芸術文化振興基金

全国共同制作オペラ 團伊玖磨歌劇『夕鶴』(新演出)

文化芸術振興費補助金助成事業令和3年度助成事業事例集

公益財団法人 東京都歴史文化財団(東京芸術劇場)
(助成金額:31,994千円)

©サラ・マクドナルド

活動概要

東京芸術劇場は2009年以来、11本のオペラ上演を、全国の他劇場と共に実施してまいりました(うち1本は再演のため助成対象外)。12本目となった歌劇『夕鶴』は、日本が世界に誇る随一のオペラ作品。多くのオペラファンが当作品に対して抱くノスタルジックなイメージを、日本演劇界の最前線を走る演出家である岡田利規が「過去の物語」としてではなく「今の物語」として捉え直し、全く新しい『夕鶴』を創出しました。岡田氏は、当公演の演出を評価され、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞いたしました(『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』と併せて)。

助成の意義

ハイクオリティな作品創造に欠かせない長期間の拘束に耐えうるギャランティを保障することで、稽古に先立ち2都市(熊本・東京)で行った10日間のワークショップの実現に繋がりました。これらは、出演者にとって作品および演出意図の理解度を深めることに貴重な機会となり、音楽的にも演劇的にもハイクオリティな作品に仕上げることができました。結果、初演となった東京公演は、岡田利規氏の読売演劇大賞優秀演出家賞受賞および音楽専門雑誌『音楽の友』誌上の企画「ベストコンサート2021」対象公演として、初めて選出されるに至りました。

また刈谷市総合文化センターは、本共同制作参加を機会に「アイリス少年少女合唱団」を設立。文化庁の冠のもと、全国規模の大きな公演であったことが、プロジェクト全体および公演への期待値を増大させることに繋がり応募が殺到。採用された約60名のうち、公演には選抜された14名のみの出演となったものの、先立つ形で「クリスマス・コンサート」を開催するなど、市民参加活動を積極的に展開しており、長期的に地域の芸術文化のハブとなる活動となることが期待されます。

加えて通常の演出では歌唱部分のみの出演となる児童合唱が、今回の演出プランでは、異なる役割を与えられたため、丁寧な演技指導が欠かせませんでした。演出の岡田利規氏や振付の岡本優氏、演出助手の生田みゆき氏など、俊英のアーティストたちが、各地に複数回赴き、直接演技指導を行うことで、将来の芸術文化の担い手を育てることにも寄与したものと考えられます。

今後の活動

新型コロナウイルス感染症の影響で全国の劇場の事業費が削減されるなか、単館では実現が難しいハイクオリティなオペラ作品の制作を、各地の劇場と共同で継続的に行ってまいります。また三大都市圏外の劇場へ積極的に声掛けをすることで、鑑賞文化の醸成や制作および舞台スタッフの育成に繋げ、国内各地の舞台芸術文化の成長に寄与していきたいと思っております。

公益財団法人 東京都歴史文化財団(東京芸術劇場)