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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂4月主催公演がまもなく発売です!

 まもなく発売となる国立能楽堂4月主催公演のラインナップをご紹介いたします。21日は国立能楽堂ショーケースと題した、初めての能楽鑑賞にぴったりな入門公演です。また27日の企画公演は◎新作・復曲再演の会! 復曲狂言と瀬戸内寂聴氏による新作能で能楽の魅力をご堪能ください。

鈍太郎

 三年ぶりに西国から都にもどってきた鈍太郎は、下京に暮らす妻、上京に暮らす愛人をそれぞれ訪ねます。ところが長らくの音信不通で、もはや鈍太郎がもどることはないと思い込んでいたふたりは、鈍太郎を騙るひやかしだろうと考えて、それぞれ「留守を待ちかねて新しい夫を持った」と嘘をつき、追い返してしまいました。行き場を失くした鈍太郎は、出家しようとしますが…。

藤戸

 備前国・児島で、藤戸の浦の浅瀬を渡って平家の陣に奇襲をかけた佐々木盛綱は、軍功の褒美として児島を与えられます。領主として意気揚々と島に乗り込んだ盛綱が「訴訟のある者は何なりと申し出よ」と触れを出すと、ひとりの女が進み出て、「我が子を殺された恨み」と盛綱に迫ります。実はこの女こそ、盛綱に浅瀬の場所を教え、口封じのために殺された地元の漁師の母親だったのです。観念して経緯を告白した盛綱は、母親から「我が子を返せ」と激しく詰め寄られ、殺めた漁師の追善供養を約束します。
 供養がはじまると、読経の声にひかれて現れた漁師の霊が、悪龍の水神となって盛綱に襲いかかろうとします。しかし、弔いの功徳によって怒りを鎮め、成仏を遂げるのでした。

引括

 妻のわわしさ(口うるささ)に心底愛想が尽き、離婚したいと思っている男。けれど妻が簡単には承知してくれないだろうと考え、まずは労わるふりをして里帰りを勧め、「五年でも十年でも好きなだけ実家で休んでこい」と言います。その言葉に夫の本心を見抜いた妻は、激怒しますが、離婚を承知するので“暇(いとま)の印(離縁の証となる物)”が欲しいと言います。これ幸いと、男が「なんでも好きなものを持っていけ」と言うと…。果たして妻は何を選ぶのでしょうか?

雲林院

 幼い頃から『伊勢物語』を愛読してきた芦屋公光(きんみつ)は、夢のお告げに導かれて京都・紫野の雲林院にやってきました。そこで出会い、古歌を交わして打ち解けた老人に、公光は自らをこの地に導いた霊夢を語ります。その霊夢とは、花のもとに『伊勢物語』の本を手にたたずむ男女が現れたので、近くにいた老翁に訊ねると、「ここは紫野の雲林院で、あの男女は物語の主人公の在原業平と二条后だ」と教えてくれたというものでした。話を聞いた老人は、それは『伊勢物語』に深く心を寄せる公光への業平の計らいだと言い、自らが業平の化身であることを匂わせ、姿を消してしまいました。
 夜になると、その場に留まっていた公光の前に業平の霊が現れ、『伊勢物語』の世界を讃え、懐旧の舞を舞うのでした。

 能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの公演です。チケットご購入の方は無料で参加いただける、公演当日開演前のプレトークや、公演の一週間前のワークショップも開催します。

蝸牛

 長寿の妙薬「蝸牛」を採ってこいと命じられた太郎冠者。主人は、蝸牛を知らないという太郎冠者に「竹藪にいて、頭が黒く、腰に貝をつけ、ときに角を出すもの」と教えます。その特徴をたよりに太郎冠者が藪に入って行くと、そこには眠り込んでいる山伏がいて…。

葵上

 物の怪にとりつかれ床に臥せっている光源氏の正妻・葵上。照日(てるひ)の巫女の口寄せで、葵上に恨みをもつ六条御息所の生霊が現れて、物の怪の正体が自らであることを明かします。急ぎ、高い験力(げんりき)を持つ横川(よかわ)の小聖が呼び出され、怨霊退治の祈祷をはじめると、鬼女の姿となった御息所の霊が姿を現しました。激しい応酬の末、小聖の法力の前に力尽きた御息所の霊は、ついに成仏得脱を遂げるのでした。

27日(木) 企画公演 ◎新作・復曲再演の会 午後1時開演

 長らく上演の途絶えていた狂言の復曲作品と、能の新たな魅力を引き出す新作能を取り上げます。

 都見物からもどった太郎冠者に、主人が都の様子をたずねます。太郎冠者は、名所として知られるかつての禁苑・神泉苑で耳にした「五位の鷺」の話をし、囃子にのってその鷺の物真似を披露します。
 大正期まで存続した狂言鷺流に伝わり、能『鷺』にも描かれている、延喜(えんぎ)の帝が鷺に五位の位を授けた逸話を取り入れた狂言です。大蔵流では、新天皇の即位に際して横浜能楽堂により復曲されました。

(令和元年横浜能楽堂特別企画公演初演)

夢浮橋

 宇治川のほとりでひとり念仏を唱えて散華(さんげ)する女。通りがかりの阿闍梨(あじゃり)が声をかけると、女は、仕えていた姫君がここで入水したため、川を姫の墓と思い供養しているのだと言います。阿闍梨は、かつてその姫・浮舟の命を助けたのが自らの師である横川の恵心僧都(えしんそうず)で、今は師の遷化(せんげ)を知って墓所へ参る途中なのだと明かし、女と共に横川へと向かいます。
 墓前に到着した阿闍梨の前に、舟に乗った浮舟と皇子・匂宮(におうのみや)の幻が現れ、阿闍梨の心は遠い過去へと遡ります。実は、浮舟は、匂宮と光源氏の息子・薫という二人の男に身を委ねている自分に苦しみ抜き、川に身を投げたのでした。助けられた浮舟は出家を願い、その髪を剃髪をした若き日の阿闍梨は、浮舟の艶めかしい黒髪に淫欲を覚え、思わず一房を懐に納めてしまいました。邪淫に捕われた阿闍梨は寺を出て、放浪の旅を続けてきたのです。そして今、過去を懺悔した阿闍梨は、師の墓に黒髪を納め、ようやく妄執から解き放たれ、悟りを得るのでした。
 国立能楽堂委嘱作品として、瀬戸内寂聴氏が『源氏物語』の宇治十帖をもとに書いた短編小説『髪』を骨子に、自ら詞章を書き下ろしました。

(平成12年国立能楽堂特別企画公演初演)

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

 

●4月主催公演発売日
  • ・電話インターネット予約:3月10日(金)午前10時~
  • ・窓口販売:3月11日(土)午前10時~
  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/