤めることが多くなってきます。能の世界では本番前に何度も合わせるということはなく、原則として「申し合わせ」というリハーサルが1回あるだけです。ですから、相手の方がどう謡いたいのか、どう囃したいのかを瞬時に判断して、謡いやすいようにこちらが囃していくのが大切なのですが、これがなかなか解らずに謡いの流れを壊してしまい、注意されることがよくありました。謡をよく理解するのはもちろんのこと、多くの方と実際にお相手していただいて、舞台の上で教えていただくことがとても貴重な勉強の機会になりました。

能楽の研修生に応募を考えている皆さんへのメッセージをお願いします。

 能の世界は外にも開かれていて、能楽師の家に生まれなくても能楽師になることは可能です。しかし、能楽師の家に生まれて、子供のころから厳しく仕込まれてきた人にくらべると、途中から入った人はそのスタートラインに大きな開きがあります。このギャップを埋めるのはとても厳しいことです。
 能楽の研修制度は6年と長いのですが、研修が終わったからといって一人前ではありません。その後も勉強はずっと続きます。
 長く厳しい道ですが、能楽の魅力に一生を賭けてみようと思われた方は、応募してください。

国立劇場伝統芸能伝承者養成所