国立劇場

【研修生募集】研修講師インタビュー 竹本葵太夫師

 国立劇場では、伝統芸能の伝承者を養成するため、将来舞台で活躍する志を持つ歌舞伎俳優、歌舞伎音楽(竹本・鳴物)及び大衆芸能(寄席囃子)の研修生を募集しています。
 募集にあたり、指導講師の方々を、連載でご紹介します。

第2回 竹本葵太夫(たけもとあおいだゆう)師[歌舞伎音楽(竹本)講師]

 竹本葵太夫先生は一般家庭に生まれ、高校卒業後に上京し国立劇場の第3期竹本研修生になりました。研修修了後は歌舞伎の舞台で活躍されるほか、平成21年からは竹本研修講師も務められ、後進の育成にも熱心に取り組んでいらっしゃいます。令和元年には、これまでの功績が認められ、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。認定書の交付式を終えたばかりの葵太夫先生にお話をうかがいました。

竹本への一途な思い
Q. このたびは竹本の重要無形文化財の指定、また人間国宝としての認定、誠におめでとうございます。葵太夫先生の認定を機に、歌舞伎音楽としての「竹本」が注目されることは歌舞伎界全体としても嬉しいニュースですね。
A.私は現在59歳で、伝統芸能の世界では若輩の世代です。65歳から70歳くらいの方が認定されることが多いので意外でした。私は指導者に恵まれて、師匠方や先輩方からいろいろ教えていただきました。また、起用してくださる俳優の方がたにも恵まれました。竹本の芸は独りよがりではだめで、歌舞伎という仕組みの中で他の要素と絡み合っていかないといけません。そこに気を付けて修業してきました。

Q. まずは葵太夫先生が竹本の道に進まれた経緯を教えてください。
A. 私は芸事とは関係のない一般家庭で生まれました。故郷は伊豆大島で、近所に劇場のない環境で育ちました。テレビで歌舞伎中継を観る機会があり、面白そうだったので、小学校6年生の時に東京の親戚に歌舞伎座へ連れて行ってもらいました。歌舞伎座に足を運んでいるうちに、竹本の三味線の響きがパワフルで面白いと感じるようになりました。
 そんな時に、竹本の後継者不足が進んでいるため、竹本のプロを育てる研修が国立劇場で開講されるという記事を読み、歌舞伎の世界で働きたいと思い、義太夫が好きだった私は、研修生を目指すようになりました。この頃ちょうど竹本雛太夫(ひなたゆう)師匠が竹本で初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。自分がなりたいと思っている職業の方がそのように活躍されているのを知り、励みになりましたし、竹本を仕事にしたいと家族を説得する際に雛太夫師匠のことを話しました。

Q. 鳴物や長唄など、歌舞伎音楽の他のジャンルに進むことは考えなかったのですか?
A. 中学生の頃から一途に竹本志望でした。高校在学中は女流義太夫の竹本越道(こしみち)師匠のもとでお稽古していただいたり、学校の長期休暇中に国立劇場の臨時聴講生として研修を受けたりしていました。

Q. 具体的に竹本のどこが面白いと思って、竹本の道を志されたのですか?
A. 竹本は感情をこめて語り、歌舞伎俳優と一体化して芝居を盛り上げますが、そこに刺激されました。観客として歌舞伎を観ていた頃から感銘を受けてましたから、「この場面でこうすると盛り上がる」という感覚が自分の中にあります。自分が感動しないと、人を感動させることはできません。芝居をよく観てツボを心得るよう、竹本の若手には言っています。

俳優と息を合わせて感動を生み出す
Q. 竹本の仕事をしていて、嬉しいことは何ですか?
A. まず、先輩方から教えていただいたことができるようになることが嬉しいです。そうすると、習っていない部分や新作など、他のものも工夫してできるようになっていきます。それが俳優の演技と合って、お客様が感動してくださり、さらに次の舞台でも起用されれば、大変嬉しいです。

Q. 就業したら、舞台で演奏するだけではなく、楽屋で先輩方のお手伝いをすることも大切なお仕事ですね。
A. 竹本は俳優に合わせるものですから、同じ芝居でも配役が変われば、その俳優に合わせていかなければなりません。そのため、まわりの状況に気付けるようにならないといけません。楽屋では、お茶出し、着替えのお手伝いなどをしますが、こういったことが上手くできるようになると、舞台にも応用できるようになっていきます。気働きが大事です。楽屋の用事に慣れるため、研修生にも着替えの手伝い等をさせるようにしています。

Q. 楽屋の用事をこなすのも難しそうですね。
A. 私も師匠に教えていただいて身に付けていきましたから、最初からできなくても大丈夫です。失敗しても先輩が教えてくれるので、素直に受け止めて直していくことが重要です。

Q. 竹本の若手の方々とは、「音の会」(若手歌舞伎音楽演奏家の会)でプロモーションビデオを作製した際に、一緒に仕事をさせていただきましたが、チームワークが素晴らしかったです。(完成した動画はこちら
A. 楽屋の雰囲気が家庭的だから、協力して物事を進められるのだと思います。楽屋に良い風が吹くよう、私たちの世代は皆気を付け、積極的に若手と話をするようにしています。

演奏中の竹本葵太夫師(三味線・豊澤淳一郎師)

一生かけて修業できる、やりがいのある仕事です!
Q. 研修生に応募するにあたって、どのような資質が必要ですか?
A. 音感とリズム感があった方がよいです。それから、戯曲を読んで自分でイメージを作れるような演劇的要素も必要です。1~1.5時間声を出すことができる、正座ができるなどの身体的要素も大事ですね。また、周囲と協調できることが不可欠です。

Q. 研修生を目指す方にメッセージをお願いいたします。
A. 「自分のやりたいことをやって生活することができて、それが人からも認められる」というのはとても嬉しいことですが、竹本なら本人のやる気次第でこういった状況が実現できます。努力次第で自分の仕事が認められて、重要な場面に起用されたり、お客様に喜んでいただけたり、賞をいただけたりして、注目される機会があると思います。
 竹本はなかなか深いです。一生かけて修業できる、やりがいのある仕事です!

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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