国立劇場

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【9月文楽】豊竹咲太夫、鶴澤清治、吉田和生、桐竹勘十郎が思いを語りました!

令和4年9月文楽公演は、“未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演”の第一弾として開催しています。
第一部、第二部では『碁太平記白石噺 (ごたいへいきしらいしばなし)』を上演。第二部では、新たな国立劇場の建て替えに向けてのスタートを寿ぐ演目『寿柱立万歳 (ことぶきはしらだてまんざい)』も上演しています。また、第三部では時代物の大作『奥州安達原 (おうしゅうあだちがはら)』を上演しています。
公演に先立ち、今の文楽を牽引する豊竹咲太夫、鶴澤清治、吉田和生、桐竹勘十郎が、公演にかける思い、国立劇場の思い出などを語りました。


(前列左より)豊竹咲太夫、鶴澤清治(後列左より)吉田和生、桐竹勘十郎

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豊竹咲太夫


昭和41年(1966)の国立劇場の“こけら落とし”の時に、咲太夫を襲名いたしました。それから今日までこの国立劇場に育てていただいたようなものでございます。国立劇場も今年で56年、私も咲太夫になって56年ということで感慨深いものがございます。
できた当時はなかなか集客が悪くて、客席に100人いるかいないかだったこともありましたが、皆さんが努力して、今のようにお客様が増えてまいりました。小劇場は文楽にとって大変頃合いが良い劇場でございまして、客席も500くらいと文楽の上演にとってはとても良い大きさだと思います。とにかく思い出深い劇場です。
私は第二部『碁太平記白石噺』浅草雷門の段を勤めます。“どじょう”が面白おかしく活躍する、“チャリ場”というところでございます。一生懸命やらせていただきます。 次代の劇場には、今の良さを維持していただき、新しい文楽の息吹となる新作もできるような劇場になってもらえればありがたいなと思っております。




鶴澤清治


国立劇場の開場前に、特別公演のような「邦楽鑑賞会」がございまして、私の師匠の(十代)竹澤弥七ら、たくさんの邦楽界の方々がご出演なさっているので、「これは劇場も新しいし、大変なお客さんが来られるだろうな」と思っていたところ……ガラガラでございました。それから文楽公演も始まり、しばらくは入りの悪い状態が続きましたが、劇場の方のお力添えなどもあって、最近は切符が取れないという舞台もございまして感謝しております。
今月は第三部『奥州安達原』袖萩祭文の段をやらせていただきます。何度も勤めておりますが、いつも頭に浮かぶのが、大劇場で十七代目中村勘三郎さんがなさりました素晴らしい舞台でございます(昭和53年4月 第92回歌舞伎公演『奥州安達原』)。何度やっても難しい曲で、良いというところまでなかなか行きませんが、頑張ってやらせていただきます。
小劇場は、非常にやりやすいと言いますか、音の響きも個人的にすごく好きです。正面でやらせていただいても良いですし、こちらから客席を見た感じも、ずいぶんしっかりしているので、ぜひともこれに近い劇場をこしらえていただけるとありがたいと思っております。




吉田和生


私が研究生で入った後、師匠の吉田文雀に入門したのが昭和42年ですから、ちょうどこの劇場と同じくらいの年数でやってきております。まさか私たちが人形遣いをしている間に国立劇場が建て替えになるとは思っていませんでした。入門した頃、師匠が「びっくりするすごい劇場やで」とおっしゃっていて、初めて来たときに、桜田門の方から見上げると、当時最高裁がなかったものですから、国立劇場の建物がすっと見えたんですよね。その姿に「すごいなぁ」と感動したことをよく覚えております。
国立劇場では一時からお客様に大勢来ていただきまして、ある時、当日券をお客様に頼まれ、私も1時間前にチケット売り場に行って並んでおりましたところ、知っているお客様に声をかけていただき「当日券は私たちも皆さんと同じように取らせていただいております」と、ご説明したこともございました(笑)。
今月の芝居は第二部『碁太平記白石噺』で宮城野を勤めさせていただきます。傾城の格好で非常に衣裳も立派なお役です。最後まで一生懸命頑張ってお客様に喜んでいただきたいと思います。
国立劇場とともに育ってまいりましたから、外観も貫禄があって、とても良い小屋だと思っております。新しい国立劇場も、古典のお芝居ができる劇場だと、一目でわかるような建物になればと思っています。




桐竹勘十郎


私が文楽に携わった昭和41年に国立劇場が完成いたしました。最初の年は中学2年生で学校がございまして、来ることができませんでしたけれど、その次の年に初めて東京公演にまいりました。まだ都電が走っておりまして「三宅坂」と言うところで降りて通った記憶がございます。
本当に立派で、見たことのないくらいの広い舞台で奥行きもございますし、間口も広く、客席も素晴らしいので、「大劇場では野球できるなぁ」と冗談を言っておりました。そして何より当時の最高の舞台機構でしたので、それまで行ったことのある劇場とは全然違う、いろんな演出ができる劇場だなと、そんな思いが当時ございました。
この劇場の思い出の一つとして、国立劇場開場三周年記念で『椿説弓張月』という歌舞伎を上演していた時、演出で来られていた三島由紀夫さんと偶然階段の傍でお目にかかったことがありました。スタッフの皆さんと階段を上がる「カンカンカン」という靴の音が今でも耳に残っております。
二代目の劇場は、できうる限りの舞台機構を設けて、新しいスタイルの文楽ができるようになってほしいと思います。また、お芝居は非日常を楽しむところですので、ロビーであったり、お客様が休憩したり食事するところも考えて、お客様に愛される劇場になって欲しいですし、我々出演者とお客様が触れ合えるようなスペースを設け、文楽の人形を触ったりしていただけるような機会を増やすことができればと願っています。

9月文楽公演は20日(火)まで!
チケットは好評販売中です。
国立劇場ならではの充実した舞台をぜひお楽しみください。





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