国立能楽堂

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【千駄ヶ谷だより】6月公演が間もなく発売開始です

 間もなく発売開始となる、国立能楽堂6月主催公演のラインナップをご紹介いたします。緊急事態宣言下ではございますが、6月には皆様を笑顔でお迎えできるよう、国立能楽堂でも引き続き、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に努めて参ります。
 4月から3か月連続の特集《日本人と自然》。最終月の6月は「花鳥風月」をテーマに、日本の美しい自然の風景を題材とした作品を中心に取り上げます。なお、昨年中止となりました公演を一部変更して開催いたします。

2日(水) 定例公演  午後1時

花盗人

 みごとな花を咲かせる桜をひと枝盗んだ新発意(しんぼち=仏門に入ったばかりの者)は、ふたたび盗みにやってきたところを木の持ち主につかまってしまいます。漢詩や古歌を引き合いに出して「花盗人は罪ではないのに」とぼやいていると、木の持ち主からある提案をもちかけられ…。

吉野天人

 桜の名所・吉野山にやってきた都人の一行は、花の美しさにつられて山の奥へ奥へと分け入っていきます。そこに上品な雰囲気を漂わせる女が現れ、この山に住む者だと言って、一行とともに花見に興じます。やがて女は、実は自分は天人であることを明かし姿を消します。
 夜が更けるにつれて、どこからともなく美しい音楽がきこえ、あたりにはかぐわしい香りが満ちてきました。すると、さきほどの女が天女の姿となって、大勢の天女とともに現れ、いにしえの五節の舞を舞って見せるのでした。
 「天人揃」の小書により、複数のツレの天人が登場。春爛漫の景色に一層の華やぎを添えます。

12日(土) 普及公演  午後1時

千鳥

 主人から酒を買ってくるよう命じられた太郎冠者。けれど酒屋からは「ツケがたまっているから売れない」と断られてしまいます。酒を持って帰らなければ主人にひどく怒られる、されど金はない。そこで太郎冠者は一計を案じ、手を替え品を替え…。さて、太郎冠者は酒を手に入れることができるでしょうか?

善知鳥

 陸奥・外の浜へと向かう途中の僧が霊山・立山に立ち寄ると、ひとりの老人が現れます。老人は、去年死んだ猟師の霊だと名乗り、外の浜に住む妻子のもとへ行き自分が使っていた蓑笠を手向けるよう伝えてほしいと頼みます。
 僧が妻子を訪ねて供養をはじめると、在りし日の猟師の亡霊が姿を現しました。明けても暮れても鳥を獲ることを生業として、気がつけば唯一の愉しみとして殺生に夢中になっていたことを告白し、往時の猟の凄惨な様を再現してみせます。地獄に堕ちた今は、かつて自分が殺した鳥たちに肉をついばまれ報いを受ける身。どうかこの苦しみから救ってほしい――。猟師の霊は消え、僧の耳には願いの声だけが残るのでした。

18日(金) 定例公演 午後5時30分

箕被

 連歌にうつつを抜かす夫が、連歌会の頭(主催の当番)に当たったと大喜びで妻に準備を命じます。妻は、暮らしが貧しくてそれどころではない、どうしてもというなら家を出ると言い、ふたりは離縁することに。離縁の際の「暇(いとま)のしるし」として夫から渡されたのは使い古した箕。頭にかぶり家を出ていこうとする妻に、夫が思わず連歌の発句を詠みかけると…。

松風

 西国行脚の僧が須磨の浦に立ち寄り、いわくありげな一本の松に目をとめます。それは、かつてこの土地に暮らしていた海女の姉妹、松風と村雨にゆかりの松でした。菩提を弔った僧は、ふたりの海女乙女と出会います。言葉をかわすうちに、ふたりは自分たちが松風、村雨の亡霊であることを打ち明けて、その昔、この地に蟄居した中納言・在原行平に姉妹で共に召された日々を懐かしく振り返るのでした。行平が都にもどったあと、形見に残された烏帽子と狩衣を手に取って懐かしさに涙した記憶。語るうちに思いが募った松風の亡霊は、形見の装束を身に着け、松に行平の面影を重ねて狂乱の舞を舞いはじめます。妄執に苦しむ姉妹の姿は、夜明けとともに消え、浜には松を吹き渡る風の音だけが残るのでした。

21日(月)~25日(金) 能楽鑑賞教室 午前11時/午後2時

寝音曲

 太郎冠者が謡っているのを偶然耳にした主人。ぜひちゃんと聞きたいものだと、太郎冠者を呼び出して謡うように命じます。これからたびたび謡わされることになってはたまらないと思った太郎冠者は「酒を飲み、妻の膝枕がなければ謡えない」と嘘をつきます。ならば酒を飲ませよう、自分の膝も貸そうと主人にいわれ、仕方なく太郎冠者は主人の膝枕で謡い出したのですが…。

殺生石

 僧・玄翁が旅の途中に下野の那須野ヶ原を通りかかると、飛び交う鳥たちがとある巨大な石の上空でパタパタと落ちるのを目撃します。そこに現れた土地の女は、これは人畜の命を奪う恐ろしい石だと教えます。その昔、女官に化けて帝に仕え国を乗っ取ろうとした化生けしょうの者が、正体を見破られ命を奪われた恨み。その執心が凝り固まった石で、実は自分こそがその石魂だと明かして、女は石の中に姿を隠してしまいます。
 玄翁が殺生石を供養して引導を授けると、石が真っ二つに割れ、中から姿を現したのは狐の姿をした化け物。インド、中国、日本をまたにかけ、悪事の果てに、この地で命を落とすまでの経緯を語ります。けれど玄翁のありがたい供養を受け、この後はもう決して悪さをしないと誓うのでした。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

●6月公演発売開始日
  • ・電話インターネット予約:5月8日(土)午前10時~
  • ・窓口販売:5月9日(日)午前10時~

  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/