トピックス
【9月文楽】好評上演中、20日まで!(舞台写真あり)
9月文楽公演が3日(土)に初日を迎えました。
初代国立劇場さよなら公演の幕開けを飾る今回は、国立劇場が取り組んできた“通し上演”や“稀曲の復活”といった構成を盛り込んで、記念公演にふさわしい充実した企画をお届けしています。
舞台写真とともに、みどころをご紹介いたします。
【第一部】
『碁太平記白石噺』(ごたいへいきしらいしばなし)
仇討物の名作を第一部と第二部にまたがって、通しでご覧いただきます。
宮城野・おのぶ姉妹の話がお馴染みの本作ですが、その背景は徳川幕府に反逆した由比正雪の乱をモチーフとして、南北朝時代に設定を移して書かれた、スケールの大きな物語です。
第一部ではその壮大な物語を存分にお楽しみいただくため、事件の発端から上演いたします。
昭和46年(1971)以来、51年ぶりの復活となる「逆井村の段」が目玉です。
奥州白坂宿(福島県)近くの逆井村で、百姓たちが田植えに励んでいます。
百姓の与茂作は、代官・志賀台七が田んぼに隠した天眼鏡を見つけてしまい、台七によって滅多切りにされてしまいます。
やってきた与茂作の娘・おのぶは、庄屋の七郎兵衛とともに台七を責め立てますが、言いくるめられ、 涙の陰で父の敵討ちを心に誓うのでした。

『碁太平記白石噺』田植の段

『碁太平記白石噺』田植の段
与茂作の家では、女房のおさよが病を患って床に臥しています。そこには、足を痛めたという金江谷五郎が寝泊まりしていました。
二人で会話をするうちに、谷五郎の父と与茂作が同じ主に仕える家臣であったこと、そして谷五郎が姉娘おきのの許婚であったことがわかりますが、おきのが吉原へ奉公に出ていることをどう伝えようかとおさよは頭を悩ませます。
そこへおのぶたちが与茂作の亡骸を連れて帰ってきます。与茂作の死を知って取り乱したおさよは、七郎兵衛の話から、谷五郎が犯人ではないかと言い出します。

『碁太平記白石噺』逆井村の段
一家は、祝いの酒を買って帰ってきた谷五郎へ襲い掛かりますが、とあることから台七が犯人であることが発覚します。忽然と現れた宇治兵部助の言葉により、台七を生かし、与茂作の娘たちの敵討ちを助け、南朝再興の大志を遂げることにします。谷五郎は父の名を継いで勘兵衛正国となり、一同は再会を期して別れます。

