イベントレポート

第130回文楽のつどいを開催しました。<国立文楽劇場友の会>

3月28日(火)、国立文楽劇場3階小ホールにおいて、4月文楽公演で上演される『妹背山婦女庭訓』、『曾根崎心中』にちなみ「文楽のつどい」を開催いたしました。

まずは神戸女子大学の井上勝志先生より、「王朝物の傑作『妹背山婦女庭訓』と近松最初の世話物『曾根崎心中』」と題したお話を伺いました。
江戸時代の芝居小屋の当時のお話や、竹本座が再起するきっかけとなった大ヒット作『妹背山婦女庭訓』の話では、見どころの「山の段」は舞台が華やかだけではなく、対照的な構造になっていて、妹山(語りは華やかな東風)と背山(語りは質実剛健な西風)、蘇我入鹿(悪)と藤原鎌足(善)で構成されているなど、貴重なお話を伺いました。

『曾根崎心中』については、近松門左衛門がどうしても自発的に作りたいわけではなかった。歌舞伎の仕事で忙しくしていた頃に、竹本座から(実際に起きた心中事件を題材に)浄瑠璃にしてほしいと依頼された事で生まれた作品である。当時「人形も良い」、「太夫の語りも良い」として大当たりし竹本座の赤字を完済した。『妹背山婦女庭訓』、『曾根崎心中』ともに上演された時代は違うが、竹本座を救った名作とも言えるとのお話でした。

休憩をはさんだ後、演劇ジャーナリストの広瀬依子氏を聞き手に「4月文楽公演・見どころ聞きどころ」について、井上先生、豊竹呂勢太夫、吉田一輔が登場し、4人での座談会を行いました。

呂勢太夫は、(山の段で)両床になりいつもと反対側に座ると、景色が違うのでお客様がどういう反応をしているかが良く見えるという話や、一輔からは、15~16才で突然雛鳥の足遣いを任された時に、下駄の音がガチャガチャ鳴り父(故 吉田一暢)に怒られた事がとても恥ずかしかった、という思い出話を伺いました。

『曾根崎心中』に話が及ぶと、一輔が(WBC決勝前、MLB大谷選手の)「今日だけは憧れを捨てて勝つ事だけを考えていきましょう」という発言を引き合いに出し、役に憧れてるだけではダメで経験が大事という話や、太夫の床本については、呂勢太夫が(自身の所有する床本を手に)「立派な本を使ったから立派な浄瑠璃が語れる訳ではない」などとユニークな発言が飛び出していました。

貴重なお話の数々に会員の皆さまも熱心に耳を傾けておられ、名残惜しい中文楽のつどいは終了いたしました。

国立文楽劇場友の会