『天変斯止嵐后晴』で、嵐で島に流れつき、そこで左衛門の娘・美登里と恋に落ちる筑紫大領の嫡男・春太郎の役を遣う人形遣い・吉田和生さんにお話を聞きました。
平成4年の初演の時、私は英理彦を遣いました。ちょうどそのころ『テンペスト』の映画が公開されていたので、それを見にいって、役作りをあれこれ考えたのを思い出します。
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日本芸術文化振興会トップページ > 国立劇場あぜくら会 > Vol.6 「出演者のことば 吉田和生さん」
『天変斯止嵐后晴』で、嵐で島に流れつき、そこで左衛門の娘・美登里と恋に落ちる筑紫大領の嫡男・春太郎の役を遣う人形遣い・吉田和生さんにお話を聞きました。
平成4年の初演の時、私は英理彦を遣いました。ちょうどそのころ『テンペスト』の映画が公開されていたので、それを見にいって、役作りをあれこれ考えたのを思い出します。
今回遣う春太郎は親達の諍いをしらず、嵐で島に流されて、そこで美登里にひとめぼれして恋仲になります。ひとめぼれというのは古典の中にも多くあり、『妹背山女庭訓』の久我之助と雛鳥や、『生写朝顔話』の宮城阿曽次郎と深雪をはじめ一幅の絵のような大変美しい場面で、今回のお芝居でも美しい場面にしたいですね。この春太郎と美登里の恋が、筑紫大領と阿蘇左衛門という二人の親たちが和解するきっかけとなるのですから、このひとめぼれは非常に重要なのだと思います。
古典に近い部分と新作らしい新たな試みをあわせ持つ清治さんの作り出した音の世界と人形遣いが作り出す舞台がひとつになって、『天変斯止嵐后晴』ならではの世界観が出せればいいですね。
船が難破してからの現在進行形の物語で、筋が非常にわかりやすいと思います。舞台を日本に置き換えた翻案物のお芝居ですから、どれだけ本来のシェイクスピアの味が出せているかはわかりませんが、これまでにない文楽の作品になりました。初めて文楽をご覧になる方でもわかりやすい作品ですから、ぜひたくさんのお客様に見ていただきたいです。
VOL.7は8月20日ごろの更新の予定です。