歌舞伎公演ニュース

2023年3月3日

初代国立劇場さよなら公演

【3月歌舞伎公演】

『一條大蔵譚』『五條橋』

好評上演中 


3月27日(月)まで!

(舞台写真あり)

 〈初代国立劇場さよなら公演〉3月歌舞伎公演は、「歌舞伎名作入門」と銘打ち、 歌舞伎鑑賞教室とは異なる一般の方向けの企画で、歌舞伎を代表する名作や名場面をご堪能いただきます。
 第三回となる今回は、義太夫狂言の名作として知られる《鬼一法眼三略巻》より『一條大蔵譚』の「曲舞(くせまい)」と「奥殿」、『五條橋』を上演しています。平家が全盛を誇る世に、源氏再興に心を砕く人々の物語が繰り広げられます。
 舞台写真とともに、見どころをご紹介します。

◆◆◆

 はじめに「入門 源氏の旗揚げ」と題して、物語の背景や見どころをわかりやすくご案内します。片岡亀蔵による軽妙でテンポの良い解説をお楽しみいただいた後、いよいよ『一條大蔵譚』、『五條橋』の上演です。


「入門 源氏の旗揚げ」
ご案内 片岡亀蔵


◆『一條大蔵譚 ―曲舞・奥殿―』

 時は平安時代末期。源氏の総大将・源義朝が平治の乱で平清盛に敗れて討たれ、平家全盛の世を迎えます。義朝の妻・常盤御前は、牛若丸(後の源義経)ら我が子の命を救うため、敵の清盛の側室となり、その後、阿呆と言われる公家の一條大蔵卿に嫁がされます。大蔵卿は、源氏の一族でありながら、源平の対立には無関心で、道楽の狂言に明け暮れています。
 ある晩、大蔵卿の館に、奥方となった常盤御前に何か計略があるのではないかと疑う清盛の家臣・播磨大掾広盛(嵐橘三郎)がやって来て、一條家の乗っ取りを企む家老・八剣勘解由(片岡亀蔵)と示し合わせ、大蔵卿殺害を図ります。一方、狂言に夢中になり、呆けたように舞う大蔵卿(中村又五郎)は、二人に命を狙われますが……!
 「曲舞」では、大蔵卿が浮世離れした公家ぶりを見せるとともに、広盛と勘解由を翻弄する様子が面白く描かれます。


『一條大蔵譚』「曲舞」
[左より]
鬼次郎女房お京(中村種之助)、
八剣勘解由(片岡亀蔵)、
一條大蔵卿長成(中村又五郎)、
播磨大掾広盛(嵐橘三郎)ほか

 続いて「奥殿」。義朝の旧臣・吉岡鬼次郎(中村歌昇)と、その妻で弁慶の姉・お京(中村種之助)は、源氏再興のため、常盤御前の本心を探ろうとしています。鬼次郎は、先に大蔵卿の館への潜入に成功したお京と落ち合い、常盤御前の様子を尋ねます。お京によれば、常盤御前は、夫・義朝の死や存亡の危機にある源氏の境遇を嘆く気色もなく、毎晩のように楊弓に打ち興じているとのこと。鬼次郎は憤慨し、お京の案内で常盤御前のいる奥殿へと忍び込みます。


『一條大蔵譚』「奥殿」
吉岡鬼次郎(中村歌昇)、
鬼次郎女房お京(中村種之助)

 奥殿では、常盤御前(中村魁春)が今宵も楊弓に耽り、矢を的中させて嬉々としています。その様子を窺っていた鬼次郎は堪え切れずに飛び出し、常盤御前をなじります。旧臣に弓で打ち据えられた常盤御前は……!


『一條大蔵譚』「奥殿」
常盤御前(中村魁春)

 常盤御前が敵将に身をまかせた経緯と胸の内を明かす場面は、大きな見どころの一つです。鬼次郎夫婦の忠義一途ぶりとともに、強い決意を秘めた常盤御前の気品が浮かび上がります。


『一條大蔵譚』「奥殿」
吉岡鬼次郎(中村歌昇)、
勘解由妻鳴瀬(中村梅花)、
八剣勘解由(片岡亀蔵)

 かねてから平家と内通していた勘解由は、常盤御前と鬼次郎夫婦のやり取りを盗み聞き、事の経緯を清盛へ報告しようとします。妻の鳴瀬(中村梅花)の制止を振り払うと、立ちはだかる鬼次郎と激しく刃を交えます。
 果たしてその時、大蔵卿は……!?


『一條大蔵譚』「奥殿」
一條大蔵卿長成(中村又五郎)、
常盤御前(中村魁春)

 公家言葉を織り交ぜながら竹本の演奏に乗って語る台詞術や、一瞬にして衣裳を替える〈ぶっ返り〉など、時代物らしい見どころに溢れた舞台です。意外な展開を遂げる物語の全容は、ぜひ劇場でお楽しみください!

◆◆◆

◆『五條橋』

 源義朝と常盤御前の子・牛若丸(後の源義経)は、平治の乱で平清盛に敗れた父が討たれた後、母の懸命の嘆願により生き延びます。鞍馬山で修行を積んだ牛若丸は、兵法家・鬼一法眼から虎の巻を授かり、平家打倒に燃えています。
 幕が開くと、舞台は京の五條橋。源氏再興を志す牛若丸(中村種之助)は、頼りになる味方を集めるために夜な夜な通行人の腕を試しています。


『五條橋』
牛若丸(中村種之助)

 五條橋に曲者が現れるとの噂を聞きつけて、怪力無双の荒法師・武蔵坊弁慶(中村歌昇)がやって来ます。自慢の大長刀で襲い掛かる弁慶に、牛若丸は……!


『五條橋』
武蔵坊弁慶(中村歌昇)

 ご存じ牛若丸と弁慶の逸話を題材にした名場面。浮世絵から童謡まで幅広く親しまれ、人々の想像を掻き立ててきた二人の出会いが、眼前で華やかに繰り広げられます。中村歌昇・種之助の兄弟が、息の合った美しい踊りを溌剌と見せます。


『五條橋』
武蔵坊弁慶(中村歌昇)、
牛若丸(中村種之助)

◆◆◆

 わかりやすい解説付きでお楽しみいただける「歌舞伎名作入門」。
 大蔵卿を当たり役とした二代目中村吉右衛門の薫陶を受けた又五郎が、吉右衛門が望んでいたという「曲舞」の上演とともに、大蔵卿に初役で挑み、話題を呼んでいます。また、常盤御前を度々勤めて定評のある魁春が、舞台に一層の品格を加えています。さらに、又五郎の長男・歌昇と次男・種之助の兄弟が鬼次郎夫婦と弁慶・牛若丸を勤めるなど、充実した配役でご堪能いただけます。
 春のひと時、古典歌舞伎の醍醐味に溢れた名作を、どうぞお見逃しなく!

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