芸術文化振興基金

卯辰山麓伝統的建造物群保存地区「伝統的建造物群等保存の記録」作成活動

芸術文化振興基金助成事業令和3年度助成事業事例集

卯辰山麓地区まちづくり協議会(助成金額:328千円)

10周年記念講演会 於妙応寺

活動概要

「卯辰山麓地区」は平成23年11月に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されたが、「寺町」という種別では、全国初の選定であった。

卯辰山は金沢城の北東にある標高141mの丘陵で、藩政期にはその麓を中心に60を超す寺社がおかれ、藩主一族と庶民の信仰の舞台であった。旧北國街道から卯辰山中腹に向かって伸びる藩政期からの細街路や町割が今も色濃く残っている。街路の突き当たりあるいは街路沿いに寺社が配され、伝統的な町屋と混然一体をなった特徴的な景観を残している。

「卯辰山麓地区まちづくり協議会」は、歴史ある町並みと、信仰や民俗文化にささえられたなりわいを貴重な歴史文化遺産として保存・継承し、その積極的な活用により住民意識の高揚と、個性豊かで創造性あるまちづくりに務めることを目的に、国選定と同時に発足した。

毎年、地区住民はもとより金沢市民にこの地域の歴史的価値を認識してもらうため、「寺院群巡り」を実施、ご住職に寺歴を伺い、堂内を拝観させていただいている。また、伝統的建造物の保存状態を知ってもらうために「修理修景事業見学会」を実施し、令和4年度からは、新たに「卯辰山麓の歴史を学ぶ会」の開催を予定している。

令和3年に国選定10周年を迎えるにあたり、100件を超える修理・修景工事の前後の状況写真、工事図面、工事概容など収集、集約した「伝統的建造物群等保存の記録」を作成するにあたり、芸術文化振興基金より助成を受けた。

寺院群を巡る会 於妙応寺

修理修景事業事例見学会

助成を受けて

卯辰山麓伝建地区は22ヘクタールもの広さがあり、小学校の校区も3校区にまたがっており、とりまとめに苦労している、また、37カ寺ある寺院は5宗派からなり、全寺院が協議会に加盟しているわけではなく、非協力的な宗派もあり、なかなか足並みがそろわない。

金沢市より活動費の50%の補助を受けているが、70万円を超える冊子の出版は荷が重く、金沢市の担当課より紹介され、助成を申請した。

助成の意義

本編140部は、公民館・小中学校・官公庁・他の伝統的建造物群保存地区に配布。一方、800部作製した概要版は会員・10周年記念講演会の参加者の他、伝健地区内の全住民に配布した。これにより、地区内でどのような修理が行われているか知ってもらうことができ、地域の財産である伝統的町並みの価値を再認識してもらえたと思う。

実は、当協議会の会員の大多数は伝建地区外の住民であり、「灯台下暗し」で、住んでいる住民が意外とその価値や魅力に気づいていない。「伝統的建造物群等保存の記録」が魅力再発見のきっかけになってもらえれば、10周年記念事業として大成功である。

文化とは人間の営みの継続であり、建造物にしろ信仰・民俗文化にしろ、一度破壊されてしまえば二度ともとに戻すことはできない。人の生き方の源泉、豊かなコミュニティ形成の土台であり、大切に守ってゆきたい。

今後の活動

財源が乏しいことから、令和4年度から伝建地区内とその周辺の飲食店・宿泊施設などの事業者を対象に賛助会員の募集を始め、3年後にはようやくWebサイトを立ち上げる目途が立った。これにより、HPやSNSなどを通じて広く会の活動を紹介することが可能となり、将来的には「Instagramフォトコンテスト」や「卯辰山麓検定」などを実施し、卯辰山麓地区の魅力と価値を、地区内住民・金沢市民はもとより全国に発信してゆきたい。

卯辰山麓地区まちづくり協議会

  • 住所〒920-0831
    金沢市東山2-14-59 妙応寺内
  • TEL076-252-3620
  • E-mail