能楽(三役)研修

能楽三役とは

能楽は、主役のシテをつとめる「シテ方」、シテの相手であるワキをつとめる「ワキ方」、能の囃子(音楽)をつとめる「囃子方(笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方)」、能の間狂言や狂言を演じる「狂言方」の諸役により演じられます。それぞれの役方は、他の役方を兼ねることはありません。「ワキ方」が狂言を演じることはなく、また、笛方が小鼓を演奏することもありません。能楽は、それぞれの役方が高度で専門的な技量を持ち、完全な分業制となっています。上記の役方のうち、「シテ方」を除いた、「ワキ方」「囃子方」「狂言方」を総称して、「能楽三役」と呼んでいます。

ワキ方

ワキ方がつとめる「ワキ」は、能の主役である「シテ」の相手役です。旅の僧や神主、貴族や武士などの役柄が多く、面をつけずに演じます。多くの能では、まずワキが登場して、時間や場所、物語の状況を語ります。そしてワキの前にシテが登場することで、ドラマが始まります。シテはワキに自分の素性や境遇、胸の内を語り、舞を見せることで能は展開します。
ワキはシテの演技を引き出す重要な役なのです。
ワキ方には宝生流(下掛り宝生流)と福王流と高安流の三つの流派があります。

囃子方

囃子方は能の囃子(音楽)をつとめます。能の音楽は、笛、小鼓、大鼓、太鼓の四つの楽器で演奏されます。それぞれ笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方と呼ばれる演奏者が、舞台後方の囃子座というところで演奏します。他の楽器を兼ねることはありません。

笛方

能楽の笛は「能管」とも呼ばれています。笛は、能の囃子では唯一の旋律楽器ですが、メロディではなく、情景や主人公の心象などを表現し、幽玄の世界をかもし出します。
笛方には森田流、一噌流、藤田流の三つの流派があります。

小鼓方

小鼓は、拍子を司る打楽器で、大鼓と対で用いられます。馬革で作られた革を調と呼ばれるひもで組んで、胴に締めつけます。この調を緩めたり締めたりして、四種類の音を用いて演奏します。小鼓の革は乾燥するといい音が出ないため、演奏中に息をかけるなどして湿らせて音を作っています。
小鼓方には観世流、幸流、幸清流、大倉流の四つの流派があります。

大鼓方

大鼓も小鼓と同様、拍子を司ります。小鼓同様、馬革を使った革を用いますが、小鼓とは異なり、湿気を嫌います。大鼓の革は演奏前に炭火で乾燥させ(焙じるといいます)、大鼓用の調を用いて胴にきつく締めあげます。「カーン」と高い乾いた音が特徴的で、能の囃子の中心となる拍を刻み、音楽をリードします。
大鼓方には葛野流、高安流、大倉流、石井流、観世流の五つの流派があります。

太鼓方

手で打つ小鼓・大鼓と異なり、太鼓は撥を使って打つ締太鼓です。革は牛の革が使われています。太鼓はすべての能で使われるわけではなく、太鼓が入る演目を太鼓物といい、原則として霊、鬼、精など、人間を超越したものが登場したり所作をしたりする場合に演奏されます。(太鼓が入らない演目は大小物と呼ばれます)
太鼓が入る場合は大鼓に代わって拍を刻み、音楽をリードします。
太鼓方には観世流、金春流の二つの流派があります。

狂言方

狂言は日常的なできごとを題材としたセリフ劇です。人間の弱さや愚かしさを笑いにしてしまうところに大きな特徴があります。演じるキャラクターは、太郎冠者や大名など現代にも通じるようなどこか滑稽な人たちばかりで、悪人や鬼であってもどこか憎めないところがあります。狂言では感情を豊かに表現するために、身体全体を使って大きく演技をします。
また、狂言方は狂言の他に、能でアイ(間狂言)を演じます。アイの多くは、能の前場と後場の合間に登場して、物語を説明したり、ストーリーを盛り立てたりします。
狂言方には大蔵流、和泉流の二つの流派があります。

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