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文楽版「テンペスト」 『天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)』特別連載
Vol.1「天変斯止嵐后晴 あらすじとみどころ」

文楽版『テンペスト』が国立劇場9月文楽公演に登場!

『天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)』は、明治の劇作家・坪内逍遙によって翻訳されたシェイクスピアの『テンペスト(あらし)』をもとに、山田庄一が舞台を中世の日本に置き換えて脚色し、鶴澤清治が作曲を担当した平成の新作文楽です。

平成3年(1991)、ロンドン・ジャパンソサイティー100周年を記念した『ジャパンフェスティバル』に、シェイクスピアを題材にした伝統芸能の上演が企画され、『葉武列土倭錦絵』(歌舞伎版『ハムレット』)、『法螺侍』(狂言版『ウィンザーの陽気な女房たち』)とともに、文楽版『テンペスト』としてロンドンで上演されるはずでしたが実現できず、その翌年の平成4年(1992)2月に近鉄アート館(大阪)、パナソニックグローブ座(東京)で初演されました。

今回は国立劇場と国立文楽劇場の共同制作で、国立文楽劇場の夏休み文楽特別公演と国立劇場9月文楽公演で連続上演することが決定しました。

今回の上演のために、脚本担当の山田庄一と作曲担当の鶴澤清治とともに改めて初演台本の再検討をし、さらに台本を練り上げ、改訂台本をもとに作曲の手直しがおこなわれました。

また、人形についても、初演時には『俊寛』等から転用して使っていた首(かしら)や衣裳も、チラシのデザインで一部ご覧いただいておりますように、こちらも改めて再検討をおこなっております。
美術面についても、初演の際は屏風やパネルを用いただけの簡易な舞台美術による上演でしたが、今回は本格的な舞台装置を使っての本格上演となります。

このように、7月18日に初日を迎える大阪・国立文楽劇場夏休み特別公演に向けて、その準備が進められております。

天変斯くて嵐 后れとなる

ここで簡単に『天変斯止嵐后晴』のあらすじをご紹介します。

実は、嵐は阿蘇左衛門が妖術によって引き起こしたもので、すべては十二年前、筑紫大領と弟・刑部景隆(アントーニオ)の陰謀により、国を追われ、この島へと流れついた阿蘇左衛門の壮大な復讐だった…。

筑紫大領の子息・春太郎(ファーディナンド)は、島で美登里と出逢い、二人は恋に落ちる。春太郎を連れ帰った美登里に、阿蘇左衛門は十二年前に国を追われた憎しみを語る一方で、刑部景隆によって殺されそうになる筑紫大領は、阿蘇左衛門が使役する妖精・英理彦(エアリエル)の術によって命を救われる。

阿蘇左衛門の胸の裡に秘められた思いとは…。
そして、阿蘇左衛門の術によって島へと呼び寄せられた人々の運命は…。

外題(タイトル)の『天変斯止嵐后晴』は「天変(てんぺん)斯(か)くて止み、嵐后(のち)に晴れとなる」と読み下すことができるように、山田庄一氏が考えて命名したものです。

さて、この外題が表わすように、阿蘇左衛門の大海の嵐のように荒れ狂う復讐の心は、はたして雲ひとつない晴れやかな空へと変わるのでしょうか…。

人物相関図
人物相関図

国立劇場9月文楽公演にご期待ください。
VOL.2では脚色・演出を担当する山田庄一さんが登場します。