国立能楽堂

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【千駄ヶ谷だより】5月公演が間もなく発売開始です!

 間もなく発売開始となる、国立能楽堂5月主催公演のラインナップをご紹介いたします。新緑いよいよ眩しい季節、皆様のご来場をお待ちしております。
 国立能楽堂では文化の祭典「日本博」の総合テーマによせて、≪日本人と自然≫をテーマに作品を特集します。5月は「草木成仏」として、植物や生物の精を主人公とした作品を中心に取り上げます。
 なお、昨年中止となりました公演を、一部変更して開催いたします。

8日(土) 普及公演  午後1時

 家に奇妙なきのこが生えてきて困った男。山伏にきのこ退治を頼んで祈祷がはじまりますが…。常識を打ち破るまさかの展開にご期待を!

 加賀の国から善光寺に向かう僧が、藤の名所の多祜(たご)の浦に立ち寄ると、波打つような藤が今を盛りと咲いています。僧がこの浦の藤を詠んだ古歌を口ずさむと、里の女が現れ、もっと藤の美しさをたたえる古歌があるものをと咎めます。女は藤の花の精だったのです。
 夜になり、浦にとどまる僧のもとに藤の花の精が現れます。四季の移ろいのなか、過ぎ行く春を惜しむ藤の美しさ。一木一草までもが成仏できると説く仏法のありがたさ。喜びを歌舞に託して、藤の精は晩春の夜明けの光のなかに消えていくのでした。

12日(水) 定例公演  午後1時

孫聟

 今日はめでたい聟入り(結婚後、聟がはじめて舅の家を訪れ挨拶をする儀式)の日。舅は、なにかにつけて口を出したがる祖父(おおじ)を外出させて、その間に祝儀を済まそうとするのですが、それを知った祖父は大変なご立腹。しかたなく祖父も出席することになりますが…。つつがなく聟入りは執り行えるでしょうか?

六浦

 山々が紅葉する相模国六浦の称名寺。旅の僧が立ち寄ると、1本だけ紅葉していない楓が目に留まります。現れた里の女は、かつて鎌倉の中納言・藤原為相(ためすけ)がここを訪れた時、他に先駆けて1本だけ紅葉していたこの楓を和歌に詠んだこと、喜んだ楓は誉を得た上は身を引くことが天道(自然の道理)と心得て、以来、常盤木(ときわぎ=常緑樹)になったことを語ります。そして自らがその楓の精だと打ち明けて姿を消します。
 夜になり、ふたたび僧の前に姿を現した楓の精は、草木国土悉皆成仏を説く仏徳をたたえ、舞を舞うのでした。

21日(金) 定例公演 午後5時30分

蝸牛

 長寿の妙薬「蝸牛」を採ってくるように命じられた太郎冠者。蝸牛を知らない太郎冠者は、「竹藪にいて、頭が黒く、腰に貝をつけ、ときに角を出す」と主人から教えられた特徴をたよりに、竹藪に分け入ります。すると、そこには眠り込んでいる山伏がいて…。

西行桜

 洛西・嵯峨野に暮らす西行は、庵の庭で花の見ごろを迎えた老木の桜をひとり静かに楽しもうとしています。そこに、桜の評判を聞きつけた下京の者たちが連れだって花見におしかけてきます。しかたなく西行は人々を庭に迎え入れますが、桜のせいで隠遁の愉しみを邪魔されたことを残念に思い、その美しさは愛でるに値すると同時に「桜の咎」でもある、と歌を詠みます。
 夜になると、桜の木陰から老人が現れます。「憂き世の出来事をどう受け止めるかは人の心の持ちよう。花の罪ではない」と西行に訴えるその老人は老桜の精でした。
 小書「素囃子」により、序ノ舞がイロエ(静かに舞台をひと周りする働事)に替わり、簡潔な動きのなかに過ぎ行く春の夜の名残を惜しむ心象風景を描き出します。

26日(水) 狂言企画公演 午後2時/午後6時

 山からもどってきた弟の様子がおかしいので、兄は山伏に治療を頼みます。祈祷をはじめると弟は「ホホン」と不思議な声をあげ、どうやら梟が憑りついているようです。山伏がさらに懸命に祈ると、今度は梟が兄にも憑りついて…。

 善光寺詣まいりに向かう僧が、上松の里にやってくると、近くの松の木に『源氏物語』の空蝉が詠んだ歌の短冊がかかっていることに気づきます。あたりの人に聞くと、昨年の夏、烏に喰われてしまった蝉を憐れんでかけた短冊だと言います。僧が供養に経を唱えると、蝉の亡霊が現れて…。
 夢幻能の様式に倣った作品です。僧の弔いで、蝉の亡霊はどんな成仏を遂げるのでしょうか?

 清流・手取川のほとりで鮎を釣って暮らす才助は、人の顔を見ると人柄や将来を見通せる不思議な力をもっています。ある日、才助は、小吉という男を助けて、町の大きな宿屋に雇ってもらうよう世話をします。小吉はとんとん拍子に出世して、ついには宿屋の入り婿に。噂を聞いた才助がある頼みごとをしに田舎から訪ねて行くのですが…。
 作家・池澤夏樹の脚本、野村萬斎の演出・補綴で、平成29年に国立能楽堂が委嘱制作した新作狂言の再演です。

29日(土) 特別公演 午後1時

半蔀

 夏の終わりの京都紫野・雲林院。夏安吾(夏籠り)中の僧が、仏に献じる花を立てて供養していると、里の女が夕顔の花を持ってやってきて、五条あたりに住む者だと名乗って花影に姿を消しました。
 僧が五条のあたりを訪ねて行くと、雑草が生い茂る家の蔀戸をあげて女が現れます。女は、夕顔の花を縁に光源氏と出会った“夕顔の女”の亡霊でした。
 冒頭、生花による立て花を舞台に登場させる「立花」の小書での上演です。

蚊相撲

 世間で流行している相撲に興味を持った大名が、相撲取りを雇うことにします。人材探しを命じられた太郎冠者が街道で張っていると、蚊の精が通りかかります。正体を知らない太郎冠者は、奉公したいという蚊の精を連れて帰ってしまい…。

 神泉苑に行幸した帝は、池の白鷺を捕らえるように命じます。蔵人が近寄ると、鷺は驚いて飛び立ちますが、「勅諚」だと呼びかけると、神妙に羽を垂れ地に伏せました。捕らえた鷺を御前に奉ると、帝は喜んで、蔵人と鷺に五位の官位を授けます。鷺は感謝して御代を寿ぐ優美な舞を舞い、やがて放たれて空高く去って行きました。
 清浄なるものの象徴として描かれる鷺は、直面に白一色の装束で、元服(成人)前の少年と還暦を過ぎた役者のみに舞うことが許されている作品です。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

●5月公演発売開始日
  • ・電話インターネット予約:4月8日(木)午前10時~
  • ・窓口販売:4月9日(金)午前10時~

  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/