芸術文化振興基金

オルタナティブ!小池一子展 アートとデザインのやわらかな連動

芸術文化振興基金助成事業令和3年度助成事業事例集

合同会社 コマンドA(助成金額:3,039千円)

「佐賀町」エリア『定点観測(林雅之撮影)』展示風景 Photo:Keizo KIOKU

活動概要

合同会社コマンドAは、旧千代田区立練成中学校を活用した新たな文化芸術の発信拠点創出を目的とし2008年に設立。2010年、民設民営のアートセンター「アーツ千代田 3331」を開館。「地域に開かれたアートセンター」として、芸術・文化に関する展覧会、催事、パブリックアート、教育普及活動、街づくり、地域活性化活動等の企画・制作を中心に多様な事業を展開。アーティストや地域住民など、あらゆる人が日常的に文化芸術に触れられる場を創出しています。(千代田区との契約満了により、「アーツ千代田 3331」は2023年3月31日閉館予定)

この度助成を受けた展覧会「オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動」は、日本で初めてのオルタナティブ・スペースを創設した小池一子の美術領域とクリエイティブ領域双方の仕事を紹介する展覧会です。小池は、1960年代以降の日本のクリエイティブ領域の黎明期を、コピーライター、編集者、クリエイティブ・ディレクターとして牽引し、80年代よりアートの現場でもその活動を展開してきました。新進作家を支える場として小池が開設したオルタナティブ・スペース「佐賀町エキジビット・スペース」(1983-2000)の姿勢は、同時代の社会に向けて実践的かつ純粋な思考への希望を示唆するものでした。

同展では、小池の仕事を「中間子」「佐賀町」と名付け、大きく2部構成で紹介。小池の現代美術への情熱を具現化させた作家の作品展示を軸に、コピーライト、編集、翻訳、キュレーションなどの小池の仕事を紹介しながら、領域を超えて、芸術家やクリエイターらの表現を裏方の立場で下支えする土壌を開拓した小池の仕事を総括するとともに、同時代の芸術家やクリエイターたちの軌跡にも迫る展示を行いました。

「佐賀町」エリア 展示風景 Photo:Keizo KIOKU

「中間子」エリア 展示風景 Photo:Keizo KIOKU

「無印良品」エリア 展示風景 Photo:Keizo KIOKU

助成を受けて

アーツ千代田 3331は、アーティストイニシアティブの観点により、民営企業が運営するオルタナティブなアートセンターです。そのため、主催展覧会の予算は、日々の事業収益から捻出し企画・実施しています。2020年から日本は、コロナ禍を契機とし経済的にも日常生活にも大きな変化を強いられ、既存の価値観や固定観念、長期的な計画や展望すら揺らいでいます。当館もその例にもれず、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて主要事業であるスペースレンタル事業の売上が大幅に減少し、展覧会予算も大きな見直しを余儀なくされました。

しかしながら、このような時代だからこそ「オルタナティブ」な姿勢を貫き、文化芸術の分野で黒子の立場で多彩な功績を残してきた小池一子の展覧会を実施することは、コロナウィルスという未曾有の危機を経験したアーティストや、文化芸術の世界でこれからも仕事を続けようとする人々、これから志す若い世代、そして愛好家・来場者に向けたエールと力強いメッセージになると考えました。“慣習的方法をとらない/新しい/別の可能性=オルタナティブ”な活動を生み出し続けてきた小池と、主催である合同会社コマンドA(3331 Arts Chiyoda)が、今この時期だからこそ発信できる切実なテーマであると確信し、展覧会実現のために助成を申請いたしました。

助成の意義

本助成を受けたことにより、小池が設立した「佐賀町エキジビット・スペース」で過去に展示を行い、現在では日本の現代美術界を牽引するまでの存在になった作家達の作品展示が実現できたほか、壁面塗装や什器制作など各所で展示施工の質も高まり、コピーライティング、執筆、翻訳、キュレーションなど、小池の多彩な仕事を視覚的にも簡潔に情報整理をし、展示を実現する事ができました。
また、グラフィックと現代美術を展示する本展には各々の固定ファンが来場。互いの来場者層が流動化し新しい観客を獲得。若年・高齢層も伸張し幅広い年代の顧客を獲得しました。(内訳 10代3%、20~30代19%、30~40代27%、40~50代51%、70~80代14%、80代以上3%)

今般の新型コロナウィルスの感染拡大による様々な制限以前に、常に文化芸術に触れられる場を開き続けることは、非常に重要な事だと考えています。そして美術愛好家だけでなく、これまで文化芸術に興味がなかった方々にも門戸を開き続けるための敷居の低さや、文化芸術に触れるためのきっかけ(場)づくりは、弊社のような柔軟な姿勢と問題解決力をもった民営企業だからこそ担えるミッションだとも考えております。

今後の活動

合同会社コマンドAが運営するアーツ千代田 3331は、まちに宿る文化資源を丁寧に感じ取りアートとまちを双方向的に結び付けるオルタナティブなアートセンターとして13年(2022年9月現在)活動を続けてきました。多様な価値観を認め合う「場」をまちの中に作ることによって新たな観客層を創出し、今後の日本で推進すべきグローバル化やダイバーシティに必要不可欠な視点の獲得と体験を生み出してきました。

この度、千代田区の文化芸術施策「ちよだアートスクエア」プロジェクトとして、旧練成中学校を暫定利用し、延長を含めて13年間に渡りアーツ千代田 3331を運営してきましたが、現在の第2期運営の延長契約が2023年3月31日で満了するに伴い、閉館することとなりました。

旧練成中学校を利活用した活動は2023年3月31日で一旦区切りとなりますが、アートやクリエイティブ活動を通じて新たな領域を社会に創出する3331の活動は、今後も継続して参ります。

文化芸術の持つ創造力は、次世代へ接続する力も持っていると確信しています。そのような活動は、今後一層社会から必要とされ、我が国の発展に寄与するものと確信し、今後も引き続き合同会社コマンドAは邁進していく所存です。

合同会社 コマンドA

  • 住所〒101-0021
    東京都千代田区外神田6丁目11-14
  • TEL03-6803-2441
  • E-mail
  • Webサイトhttps://www.3331.jp/