芸術文化振興基金

弘前バッハアンサンブル 定期演奏会

芸術文化振興基金助成事業令和3年度助成事業事例集

弘前バッハアンサンブル(助成金額:1,321千円)

弘前公演(弘前市民会館大ホール)

活動概要

弘前バッハアンサンブルはチェンバロ奏者・島口和子によって1985年に設立された声楽器楽混成アンサンブルです。バッハ時代の演奏様式を念頭においた器楽声楽混成の室内楽的編成をとり、合唱は複雑なポリフォニーラインの明晰な歌唱を徹底し、器楽オブリガートや独唱も団員が順に担うなど、緻密なバッハ演奏を目指して修練を積んで参りました。アンサンブルの中核楽器であるチェンバロは主宰者の実弟・島口孝仁氏製作によるものです。当アンサンブルのレパートリーはロ短調ミサ曲やマニフィカト、復活祭オラトリオ、昇天祭オラトリオ、クリスマスオラトリオなどの大曲と多数のカンタータ作品に広がり、地元弘前市のほか青森市や東京(カザルスホール及び紀尾井ホール)などで年数回、延べ195回の演奏会を継続して参りました。それらの公演は1996年に朝日新聞音楽欄で「バッハの心の叫び」「ひたむきで一途なバッハ」と絶賛されたのを皮切りに、最近では音楽専門誌「音楽の友」批評欄で「時と国を超え荘厳なバッハの魂を届けてくれた」「常に清新の気に満ち、強い訴え」「東北の深い懐に驚嘆」などと中央でも高い評価を得ており、四半世紀以上にわたって北東北の芸術文化活動に貢献し続けて参りました。

一方、私たちは世界基準による評価をも求め、1991年第1回渡欧公演、1993年アメリカ公演、1996年第2回渡欧公演、2000年第3回渡欧公演、2002年ロシア公演、2005年第4回渡欧公演、そして2015年創立30周年節目の年にバッハゆかりの地アイゼナハ“聖ゲオルク教会”や、バッハ自身が眠るライプツィヒ“聖トマス教会”の墓前において念願の“ミサ曲ロ短調”演奏が実現いたしました。ライプツィヒ聖トマス教会堂内での演奏は、我が国の音楽団体のみならず、世界中の音楽家が目標とする晴れの舞台です。それが日本人として異例の実現の運びとなったことは、私たちにとりましてこの上ない名誉なことでした。

2021年定期公演はコロナウイルス感染症拡大のため、弘前市民会館が9月中閉鎖、このため弘前公演を10月10日、東京公演も10月31日に延期して開催いたしました。

東京公演(紀尾井ホール)

助成を受けて

1か月延期となりましたが、弘前・東京ともに開催することができました。期日変更や地元メンバー(教育・医療関係が多く)が県外への移動を制限されたため、多くのメンバー変更があり、特に合唱はパート1~2名という少人数での演奏となりました。またコロナ禍ということで集客もままならず、経費負担増やチケット収入減により多くの負担増が予測されましたが、助成いただいたことで負担を軽減できました。特に東京公演では聴衆の皆様に開催をたいへん喜んでいただき、「このような状況ゆえ、弘前バッハアンサンブルの民衆の宗教心を表したようなバッハが心に響きます。素晴らしい時間を過ごさせていただきました。今後も期待します。」等多くのお褒めの言葉をいただきました。

助成の意義

精密かつ繊細なポリフォニーによって構成されたバッハ宗教音楽の演奏には高度に精緻な歌唱技術の鍛錬が必要でしたし、キリスト教義の枠を超えた宇宙的ともいえる宗教性を表現するには、言葉と音型の相互関係の解析や、短いモチーフに秘められた多彩な象徴的隠喩の理解が必須で、100曲を越すミサ曲やカンタータ研究の成果を舞台に乗せるには多大の労力を要しました。団員の多くは公務員や教職等に従事しております。週末はもちろん週日の余暇もすべてバッハに捧げた37年でありました。その結果、弘前・青森および東京での公演は「朝日新聞」や「音楽の友」「音楽芸術」の批評欄に毎年のように取り上げられるなど、地方の演奏団体として異例ともいえる高い評価を得るに至りました。しかし、演奏会の開催に必要な費用などは各団員自身の持ち出しに頼らざるを得ず、アンサンブルの継続が困難な事態に幾度も遭遇したというのが実情です。そんな環境にあってこの助成が私たちの活動の継続を可能にしたのだと思っております。

今後の活動

東北の片隅の地から世界レベルのバッハを発信し続ける私たちの活動は、私たちを取り巻く狭い東北地方社会に対してのみならず、我が国の古典音楽演奏界に対しても広範かつ多大なインパクトを与え得るものと自負しております。創立当初から“自分自身が高揚することの悦び”“メンバー全員ソリストであること”をモットーに続けて参りました。2020年は創立35周年を記念し、バッハを訪ねて最後の海外(ドイツ)公演を予定しておりましたが、直前にコロナウイルス感染症が拡大したため断念、33年継続してきました東京公演も中断せざるを得ませんでした。本当に残念でなりません。これからもバッハを演奏することにより、メンバー一人ひとりの人間性の向上を目指すとともに、地域のみならず日本の音楽文化の振興と普及に少しでも貢献できることを願っています。

弘前バッハアンサンブル

  • 住所〒036-8171
    青森県弘前市大字取上3丁目6-7
  • TEL0172-33-1539