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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂3月主催公演がまもなく発売です!

 まもなく発売となる国立能楽堂3月主催公演のラインナップをご紹介いたします。25日の企画公演では ◎うたと能楽 と題して、連歌や和歌にちなんだ作品を特集します。庭の花々も徐々に色づき始める国立能楽堂へ、皆様のご来場を心よりお待ちしております。

左近三郎

 狩りに行く途中の山中で僧と出会った左近三郎は、僧をからかって、「酒は飲むか?」「魚は食べるか?」「妻はいるか?」と次々に訊ねます。僧が否定すると、その都度、弓矢で脅して無理に肯定させて面白がり、あげくに、檀那(だんな・後援者)になろうと言い出します。殺生をする猟師は檀那にできないと僧が断ると、ここから殺生をめぐってふたりの問答がはじまり…。

采女

 南都(奈良)・春日神社を訪れた旅の僧は、不思議な女から声をかけられます。女は僧を猿沢の池へと案内すると、帝の心変わりを悲しみここに入水した采女の物語をして、自分はその幽霊だと告げ消えてしまいました。
 やがて、僧の読経にひかれて在りし日の姿で現れた采女の幽霊は、弔いに感謝し、宮中の宴で舞った過去を懐かしみながら舞い、さらなる回向(えこう)を頼んで池の中へと姿を消すのでした。
 采女の入水の悲劇を際立たせる美奈保之伝の小書(特殊演出)での上演です。

磁石

 遠江国(とおとうみのくに)・見附(みつけ)から都見物にやってきた男が、大津の市をのぞいていると、すっぱ(騙り者)が近づいてきて、宿を紹介します。実は宿の主人は人買いで、すっぱから見附の男を買い取る約束が結ばれます。眠ったふりをしてその一部始終を聞いていた見附の男は、宿の主人を騙して金を受け取り、逃げ出します。気づいたすっぱが太刀を手に追いかけると、見附の男は太刀を口から飲み込もうとして、なんと、自らを磁石の精だと名乗ります。男は本当に磁石の精なのでしょうか?

野守

 大和国・春日野を訪れた山伏は、野守(野を守る番人)の老人と出会います。老人は、足元の溜り水が「野守の鏡」と呼ばれているのだと言い、けれど本当の「野守の鏡」は、かつて、昼は人としてこの野を守っていた鬼神がもつ鏡なのだと語ります。さらに、帝の鷹狩の際に、鷹の行方を尋ねられた野守が、木の枝に止まった鷹が水鏡に映ったことから居場所を見つけた古(いにしえ)の話にちなんで、この溜まり水は「はし鷹の野守の鏡」とも呼ばれるのだと教えます。山伏は鬼神がもつ誠の「野守の鏡」をぜひ見たいと願いますが、老人は、それは恐ろしい鏡だから、せいぜいこの水鏡を見ておくようにと言い残して姿を消しました。
 夜になり、勤行をする山伏の前に鬼神が姿を現します。鬼神は、手にした鏡に天界から地獄まで、この世のすべてを映し出して見せた後、大地を踏み破り地の底へと帰ってゆくのでした。

孫聟

 今日は結婚後にはじめて聟が妻の実家を訪ねる「聟入り」の日です。準備を整えて聟の到着を待つ舅と太郎冠者は、何かにつけ口を出し場を台無しにする祖父(おおじ)を、祖父の友人に連れだしてもらうことにしていました。ところがその計画を知った祖父は大激怒。結局、聟入りに立ち会うことになります。そこに何も知らない聟がやってきて…。

盛久

 源平の戦いで生き延び、身を隠していた主馬判官(しゅめのほうがん)・平盛久は、居場所を突き止められて捕らわれの身となります。護送される途中、許しを得て、日ごろから信仰する清水の観音に参詣をし、鎌倉に到着します。処刑の前夜、覚悟を決めた盛久は、観音経を唱えて眠りにつき、ある霊夢を蒙ります。翌朝、まさに盛久の首が打ち落とされようとした時、不思議なことに太刀が折れ、処刑は保留となりました。盛久は、将軍・頼朝の前に召しだされ、天から現れた老僧が「観音を信じるならば身代わりになろう」と言った夢のお告げを打ち明けます。実は頼朝も同じ夢を見ていたと言い、その霊験のあらたかなることに打たれて盛久を赦します。盛久は晴れ晴れと舞を舞い、御前を退出するのでした。

25日(土) 企画公演 ◎うたと能楽 午後1時開演

 限られた文字数のなかに万物や奥深い心を描き出す和歌や連歌は、古(いにしえ)から人々に愛されてきました。能・狂言と切り離すことのできない「うた」を題材にした作品をお楽しみいただきます。

連歌盗人

 趣味の連歌の集まりで、開催する当番になったものの、貧乏で準備ができない男。同じ境遇の男と相談して、有徳人(裕福な人)の家に盗みに入ります。座敷に忍び込み物色をしていると、床の間の懐紙に書かれた句が目に入り、ふたりはついついその句に添えて歌を詠み始めます。すると、物音を聞きつけた家の主人に見つかってしまい…。

草紙洗小町

 明日行われる宮中の歌合(うたあわせ)で小野小町と詠み競うことになっている大伴黒主(おおとものくろぬし)は、相手の様子を探りに小町の家に忍び入ります。そこで小町が準備した歌を耳にした黒主は、その歌が古歌であるように偽装するため、万葉集の草紙に書き込みます。翌日、宮中には紀貫之、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)、壬生忠岑(みぶのただみね)など当代一流の歌人が集い、歌合がはじまりました。小町が詠じると、黒主は、それは万葉集にある古歌だと奏上し、証拠だと言って用意しておいたあの草紙を取り出します。追い込まれた小町ですが、よく見ると自分が詠じた歌の部分に何か細工があることに気がつきます。勅許を得て草紙を水にさらすと、黒主が書き入れたその歌は水に流れてしまいました。汚名が晴れた小町は、和歌の徳を讃えて、舞を舞うのでした。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

 
●3月主催公演発売日
  • ・電話インターネット予約:2月10日(金)午前10時~
  • ・窓口販売:2月11日(土・祝)午前10時~
※ 令和4年度よりチケット予約開始日が変更になりました。

  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/