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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】9月公演が間もなく発売開始です!

 間もなく発売開始となる、国立能楽堂9月主催公演のラインナップをご紹介いたします。すすき揺れる爽秋の頃、皆様のご来場をお待ちしております。

7日(水) 定例公演  午後1時開演

鶏泣

 主人から「一番鶏が歌ったら起きるように」と命じられた太郎冠者。うっかり寝過ごしてしまった言い訳に「鶏は鳴いたが、歌わないので、いつ歌うのか待っていた」と屁理屈をこねます。そこでふたりは、鶏が「鳴く」のか「歌う」のか、和歌を引き合いに出して言い合いをはじめますが…。さて、軍配はどちらに?

自然居士

 京都・雲居寺では、都で評判の青年僧・自然居士が七日間に渡る説法を行い、今日はその満願の日です。人々の前に立った居士の前に、ひとりの少女が進み出て、小袖を布施として捧げ、両親の追善供養を願います。そこに人買いが現れ、少女を連れ去ってしまいました。小袖は、少女が身を売った代金で用意したものだったのです。居士は、説法を中断して少女の救出に向かい、今まさに琵琶湖に漕ぎ出そうとする人買いを乗せた舟に追いつくと、「少女を返せ」と迫ります。押し問答の末に人買いは、芸を見せることを交換条件に少女の解放を承諾します。居士はさまざまな芸を見せ、見事、少女を奪還するのでした。

10日(土) 普及公演  午後1時開演

昆布売

 供をする家来がいないので、自ら太刀をもって出かけた大名。通りがかりの昆布売に声をかけ、太刀で脅して太刀持ちの役目を押し付けます。無理強いされ、従者扱いに我慢のならない昆布売ですが…。どんな反撃に出るのでしょうか?

殺生石

 旅の途中、下野の那須野ヶ原を通りかかった僧・玄翁は、とある巨大な石の上空で、飛び交う鳥がパタパタと落ちるのを目撃します。不審に思う玄翁の前に、土地の女が現れて、これは人畜の命を奪う恐ろしい石だと教えます。その昔、女官に化けて帝に仕え国を乗っ取ろうとした化生の者が、正体を見破られ命を奪われて、恨みが凝り固まった執心の石。実は自分こそがその石魂だと明かして、女は石の中に隠れてしまいました。
 玄翁が殺生石を供養して引導を授けると、石が真っ二つに割れて、中から野干の物の怪が現れます。インド、中国、日本を股にかけた悪事の果てに、この地で命を落とした経緯を語った後、玄翁の供養に感謝して、悔い改めることを誓うのでした。

16日(金) 定例公演  午後5時30分開演

舎弟

 いつも兄から「舎弟」と呼ばれている弟。「舎弟」の意味がわからないので、物知りの者に訊ねると、いたずら心をおこした物知りは「舎弟とは盗人のことだ」と教えます。嘘を真に受けた弟は、憤慨して兄のところに抗議に向かうと…。

松虫

 摂津国阿倍野の市で酒を売る男のもとに、いつも訪れて酒盛りをする男たちがいました。ある日、そのなかのひとりが「松虫の音に友を偲ぶ」と言ったので、酒売りが謂れを訊ねると、男は、昔語りをします。――この阿倍野の原を連れ立って通った二人の男がいました。聞こえてくる松虫の声に心ひかれたひとりが草むらに分け入りましたが、待てどももどってきません。友は、草むらの中でこと切れていたのです。ひとり残された男は今も友を偲びながら亡霊となってさまよっている、実はそれこそ自分なのだと明かして、男は姿を消してしまいました。
 夜が更け、消えた男の亡霊が酒売りの夢に現れます。そうして、友と心通わせた日々を懐かしんで、すだく虫の音に包まれて舞を舞うのでした。

23日(金・祝) 企画公演 ◎復曲の会 午後1時開演

 能・狂言の長い歴史のなかには、時代の流れに埋もれていった作品が数多くあります。復曲の会では、そうした現行曲(レパートリー)にはない演目に目を向け、選りすぐった作品をご覧いただきます。

空腹(そらはら)

 大晦日、新年を迎える支度で賑わう世間を横目に、暮らしに行き詰まった男が借金を頼みに有徳人(金持ち)の家を訪ねます。ところが逆に、これまでの借金の返済を迫られ、追い返されてしまいます。一計を案じた男は、有徳人のところに戻り、「金を借りるのはあきらめたので座敷を貸してほしい。返済できないお詫びにそこで腹を切る」と言い出して…。
 今回が復曲初演となります。

薄(すすき)

 西国巡礼中の僧の一行が、近江国の山間で行き暮れたところに、どこからともなく現れた女が、かつて登蓮法師が住んでいたという阿弥陀寺へと案内します。そして、歌人としても名高い登蓮法師の逸話を語るのでした。それは、ある雨の夜に人々が集った時の事。和歌に詠まれた「ますほの薄」とはどんな薄かという話題になり、摂津国渡辺というところにそれを知る人がいると聞いた登蓮法師は、今すぐその人を訪ねて教えてもらおうと、雨の夜半に渡辺に向かった、というものでした。女は、今ではその薄も忘れられ、寺を訊ねる人もなくなったことが残念でならないと言って消え失せます。
 さては今の女は和歌に詠まれた薄の精かと察して、僧が回向していると、まさしく薄の精となった女が姿を現し、弔いを感謝し、極楽浄土を想わせる舞を舞い、夜明けとともに消えて行きました。
 金剛流のみに詞章が伝わりながら、過去に上演記録がなかった作品です。令和元年の「金剛永謹能の会」で復曲初演されました。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

●9月公演発売開始日
  • ・電話インターネット予約:8月10日(水)午前10時~
  • ・窓口販売:8月11日(木・祝)午前10時~
 ※令和4年度よりチケット予約開始日が変更になりました。

  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/