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国立能楽堂

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【第31回東京若手能】出演者メッセージ第四弾:坂真太郎さん(シテ方観世流)

能楽若手研究会東京公演「第31回東京若手能」を2月25日(土)に開催します。
これに関連して、出演者からメッセージをいただきました。
第四弾は、能「杜若」でシテを勤められる坂真太郎さん(シテ方観世流)です。


 
坂真太郎

 私にとって『杜若』は、平成26年5月の観世九皐会定例会以来の再演となります。しかし再演と言いましても、初演より少しでも良くなったところが無ければなりませんから、気を引き締めて臨んでおります。
 能『杜若』は、ご存知の通り『伊勢物語』「東下り」を題材とした作品です。杜若の花の美しさに、「か・き・つ・は・た」の5文字を折句にして「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」と詠まれた和歌でも知られています。
 作品中では、杜若の咲き乱れる様を目の当たりにした僧(ワキ)の中に妄想が広がり、そこへ杜若の花の精(シテ)が姿を現します。この花の精が、業平の冠を戴き、高子の后の唐衣をまとって舞を舞うのですが、どうにも理屈では納得しがたいものがあります。しかし実際の舞台に接してみると、不思議とそんな違和感を感じさせないのは、謡曲作者の手腕でしょうか。
 能では人間ばかりでなく、草木の精を主人公とする作品がいくつもあります。そのような作品の中では、必ずと言って良いほど、「草木国土悉皆成仏」と謡われます。インドから我が国へと仏教が伝来する中で、自然豊かなこの国土に住まう先人達は、「衆生」に「草木」を含むと解釈したのでしょう。なんと日本的な感覚なのかと、驚くばかりです。
 杜若の咲く光景といえば、皆さんはどんな様子を思い浮かべるでしょうか?実際の花の様子ではなく、尾形光琳の国宝『燕子花図屏風』を思い浮かべる方もいらっしゃるかも知れません。私には学生時分、夕暮れ時に訪れた知立市の「八橋かきつばた園」の風景が思い出されます。昼間見るのとは異なり、夕暮れ時には何とも怪しげに映ったのが印象的でした。ご覧頂くお客様それぞれが脳裏に思い浮かべる、杜若の花のイメージを壊さぬような能を演じられますよう、稽古を重ねて参ります。皆様のご来場を心よりお待ち致しております。

<坂真太郎 プロフィール>
シテ方観世流 東京都出身
故坂真次郎の長男 三世観世喜之に師事
日本能楽会員

  「出演者メッセージ第一弾:澤田宏司さん(シテ方宝生流)」はこちらから
  「出演者メッセージ第二弾:田邊恭資さん(小鼓方大倉流)」はこちらから
  「出演者メッセージ第三弾:東川尚史さん(シテ方宝生流)」はこちらから

「第31回東京若手能」は、国立劇場チケットセンターほかにて好評発売中です。
どうぞお見逃しなく!

番組

杜若(かきつばた)
シテ 坂 真太郎(観世流)
ワキ 舘田 善博(宝生流)
狂言
因幡堂(いなばどう)
内藤  連(和泉流)
通小町(かよいこまち)
シテ 澤田 宏司(宝生流)
ワキ 村瀨  提(福王流)
日時 2023年2月25日(土) 午後1時開演(開場正午)
場所 国立能楽堂 能舞台

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