『碁太平記白石噺』逆井村の段

『碁太平記白石噺』逆井村の段
【第二部】
『寿柱立万歳』(ことぶきはしらだてまんざい)
第二部は、“新たな国立劇場”に向けて、おめでたい演目で幕を開けます。
“柱立”とは家屋を建てる際に初めて柱を立てる儀式のことを指します。
太夫と才三が小鼓と扇を片手に、家々の繁栄を祈りながら賑やかに舞い、いよいよ建て替えに向かう国立劇場の前途を祝します。
『寿柱立万歳』
『碁太平記白石噺』
第一部に続いて物語の舞台を江戸に移し、チャリ場(滑稽な場面)として有名な「浅草雷門の段」と、吉原の風俗が生き生きと描かれる「新吉原揚屋の段」の上演です。
観音詣での人々で賑わう浅草雷門。豆蔵(大道芸人)のどじょうが手品を披露しています。
おのぶは吉原にいる姉を探し、はるばる奥州から旅をしてきました。田舎から出てきたばかりのおのぶは、金貸しの観九郎に言葉巧みに騙されますが、茶屋の亭主・惣六に助けられます。
純朴なおのぶと、腹黒い勘九郎の対比が鮮やかに描かれます。
『碁太平記白石噺』浅草雷門の段
おのぶを助けるために惣六が手渡した大金で、観九郎は酒屋へ向かいます。観九郎から金を借りていたどじょうは、地蔵になりすまし、酔った観九郎から大金や借金の証文を巻き上げます。チャリ場として人気の高い場面です。
『碁太平記白石噺』浅草雷門の段
吉原で全盛を誇る傾城・宮城野の部屋に、惣六がおのぶを連れてきました。お互いに姉妹だと気づいた二人は、久しぶりの再会を喜びます。
しかし、宮城野は与茂作の一件と、間もなく母も病死したことを聞くと崩れ落ちます。
宮城野は泣き伏せ、おのぶも戸惑いますが、気丈な姉妹はすぐに立ち上がり、父の敵を討つべく吉原を抜け出すことを決意します。
『碁太平記白石噺』新吉原揚屋の段
姉妹の話を立ち聞きしていた惣六は、姉妹の無謀をたしなめ、後ろ盾になると申し出ます。姉妹は、今は耐え忍んで時節を待つことにし、宮城野は傾城の勤めへ出ていくのでした。
『碁太平記白石噺』新吉原揚屋の段
【第三部】
『奥州安達原』(おうしゅうあだちがはら)
陸奥国(東北地方東部)を舞台に、源頼義・義家親子に滅ぼされた安倍頼時の遺子である安倍貞任・宗任兄弟が、安倍家再興と奥州独立を目指すという壮大な物語です。
京の七条河原、朱雀堤では、盲目の袖萩と娘のお君が粗末な暮らしをしています。袖萩は浪人と恋に落ちて身ごもったため、両親に勘当されていました。ある時、偶然に父である平傔仗が通りがかり、家来から報告を受けて先を急ぐ傔仗を、袖萩はお君に手を引かれながら追いかけます。

『奥州安達原』朱雀堤の段
皇弟・環の宮が失踪し、守役として責任を問われた傔仗は、主を失った御殿を、妻の浜夕と共に守っています。そこへ、娘の敷妙が夫・義家の使者として訪ねてきて、環の宮が見つからなければ敵にならざるを得ないと伝えます。やがて義家も現れ、環の宮誘拐の犯人として安倍貞任・宗任兄弟が浮かび上がります。

『奥州安達原』敷妙使者の段
そこへ、桂中納言則氏がやってきます。義家は貞任・宗任兄弟の手がかりを得るため、奥州から連行した南兵衛を詮議します。則氏によって南兵衛が宗任であることが断定され、則氏は傔仗へ切腹をにおわせて立ち去ります。頼義が奥州討伐の際に掲げた白旗と、頼時が頼義に放った矢の根(鏃)が物語の鍵を握ります。

『奥州安達原』矢の根の段
夕暮れ時、袖萩とお君が御殿へたどり着きます。対面を拒む両親に対し、袖萩は祭文に託して親不孝を詫びます。雪の降りしきる中での袖萩の祭文は、涙を誘う名場面です。

『奥州安達原』袖萩祭文の段
袖萩が持っていた書状から、袖萩の夫が貞任であることがわかり、物語はクライマックスへと向かいます。
則氏の言葉を汲んだ傔仗は切腹し、袖萩も懐剣で胸を突きます。それを見届けて立ち去ろうとする則氏でしたが、義家はすでに則氏の正体を見抜いていたのです。
息をもつかせぬ展開の後、勇壮な段切りを迎えます。

『奥州安達原』貞任物語の段
義家の家臣・志賀崎生駒之助と傾城恋絹の夫婦が薬売りに扮し、環の宮捜索のために奥州へ向かう姿を描いた道行で幕切れとなります。

『奥州安達原』貞任物語の段
感染症対策を徹底してご来場をお待ちしております。
チケット好評販売中
国立劇場チケットセンターはこちら

【関連リンク】豊竹咲太夫、鶴澤清治、吉田和生、桐竹勘十郎が思いを語りました!