芸術文化振興基金

天満天神繫昌亭 定席公演

文化芸術振興費補助金助成事業令和3年度助成事業事例集

公益社団法人 上方落語協会(助成金額:12,049千円)

活動概要

公益社団法人上方落語協会は、上方落語を主とする寄席芸能の普及と後世への継承を目的とし、公益法人として、広く庶民へ“上方落語”文化を届け、大衆芸能として気軽に楽しんでいただけるように、劇場運営から地域寄席、学校公演などに注力し、普及活動に努めている団体です。

協会理念遂行のため、2006年より運営する上方落語の定席「天満天神繁昌亭」にて、上方落語の通年公演を実施、同時に後世へ繋ぐための若手人材育成、継承・鍛錬の場として稽古場を提供、また上方落語を通して地域活性化の一助となるよう、地域の方とのつながりを大切にした関係構築に努めております。

本助成は、天満天神繁昌亭で行われている「定席公演」の活動活性化のため申請を行い、採択されました。

助成を受けて

天満天神繁昌亭開場時は、上方落語の定席が戦後60年以上存在しなかった経緯から、親睦団体の域を出ない協会の経営手腕が不安視されていました。ところが、潜在的な落語ファンや建設費をご寄付いただいた皆様はじめ、ニュースやマスコミそして口コミで話題になり興味を持っていただいた方など、多くの方にご来場いただき、思いのほか順調なスタートとなりました。さらにNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で注目され順風満帆かと思われました。

ところが、開場当時の話題一巡後のリーマンショック、東日本大震災、相次ぐ消費税率引き上げに加え、協会のマーケティング力不足などにより、集客率の低下が顕著となりつつありました。2019年には建物の大規模修繕工事に着手。公演形態の変更や指定席化などのリニューアル事業でなんとか下げ止まりの兆しもみられました。

そこで、赤字化への不安から脱却し、少しでも安定した劇場経営で、お客様サービスの向上、公演内容充実、人材育成を図れるよう、「文化芸術振興費補助金助成事業」の「舞台芸術創造活動活性化事業 大衆芸能」分野で助成申請することにしました。

ところが、2020年2月、新型コロナウイルス感染症対策による緊急事態宣言の発令により、4月から5月いっぱいにかけて繁昌亭は休館せざるを得ない状況に陥りました。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は劇場だけでなく、商店街の休業や時間短縮などに及び、不要不急の外出を控える状況にあった為、「繁昌亭へ行くことを家族に止められている」、「県境またぎに不安を感じる」などチケットを持っていても行けないという中高年層が多数おられました。国や自治体の要請に従い、客席を市松模様に距離をおいて座っていただき、検温・消毒など感染防止対策を徹底しても、感染者数増加とともに客足は落ち込むばかり。

Twitterなどで告知する際も、先行き不透明で「集客」という概念がマイナスに捉えられる中、「お待ちしております」や「来てください」などのワードが言いにくい状況が続いておりました。

そんな集客告知が非常に難しい中、制限要請解除後の久々の再開公演イベントや、9月の繁昌亭15周年記念特別公演、12月の大阪落語祭、オンライン配信など、コロナ収束後も見据えた事業・企画を打ってきました。

協会運営の繁昌亭昼席公演は、寄席文化をつなげるため、他の一般公演が採算面等を考え中止するなか、使命感と気概で要請解除期間は、出来る限り赤字でも公演を続けてまいりました。

2022年8月現在でも寄席を取り巻く環境は、決して好転しているとは言えない状況ではありますが、「舞台芸術創造活動活性化事業」の助成によりなんとか継続出来ています。

助成の意義

前記の通りコロナ前から、赤字不安からの脱却、安定した劇場経営でお客様サービスの向上、公演内容の充実を図る目的で、助成申請準備を進めていましたが、申請がコロナ蔓延と重なったことで、結果として、赤字幅が縮小するとともに、他の落語公演が開催困難な中でも寄席公演を継続して開催、それに伴い演者の出演機会が確保でき、職員及び実演家の励みにつながり、協会理念遂行の大きな助けとなっております。

おかげで通常公演のほか、15周年記念特別公演では天神橋筋商店連合会と協力して企画を行い、繁昌亭に来た後に商店街へ寄って帰るなど、コロナ禍で閑散としていた商店街も期間中は普段より賑わいがあったと報告を受けました。これを機により地域との連携意識が高まりました。

改めて、大衆芸能の存在意義、社会での役割を組織として認識し、上方落語の普及・発展に努め、微力ながら地域活性化の一助となるよう励んでまいります。

今後の活動

コロナ禍で、寄席運営は存続の危機に立たされておりますが、そんな中でも公益法人の責務として“お客様に娯楽を提供し続けること”が重要であるとの認識を新たにしております。

安心・安全に楽しめる場の提供、また来たいと思える番組作り、どこでも楽しめるライブ配信への取り組み、次代の落語界を担う人材の輩出など、従来の枠にとらわれない工夫で改善を続けていき、地域に根差した寄席小屋として継続して運営していく重要性を感じております。

大阪天満宮北側は、その昔「天満八軒」と称される、演芸場や芝居小屋の集まる地域だったとされております。日本一長いアーケード商店街「天神橋筋商店街」。天満の天神さんと庶民に親しまれる「大阪天満宮」。そんな庶民文化の発信地に位置し、大阪らしく市民の皆様の浄財で生まれた「天満天神繁昌亭」。近い将来、この辺りが「繁昌亭横丁」と呼ばれ、市民はもとより、観光のお客さまからも広く親しまれ、上方落語が庶民文化の一翼を担う大きな存在となるよう、積極的な事業展開を進めてまいりたいと考えております。

公益社団法人 上方落語協会

  • 住所〒530-0043
    大阪府大阪市北区天満4丁目12-7
  • TEL06-6354-7727
  • E-mail
  • Webサイトhttps://www.hanjotei.jp/