芸術文化振興基金

劇団俳優座公演No.347『戒厳令』

文化芸術振興費補助金助成事業令和3年度助成事業事例集

有限会社 劇団俳優座(助成金額:8,951千円)

活動概要

創立の1944年以来、千田是也、東野英治郎らが掲げた「汝は人間である、常にそのことを自覚して忘れるな」という理念を胸に創造活動を続けてきた劇団俳優座が、コロナ禍に投げかけた舞台はカミュの『戒厳令』。1948年に発表され、「ペスト」と名乗る男が町を戒厳令下に置き、人々を蹂躙していく中、それに挑む一人の青年との対決を描いた作品。善と悪の二極から見えてくるもの、あるいはそもそも善悪とは何かを問う、緊迫の120分。

助成を受けて

コロナ禍に「ペスト」を通してパンデミック下(或いは更なる恐怖、例えば独裁下)の行動を問う作品に取り組みながら、その準備段階から終幕まで、未知の感染症対策に苦労するというジレンマ。それは、この公演に限らず年間を通して厳しい問題。そのような現況で「感染症対策」が助成に含まれたことは大きな力になりました。のみならず、映像を駆使し、客席上方にも演技エリアを作り、実世界のコロナ、劇中のペストを二重に体験する演出等、舞台創造の向上に役立ちました。

助成の意義

やや俯瞰した視点から「意義」を捉えると、文化芸術の「公益性」に思い当たりますが、この点に関しては疑う余地はなく、俳優座黎明期に掲げ一度は実現した劇団・劇場・研究所の「三位一体」の思想はそれを体現したものであり、叶うならばそこから一歩踏み込んで「公共性」に寄与したいというのが理想です。

さて本公演に話を戻すと、助成を受けることで創造の具現化が大きく担保されています。また、チケットにおけるシニア、学生等のチケット料金設定にもその効力は大です。

今後、助成を更に有効に活用できるよう研究を重ねてまいります。

今後の活動

2024年2月に創立80周年を迎える俳優座は、新劇の旗頭として、その伝統の上に立脚しながら、同時に創立時から掲げている「自己革新」を注視しながら、作品創りに反映していきます。

具体的には、シェイクスピア、チェーホフ、ブレヒト等を現代の視点から捉えながら、洋の東西を問わない新鮮な作品の上演。また劇団内はもちろんキャスト・スタッフの育成にも力を注ぎ、さらなる前進に挑戦していきます。

有限会社 劇団俳優座